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ひねくれ者の最弱魔術の使い方  作者: 幻影十夢
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大規模魔術

魔族との決戦前日の夜。

翔はハルと対面するように腰を下ろしている。

現在、この部屋にいるのは翔とハルだけ。翔が二人に言って席を少し外して貰った。

「ハル、先に言っておく。お前は何もするな」

「………………………どうしてです? ハルは」

「お前が魔族を憎み、ヴァロノスに復讐したいのはわかる。だが、感情に振り回されて好き勝手動かれたら面倒なんだよ」

「ですが!」

いつもは聞き分けがいいハルでも引けない時はある。

両親と村の皆を仇を取る。その怨敵がもう眼前まで迫ってくるというのに何もしない方が酷だ。

「好き勝手動いた結果、お前は仲間までも殺すのか?」

「!? そんなことは―――」

「ないって言えるのかよ?」

重みのある言葉に否定することもできずに顔を俯かせてその手を強く握りしめる。

「俺は復讐を否定しない。それで自分の気が晴れるなら好きにしろと思ってる。だが、復讐は復讐を生み、負の連鎖は続く。それが相手が魔族であっても、如何に正当な理由があっても殺しは殺しだ。そこに必ず対象とされる理由が生まれちまう。感情は理屈じゃねぇってこった」

そもそも自分がそんなこと言える立場ではないが、と内心でぼやきながら翔は言葉を続ける。

「だがな、感情のまま動いた結果、最後に傷つくのは自分自身だ。それを忘れんな。その上で復讐を果たせ。トドメぐらいは残してやる」

「………………………………」

ハルは何も答えない。

ただ、静かに身体を震わせながら俯いているだけだ。

「一晩考えてみろ。少なくともお前の怨敵はいなくなるのは間違いはねえんだ」

最後にそれだけ告げて翔も部屋を出ていく。

「………………………………やっぱ、こういうのは俺には向かねぇ」

小さく呟きながら翔は明日に備える。







魔族が五千の軍勢でエルフの里を襲うとされる当日の朝。翔は里の広場で巨大な魔法陣を描いていた。

「ショウ様、これは?」

「見ての通り魔法陣だ。周辺の魔力の吸収、魔力増幅、魔術強化の術式を書き込んだ魔法陣。これで五千の軍勢をぶっ飛ばす」

「イクリム王国ではこのような魔法陣は使用されておりませんでしたよね?」

「今回は数もそうだが、相手が相手だ。策はいくつあっても損はねぇ」

以前、イクリム王国に攻め込んでいた二千の魔族は一撃で葬ることはできたが、あれにも時間を消費したし、何より五千の軍勢が四方八方から来られたらいちいち強力な魔術を起動させてくれる時間など与えてはくれない。速攻で仕留めにくるのがわかる。

更には七魔将であるヴァロノスを相手にするなら魔力の消費はできるだけ少なくしておきたい。

「………………ショウって見た目と違って意外に繊細だよね」

「ええ、私もそう思います」

魔法陣を描く翔の姿を見ながら意外そうに呟くサクロの言葉に同意するように頷くエルティ。

この場にハルはいない。サクロに確認してもらったところまだ宿にいるらしい。

もし、答えが見つからないのであればそれはそれでいい。

それはハル自身が考えた結果なのだから。

「「「「―――――――――――――ッッ」」」」

四人は一斉に振り返る。

「この気配は………………………」

「ああ、どうやらお出ましのようだ」

肌からも感じ取れる異様な魔力の大群と隠すこともしない膨大ともいえる魔力が里に近づいてきているのがわかる。その膨大な魔力の正体がヴァロノスだろう。

「エルティ!」

「お父様!」

リヤンとエルフの戦士達がこの場に集結する。

「その魔法陣の完成はあとどれぐらいだ?」

「五分、いや、三分寄越せ」

「心得た。皆の者! 三分間この者を死守せよ!!」

『はい!』

リヤンの言葉に魔法陣を囲むように包囲が展開される。そして、近づいてくる気配に誰もが緊張のあまり手汗を掻き、つばを飲み込む。

そして、魔族は姿を現した。

以前に翔が倒したアザムのように蝙蝠の翼を持つ悪魔の容姿をした魔族の軍勢が悠々と歩きながら嘲笑と共に近づいてくる。

「放て!!」

リヤンの号令と共にエルフの戦士達は弓を引き矢を射る。その矢にはエルフが得意とする精霊魔法が付与されており、風を纏う矢となった魔族を襲う。

「ぐぎゃ!?」

「な、なんだこいつらの矢は!?」

「前とは違うぞ!?」

矢の威力に驚きと困惑。自分達よりも格下と思いきや予想を遥かに超える武器の登場に油断していた魔族達は矢をその身に受け、貫通した。

「距離を失くせ! 接近戦ならこっちの―――」

魔族の一体が矢の射程範囲から逃れる為に接近して近距離でエルフ達を殺そうとするも殺される前にリヤンの剣が魔族を両断した。

「なるほど、良い剣だ」

容易く魔族を両断した剣に不満はなく、口角を上げる。

弓矢も剣もどちらも魔族に通じることが証明されたエルフの戦士達はそれを気に士気が高まり、魔族と交戦を始める。

エルフの矢が魔族の頭を貫き。

魔族の爪がエルフの胴を切り裂く。

エルフの剣が魔族を両断し、

魔族の魔力攻撃がエルフに直撃する。

攻防を繰り返すエルフの戦士達にラヴァン達も負けてはいなかった。

「【カデナ・チェイン】!」

無詠唱から発動する魔法。ラヴァンの手から無数の鎖が出現して魔族達を瞬く間に絞殺する。

「怪我した人はこっちにきて!!」

聖職者(プリースト)であるサクロは後衛で怪我を負ったエルフ達を治療する。

「フッ!」

そんなサクロを狙う魔族をエルティが護っている。

「所詮は奴等は少数! 数で押せ!!」

百人にも満たない数を魔族は数でものを言わせて攻めようとしたその時、魔法陣が輝きを始めた。

完成した魔法陣の中心で翔は魔昌眼(ミーミル)を開眼させて呪文(スペル)を口にする。

「【魔の深淵を見る者、魔術師に怨嗟と断末魔の叫びを捧げろ】」

魔昌眼(ミーミル)を手にしてから世界に干渉する為の呪文(スペル)はほぼ不要の代物になった。

それでも大規模な魔術を起動させるには呪文(スペル)は必要になる。

「【逆巻く円環の理。一切の不浄すらも許さぬ煌々しい聖火の波動をその怨嗟と断末魔の代わりに褒美として与えよう】」

魔法陣に青白い炎が噴き出る。その炎は呪文(スペル)と共に荒々しく燃え上がり、熱の波動が広がる。

「【抗う術もなく、散れ】」

そして魔術は起動する。

「【リートゥス・サンティ】」

魔法陣から噴出する莫大な青白い炎は術式に対象をしている為にエルフを素通りして魔族のみを包み込む。その炎をその身に受けた魔族は灰も残ることは許されずに焼き尽くした。

「綺麗………………」

誰かがその青白い炎を見てそう呟いている間に五千の軍勢だった魔族は嘘のように消えた。

それに安堵し、歓喜の声をあげようとするエルフ達だが、まだ戦いは終わってはいない。

「ほう? エルフが人間と協力するとは。これは面白い」

重い足音と共に近づいてくるのは成人した人間の倍以上はある体格をした魔族。その魔族の手にはハルバードを持ち、その身に鎧を身に着けている。先ほどの魔族のような悪魔の風貌したその魔族の正体は聞かずともその膨大な魔力が語っている。

「七魔将、ヴァロノス………………………」

その魔族の名を誰かが呟いたが、それを気にかける余裕は誰もいない。

ヴァロノスの魔力に存在に威圧感に完全に気圧されている。

誰もが動けないそんな時、翔は前線で戦っていたエルフ達よりも前に出て、ヴァロノスの対峙する。

「お前がヴァロノスだな?」

「それがどうした?」

「お前をぶっ飛ばす。要件はそれだけだ」

七魔将と魔術王の戦闘が始まる。




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