白亜の塔
「近くで見ると凄いな~」
長い旅路からようやく目的地である白亜の塔まで辿り着いた翔達。だが、その想像を絶する塔の高さにサクロは痛いぐらいに首を上に向けながらそんなことを言った。
白亜の塔。恐ろしいぐらいに純白に色づく塔は不自然なぐらいなでに汚れも傷もなく、ただ頂上さえも見えないほど高い。
そして翔達を迎え入れるかのように巨大な門が翔達の眼前に存在している。
「……………………ラヴァン。これが魔窟という可能性はあるか?」
「ない、とは言い切れません。魔窟は多種多様にありますからこれが魔窟ではないとも言い切れませんし、もしかしたら魔窟かもしれません」
この世界のありとあらゆる場所に存在している魔窟。
大昔の古代人が創り上げた魔窟なら古代魔法がある可能性だってある。
「ねぇ、今思ったんだけど、ショウの魔術で外から飛んで行くことはしないの?」
サクロがふと思った質問を翔にするも翔は首を横に振った。
「できなくはねえが、何かしらの罠が仕掛けられているかもしれねえし、万が一に魔力がなくなったらそのまま俺達は肉の塊になるぞ?」
「……………………うわぁ」
それを想像してしまったのかサクロは思わず引いた。
「それにこの壁……………………」
翔は魔昌眼を開眼させて白亜の塔の壁を解析してみるが、なにもわからない。
何か翔達の知らない概念的何かが働いているとしか推測するしかない。
もしかしたらそれが古代魔法の一種かもしれないと、一考する。
「まぁ、今はそれどころじゃねえか」
翔は一度魔昌眼を閉じて振り返ってこれからについて話す。
「一応は転移魔術用の魔法陣は描いておいたが、それが確実とは言えねえ。入る前に言うぞ? 死にたくないのならここで待ってろ」
塔の中では何が起きるかわからない。もしかしたら入った瞬間に全滅だってありえる。
だから入る前に警告するも四人共覚悟は決まっていた。
それを見て翔は溜息を吐いた。
「命知らずか、お前等は…………………」
「ショウ様に言われたくはありません」
「確かに」
「ハルも同意です」
「同じく」
「………………………………」
返す言葉もなかった。
それぐらいの自覚はあったことにラヴァン達は苦笑い。
「……………………まぁいい。じゃ、隊列を組むぞ? 前衛はハル、お前だ。今のお前の剣術なら大抵の敵は倒せるはずだ。それに仙気で誰よりも早く危険を察知することもできる」
「はい!」
「中衛は俺とエルティ。俺は魔術で罠の類を発見することもできるし、中衛なら指揮も取りやすい。素手でも戦えるし魔術で遠距離攻撃も可能だ。そういう意味も込めてエルティも中衛にする」
「心得ました」
「後衛はラヴァンとサクロ。ラヴァン、お前は後ろを警戒しつつサクロの護衛だ。サクロはアンデットが出てきた場合はエルティと交代してもらうが、基本は回復に専念しろ」
「はい」
「了解」
「なら、行くぞ」
隊列を決めて動き出す翔達は全員覚悟を固めて塔の門を開ける。
純白の外見とは違って塔の中はまるで遺跡だった。
石造りでできた通路は暗くて視界は闇が支配的な暗黒の世界。気休めかのように淡い緑光がところどころで光っているぐらいだ。
石壁や通路。門の外から差し込む日の光で入り口付近は把握することができた。
「殆ど何も見えねえな。お前等、先に渡した暗視眼鏡を今の内につけとけ」
翔は前もって作っておいた魔道具である暗視眼鏡をかければ暗闇でもはっきりと見えるし、当然戦闘の事も考えて多少激しく動いても落ちることはない。
全員が暗視眼鏡を装着して前へ進むと門が突然に閉まる。退路が断たれたことに驚きながらも翔達は前進する。
石造りの通路を歩きながら足音だけが響くなかで翔は魔術を起動させながら罠がないかを調べていると違和感を覚える。
外見と中身の構造が違うという違和感に。
確かに塔自体それなりに大きい建物ではあったが、中身はそれ以上に大きく感じる。
空間が歪んでいるのか、もしくはそう思い込ませているのかはわからないが一筋縄で行きそうにないのは確かだ。
一層に気を引き締める翔にハルは叫んだ。
「何か来ます!」
刀を抜刀して構えるハルに翔達も戦闘態勢を取る。すると、正面から姿を現したのは緑色の体皮をした小柄なモンスター、ゴブリンだ。
複数のゴブリンが襲いかかってくる中でハルは突進。ゴブリン達を瞬く間に斬り伏せた。
「他は……………問題はねえか」
周囲を見渡して一応は探知魔術を使ってはみたが、ゴブリン以外に何もない。そして、ゴブリンが襲いかかってきた通路の先には階段があった。
「上に行けってか?」
まだ塔には入ったばかりとはいえ、もう次の階段を見つけたことに拍子抜けする。
「とりあえず上りましょう」
「そうだね。進まなきゃ何も始まらないし」
「…………………それもそうか」
二人の言葉に頷いて翔達は更に階段を上っていき今度は広い空間に腐敗臭を漂わせるアンデットの大群がいたが、サクロの神聖魔法によって一瞬で浄化されてその先にある階段を上ると次に待ち受けていたのは人型のゴーレムだが、翔の魔術によって粉々になる。
「三階層目でゴーレム……………………ショウ様、もしかしたらこの塔は」
「ああ、上に上がることに難易度が上がる設定だな。たくっ、ゲームか」
ここまで来たらもうこの塔の仕組みをある程度理解できる。
上に行けば行くほどに難易度の高い敵が待ち受けている。少し旧いゲームの設定を身を持って体験している気分だ。
だけど、だからこそ厄介だ。
この白亜の塔は空を貫くほどの高さ。今は地上からどれぐらい高い場所からはわからないが、上に行けば行くほどに心身共に疲労が増えるのは明白。
あとどれぐらいで頂点なのか?
あと何体倒せば終わるのか?
上に行くほど精神的負担は強いられる。
おまけに危険になったら下の階層に戻ることも許されない。既に先ほど上ってきた階段は消えている。
後退は許されず、敵と戦わずにして上に階層には行けず、戦って勝利するしか道はない。
「お前等、一度転移魔術が起動するか試すぞ」
まだここは三階層目。ここで塔の外に転移したとしてもまだ余裕でここまで辿り着けられる。だから、一度、転移魔術が起動するか試してもう一度一から始めようとするも―――
「転移魔術が起動しねぇ…………………」
確かに起動したはずなのに誰も転移していない。外の世界と空間が隔絶しているのか、転移類を封じる力がこの塔自体に働いているのかは不明だがこれで引き返すことはできないのは間違いない。
「面倒くせぇ」
この塔の恐ろしさを知った翔達は塔の頂点を目指して突き進むしかなかった。




