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ひねくれ者の最弱魔術の使い方  作者: 幻影十夢
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花畑とエルフ

61階層からの迷宮に翔達は上に上がる階段を発見することができず、今もこの階層にさ迷っている。

―――ことはなく。

「ここを上がれば70階層ですね」

「ああ」

既に69階層。61階層からここまでの迷宮を翔達は迷うことなく一直線にやってこれた。

「しかし風の流れを読むとはな、お前が仲間に入ってくれたおかげで助かったぞ」

「恐縮です」

ここまで迷うことなくやってこれたのは全てエルティのおかげだ。

風の精霊魔法で迷宮内に風を流してその流れを読み取ったエルティは数分もしない内に迷宮内の構造を把握。最短ルートで迷宮を突破した。

そして、次の階層である70階層に足を踏み入れた。

その階層はまたしても迷宮……………………ではなく。

「花畑…………………?」

辺り一面、花で覆われた階層は視界に映る全てが花でいっぱいだった。

「階層の楽園か…………」

殺伐したこれまでの階層に比べて緊張感が減り、穏やかな気持ちになる花畑を見て苦笑しながらそう呟いた。

我ながらガラじゃない、と思いながら花畑を進む。

「ん~、ここでゆっくりしたいね」

「その気持ちはわかりますが、一応、警戒しましょう」

背伸びしながら緊張感もない言葉を漏らすサクロを苦笑しながら宥める。

「そうです。この階層はこちらの油断を―――――っ」

続いてエルティが咎めようとした瞬間、不意に浮遊感が襲った。

「エルティ!?」

唐突に仲間が宙に舞い上がり、エルティの足には触手が絡まっている。そして、花畑からモンスターが姿を現した。

植物系のモンスター。食虫植物であるウツボカズラが大きくなったようなモンスターの身体にある蔦のような触手がエルティの足を絡め取っていた。

「くっ!」

それでもエルフの戦士。足を取られたでも冷静に弓矢を構えてウツボカズラモドキに狙いを定める。

攻撃に危険を察知したウツボカズラモドキは触手をエルティに伸ばして全身を絡ませる。

「んっ、く、こ、こんな…………どこ、に……………はいって…………」

全身に巻き付く触手に艶のある声を出すエルティの頬は赤く、瞳は僅かばかり涙が溜まる。

「リアルで触手プレイを見る日が来るとはな………………………」

「エロいね…………」

「そんなことを仰る暇があれば助けませんと!?」

その光景を暢気に見ている二人にラヴァンはツッコミを入れた。

異世界ネタで多い触手プレイを直で見る日が来るとは思えなかった翔はああ、異世界だったな、と納得して炎の魔術でウツボカズラモドキを焼却。触手に絡まれていたエルティは花畑に落ちるも怪我はなく、無事に触手から解放される。

「くっ、まさかこんな辱めを受けることになるなんて………………………」

「まぁまぁ、男の人がショウだけでよしとしよう?」

「それがせめてもの救いです………………………」

「おい、変なところで同意してんじゃねぇ」

慰みの言葉をかけるサクロに同意するように頷くエルティに翔は思わず声を出す。

「まぁ、エルティのおかげでこの階層の趣旨はわかった。俺の探知魔術を潜り抜け、ハルの仙気も誤魔化した。植物系モンスターによる隠密・奇襲の階層だ。たくっ、面倒くせぇ」

面倒そうにぼやきながら頭を掻く翔はこの階層の趣旨を理解してその厄介さに気付いた。

翔の探知魔術は主に音の反響を利用したものだ。自分を中心に音波を発し、その音波に反響したものを読み取る魔術だ。それ以外にも熱センサーを利用した魔術もあるが、音を利用した方がより遠くの距離がわかる為にそちらを使っている。

しかし、今回の階層のモンスターは地面に潜んでいた為に音に反響されることなく、ハルの仙気も誤魔化した。勿論ここまできた疲労もある為にいつもより雑になっているかもしれないが。

周囲を見渡してまだ階段が見えない。ということはまだ他にもモンスターが潜んでいる。

「気を付けろ。まだいるぞ」

その言葉に強く頷いて周辺を見渡す仲間達。すると、エルティがその場に膝をついて地面に手を当てる。

「先ほどの辱めを返させて貰います」

小さく息を吸ってエルティは詠唱を口にする。

「【土の精霊よ。森に住まう我が声に耳を傾け、地脈を巡りて敵を封殺せよ】」

すると、淡い緑色の光がエルティの手から発してその光は地面に流れていく。すると、地響きと共にこの階層の土の中に潜んでいたウツボカズラモドキが土に縛られた状態で姿を現した。

「フッ!」

そして瞬く間に弓矢を構えて風の纏った矢を放ち、この階層にいるウツボカズラモドキを穿った。

身体に風穴が空いたウツボカズラモドキは花畑の上に力尽きたように倒れると、上の階層に向かう階段が姿を現した。

「例えモンスターでもそのようなことをしていいのはショウさんだけです」

そう言い切るエルティにラヴァン達の視線は翔に向けられるが当の本人は明後日の方向に目を逸らした。

「さて、次に参りましょう」

「あ、ああ」

気迫に満ちた声で先に進むエルティのやる気に少し頬を引きつかせながらも続く。

71階層も先ほどと同じ花畑の階層で、そこにいるモンスターはハエトリグモモドキだったが、エルティは今度は炎の精霊魔法で容赦なく焼き尽くした。

先の階層での触手プレイがよほど堪えたのか、植物系モンスターを躊躇いなく殲滅する。

いくら翔から能力増大(スケールアップ)を貰っているとはいえ、頼もしいエルフの戦士に翔達は棒立ち。

続けて進む階層も同様。花畑を焼け野原に変えた時のエルティの表情はとても清々しい。

そんなエルティにサクロは思わず尋ねた。

「ね、ねぇ、エルティ。もしショウが求めたら……………………?」

「当然受け入れます。欲をいえば子種も頂きたいです」

当たり前のように平然とそう答えるエルフに翔は頭が痛くなった。

エルフってそういうことに一番嫌悪している種族じゃなかったか? と思っていたがそうではないらしい。

エルフは好意を寄せる相手には積極的になる。それが己の全てを捧げる相手だともっとだ。

そんな翔にラヴァンは肩に手を置いて慰め、ハルは仙気をかけてくれた。

常識がある二人の優しさがありがたかった。

それと同時にここに幼馴染の二人がいなくてよかったと心底思った。あの二人なら絶対にからかってくるに違いない。

『流石は翔だね。もう君は立派なハーレム主人公だよ』

『エロフです。次のネタはツンデレ男子とエルフに決まりなのです』

言う。絶対にそう言うに違いない。

親指を立てながらとてもいい笑顔でそう言うはずだ。

そう言ってからかってくる姿が目に浮かぶ。

この塔を出たらこのエルフに常識を叩き込もうと翔は決めた。せめてあの二人を見つけ出す前に下手なことは言わせない様にしよう。

そう決めながら翔達は次の階層である80階層に向かう階段を上がる。

そこは――――――


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