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ひねくれ者の最弱魔術の使い方  作者: 幻影十夢
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魔術の相性、分別

アレス学院の鍛錬場に翔はいる。

クラスを伸ばすことを目的としているアレス学院は己のクラスを鍛える為にそのクラスに適した鍛錬場がある。翔がいる鍛錬場には主に戦士や剣士といった前衛のクラスを持つ生徒達が使っている。

魔術師である翔がどうしてそこにいるのか、その答えは簡単だ。

「今日はこのぐらいにしてやる」

「「「は、はい…………………」」」

地面に倒れている生徒達を背に鍛錬場から出て行く翔は前衛のクラスを持つ生徒達と一戦交えたからだ。

その理由は新しい魔道具(マジックアイテム)を実際に確かめる為。

生徒達に魔術を教えてその魔術を元に前衛のクラスは自分の武器や鎧に術式を書き加えてみてその性能を実戦形式で試す為に翔に頼み込んだ。

その結果は惨敗。

風の刃を飛ばしたり、鎧に強化魔術の術式を書き加えたりと色々と工夫はされてはあったがたいした効果はなかった。風の刃は飛ぶには飛ぶが、そよ風程度の威力しか出ず、強化魔術を書き加えた鎧もほんの僅か、雀の涙程度強化しただけ。

そんな生徒達に呆れ、速攻で拳を叩き込んで終わらせた。

「たくっ、人類が魔族に滅ぼされかけてんのは単純に人類が弱いからじゃねえか?」

魔族が極端に強いのではなく、人間族が極端に弱いのではないかと疑念に思った翔だが、そんなことは自分には関係ないと割り切って借りている研究室に向かう。

翔も魔術師。空いている時間は魔術の研究に費やすと同時に元の世界に帰る方法、古代魔法(エンシャント)についても調べている。

しかし魔術の方は進んでも、元の世界に帰る方法は進歩がない。

『勇者召喚』の古代魔法(エンシャント)以外にも他の古代魔法(エンシャント)がわかれば比較対象にもなるのだが、生憎とそれはない。

地道に少しずつ調べて行くしか今のところはそれしかない。

「まぁ、今はこれの完成を急ぐか」

翔の視線の先にある自動車。これから先の移動手段として翔は自動車を作っている最中だ。

錬金魔術と術式を組み合わせて電気の代わりに魔力を消費させることで動く電気自動車ではなく魔力自動車は馬車よりも確実に速く移動することができる。

費用は学院が持つ条件に完成した魔力自動車を一台提供する。

特に反対意見もなかった為にそれを了承した。

六割は完成して残りは精密な作業が必要とする箇所ぐらい。そこを完成させたら外に持っていて試運転する。良ければそれを学院に提供してそれよりも性能のいい自動車を自分達で使う。

交通規制もない異世界なら思う存分に飛ばしても問題がないのは幸いだ。

「さて、次の授業までにある程度進ませておくか…………………」

手を動かして作業を開始する。






「全然駄目だ」

「うぅ…………………」

セシルの懇願に仕方なく特別授業として魔術を教えている翔なのだが、駄目だしする。

「何だその炎は? そんなもんで敵を倒せると思ってんのか?」

セシルの手元に展開している炎の魔術。その威力と脆弱性に容赦なく言い放つ。

最初の頃に比べると多少は進歩してはいるが、それだけだ。

今の状態で両親を探す旅に出たとしてもすぐにモンスターに殺されるのがオチだ。

「む、難しいです………………………」

「弱音を吐く暇があんなら少しでも威力を上げるようにしろ」

「はい……」

情け容赦のない指導にガクリと首を縦に折る。

翔から見て本当にこいつのクラスは魔術師なのかと疑いたくなるほど弱い。

他の生徒達、魔術師ではないクラスを持つ者にも魔術は教えてはいる。自分のクラスではないが、自分なりに魔術について勉強して身に着けているのはわかる。

だが、セシルは魔術師。他のクラスの誰よりも魔術に対する才能があるにも関わらずその成長は遅い。

異世界人であり、魔昌眼(ミーミル)を持つ自分自身は例外だとしてこれは酷い。

それが翔が抱くセシルの評価だ。

「おい、あれ見ろよ」

「ああ、最弱少女か…………」

アレス学院の敷地内でその声が響いてきた。

「せっかく教わってんのになんだあれ? まだ俺の方が上手くできるぞ?」

「魔術師が最弱じゃないのはわかったけど、やっぱり個々の力量によって天才か落ちこぼれかはわかるな」

そんな声につられるように他にも見ていた生徒達が一斉に騒めきだした。

「凄い魔術師なのにどうしてあんな落ちこぼればかり構うのかしら?」

「同じクラスでも贔屓しすぎ」

「あんなやつより私達にもっと色々教えて欲しいのに」

聞こえていないと思っているのか、それともわざとか。セシルに対する誹謗中傷の声が聞こえてくる。

最弱のクラスである魔術師。その中でも一向に成長しない弱いままの彼女に周囲は最弱少女と陰口を叩く。

今現在は翔の存在で最弱のクラスという考えは少なくなってきてはいるが、そう簡単に撤回することはできないのが世の常だ。

周囲の言葉にセシルの表情が曇るのを見て翔は乱暴に頭を掻きむしって言い放つ。

「他人を見下す暇があんならそれを別の何かに使いやがれ」

その言葉と共に睨むと慌ただしくその場を離れていく生徒達に呆れる翔はセシルにも言う。

「お前も周囲の言葉に耳を傾ける余裕があんなら一秒でも早く強くなれ」

「はい!」

何故か敬礼する少女は再び魔術に没頭する。

また炎の魔術を起動させるセシルを見て翔は疑問を抱いた。

「そういやお前、どうして炎の魔術しか起動させねぇ?」

それが翔の抱いた疑問だ。

これまでずっと少なくとも翔が知る範囲ではセシルは炎の魔術しか使っていない。

その疑問にセシルは答えた。

「え、特に理由はないのですけど、駄目でしたか?」

「いや、そうじゃねえが」

詳しく聞けばセシルはまずは一つ。その一つがまともに使えるようになれば他の魔術の練習をするつもりだったらしい。

炎の魔術を最初に選んだのも特に理由もなく、取りあえずはという考えで炎の魔術を選んで他の魔術を試すことなくただひたすらに炎の魔術をひたすらに練習していた。

その話を聞いて翔は頭が痛くなった。

「お前、アホだろう………………………」

「なんでですか!?」

普通は色々試してからその中でも一番自分に合いそうなものを選ぶものなのにそれもせずなんとなくで選んだ炎の魔術だけ起動してきたセシルに溜息が出た。

「お前は相性というのを考えなかったのか? 自分がどんな魔術が合うのかまず最初に試すだろうが」

「で、でも、何がいいのかわかりませんし………………」

その言葉を聞いてそうか、と納得する。

そもそも魔術師は最弱のクラスと呼ばれるまでに弱い。なら、どうすればいいのか、何を選べばいいのかわからないのも無理はない。

この学院にも一応は魔術師のクラスを持つ講師はいる。だが、いないだけマシという程度だ。

教えることも教わることもたかが知れている。

そう考えた翔は嘆息してセシルに告げる。

「いいか? これは俺が考えた魔術の分別だ」

翔は魔術に対する分野を説明する。

運動とエネルギーを扱う黒魔術。

肉体と精神に扱う白魔術。

元素と物質を扱う錬金魔術。

漫画に寄せてわかりやすく分別して魔術を使用している。

「俺はどれも使えるが全員が全員同じなわけがねぇ。得意不得意ぐらい誰だってある。さっきの炎を見る限り、お前は黒魔術とは相性がいいとは言い難い。だから残りの二つである白魔術と錬金魔術を試すが、その為の知識は持ってねえよな?」

「はい……」

ずっと黒魔術、炎の魔術ばかり練習していた為に他は無知であるセシルに翔はセシルの頭を鷲掴みにする。

「え? な、なにをするんですか………………?」

「お前の脳に直接術式を送り込む。痛いが我慢しろ」

「ま、待って………………あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!」

制止の声を聞かずに強制的に術式を送り込む。

セシルの脳内処理が激しい激痛を引き起こすほど脳に膨大な術式が流れ込んでくる。

「何事ですか!?」

セシルの悲鳴を聞いて駆けつけてきたラヴァンは頭を鷲掴みにしている翔の姿を見て愕然とするも、すぐに止めに入る。

「何をなさっているのですか!?」

「こいつの脳に術式を送り込んでいるだけだ。死ぬことはねぇ」

術式を送り込む作業が終了して手を離すとセシルは意識を失い、その場に倒れる。

「やり過ぎです。別にそんな方法を取らなくても時間をかけて教えれば」

「そんな時間も余裕もねぇ。手っ取り早いのが一番だ」

次に目指す場所は決まっている。

ずっとこの学院にいるわけにはいかない為に教える時間も限られている。

その間にセシルを強くする義務が翔にはある。

「それよりも医務室はどこだ?」

セシルを担いで医務室の場所を尋ねる翔にラヴァンは疲れたように息を吐いた。

セシルを医務室に寝かせて翔とラヴァンは医務室を出て行く。

「あの、ショウ様。一つよろしいでしょうか?」

「なんだ?」

「サクロ様のことを許してあげては頂けませんか? サクロ様もショウ様のことを想って」

「んなことはわかってる。それに、どう考えても手を出した俺が悪い。帰ったら詫びと一緒に謝る」

サクロの言葉に手を出してしまったあの日、翔は自分が全面的に悪いと思っている。

「悪ぃが少し付き合え。俺は女が喜ぶもんなんて知らねぇ」

仲直りする気があることに安堵するラヴァンはサクロならお金をあげたら喜ぶとは思うも、ちゃんと形あるものを選ぼうと詫びの品物を選ぶのに付き合う。

もっともサクロなら翔がくれるものならなんでも喜びそうだが。

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