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ひねくれ者の最弱魔術の使い方  作者: 幻影十夢
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聖職者の信愛

エルフの里を出て目的の地である白亜の塔を目指し、その野営中で翔とサクロは模擬戦を繰り広げている。

二振りのメイスを振るうサクロにそれを紙一重で避ける。

新たな左腕である義手で拳を作って殴るもメイスを交差させて防いだ。

「そっちで殴る?」

「金払ってんだ。文句言うな」

「今度から割り増ししようかな………………………」

ぶつぶつと文句を言いながらもメイスを振るうサクロは翔のリハビリに付き合っている。

ヴァロノスとの戦闘後で鈍った身体と新しい左腕である義手の違和感を失くすためにリハビリの代金を貰って付き合ってはいるも激しい翔の動きについていくのがやっとだ。

もっとお金を貰っておけばよかったと今更ながら後悔する。

エルフの里を出てから毎日しているおかげで大分元には戻っては来たが、白亜の塔に到着するまでには元に戻しておきたい。

それからしばらくしてようやく今日の分のリハビリを終えて翔は呼吸を整え、サクロは地面に腰を下ろして大きく息を吸う。

「もう、ショウが激しくするから疲れちゃったよ」

「うるせぇよ。つーか、前々から思っていたがお前本当に聖職者(プリースト)か? 正直ここまで動けれるとは思ってもみなかったぞ」

何回か本気で攻撃をしたがそれを避けたり防いだり、少なくとも直撃は避けているサクロの戦い慣れた動きに翔は本当にサクロのクラスが聖職者(プリースト)と猜疑の眼差しを向ける。

「聖職者(プリースト)だよ。まぁ、お金欲しさに一時冒険者してたけどね」

「なるほどな」

お金欲しさで冒険者をしていたサクロの言葉に納得した。

「その時それなりに鍛えたから少しは自信があるんだ。まぁ、ショウほどじゃないけど」

「たりめえだ。鍛え方が違うんだよ」

だが、確かにそう自負してもいい実力はある。

少なくとも大の大人が数人がかりで襲って来てもサクロなら一人で迎撃できるだろう。

地面に寝転ぶサクロは翔に手を伸ばす。

「ショウ~、抱っこして~」

「甘えんな。自分で歩け」

「誰かさんのせいで動けないなー。もう付き合えないかもー」

「………………………………チッ、本当にいい根性してんぜ、お前は」

「ふふん」

「褒めてねえよ」

皮肉を言ったのに自慢そうに鼻を高くするサクロを翔は荷物のように肩で担ぐ。

「あれ? 私が想像していたのと違う」

「文句あんなら捨てるからな」

お姫様抱っこでも想像していたのか、サクロは荷物のような運ばれ方に肩を落とす。

「そういや、聞いてなかったな」

「何を?」

「リュマダのことだよ。お前、一応は聖職者(プリースト)だろう? 信仰の対象の真実を知ってなんとも思わねぇのか?」

リュマダはこの世界とは違う別の世界からやって来た侵略者のような存在。今では神とされ信仰の対象ではあるがそれはその真実を知らないからだ。

しかしサクロは違う。その真実を翔は自らの口で語り、告げた。

それでもこれまでサクロにそれらしい変化は見ていない。

その疑問にサクロは頬を掻きながら答える。

「そりゃ驚きはしたよ? でも、知っての通り私は信仰心なんてないし、成り行きで聖職者(プリースト)になったからね。それに聖職者(プリースト)が使う神聖魔法は別段神に対する信仰心じゃなくて、自分が何をどれだけ深く信じられるか、だよ」

「神に拘る必要はねぇってことか」

「まあね。今の私は私の愛は必ずショウに届くと信じているよ」

「………………………………そうかよ」

「照れてる? ねぇ、今、照れてる? ……………ごめんなさいもう言いません」

からかおうとするサクロを持ち上げてどこか遠くに放り投げようとする翔に即座に謝った。

「でもショウはもう少し素直になった方がいいと思うよ」

「十分素直だ」

そっけなくそう返してくる翔に肩を竦める。

今だってラヴァンもハルもそして新しく仲間になったエルティも個々で特訓している。今よりも強くなった翔の、好きな人の力になろうと躍起になっている。

翔はそれを知らないわけではない。

知っていて何も言わずにいるだけだ。

彼は強い。それこそ七魔将を打倒できるほどに強い、いや、今も強くなろうとしている。

そこまで強くなることに拘る理由、それはよく話で聞かされた煌とローレルという幼馴染を助ける為だというのはわかるが、このままでは駄目だ。

その二人が翔にとって大切な人だというのはよくわかる。だけど、この広い世界でたった二人の人間の見つけ出そうなんて精神がすり潰される思いをしているはずだ。

それに行方がわからないだけではなく生死を不明なら不安や焦りに徐々に募るに違いない。

そこに強くなろうと前へ進めばいずれ壁に激突してしまうのが目に浮かぶ。

このままでは弱音を意地でも吐こうとしないひねくれた性格を持っている翔の心にいずれ限界がきて、壊れてしまう恐れだってあるのだ。

溜まったものは吐き出さないといけない。だからサクロはあえて翔を怒らせてストレス発散のはけ口になっている。

我ながら面倒な人に惚れてしまった、と自虐気味に笑う。

「ほら、着いたぞ」

「はーい」

天幕が張られている場所まで戻ってくると翔はサクロを下ろした。

「他の奴等はいねえな。まぁ、結界が張ってあるから問題はねえが」

野営の際は警戒して結界を展開している。何かあればいの一番に術者である翔に何かしらの反応がある。

「ふふ、身体を拭いてあげようか?」

「寄んな、変態聖職者(プリースト)。お前は見張りでもしてろ」

睨まれるの無視(スルー)する。

「俺は少し寝る。何かあったら起こせ」

「はーい。抱き枕はいる? 今なら私という最高品質の抱き枕がついてくるよ?」

「いるか」

一蹴され、翔は天幕に入るのを確認してサクロは今晩に食事の準備にとりかかる。

「さて、美味しい料理を作ってあげようか」

例え翔に味覚はなくても見た目だけでも楽しんで食事をして貰いたい。

サクロは翔に少しでも安らぎを与える為に調理を開始する。


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