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ひねくれ者の最弱魔術の使い方  作者: 幻影十夢
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授業を始める

エクスエラという都市にあるアレス学院はクラスを伸ばす育成機関。

一般的な知識と教養と己のクラスの長所を伸ばして短所を補う術を学ぶこの学院では多くのクラスを持つ生徒が集い、他のクラスの授業も学べることが出来る。

戦士なら体力づくりや基本戦闘、魔法使いなら知識と魔力操作の授業などを行い、生徒達に多くのことを学ばせている。

そのアレス学院の東校舎二階にある二年次生の教室は今日から行われる臨時の講師についてざわめいている。

その教室の隅にはセシル・エフォールがもうすぐ始める授業を待ち望んでいる。

「今日からだったよな? あの『魔術王』の授業って?」

「ああ、でも本当にあれって魔術だったのか?」

「知らねえよ。魔術のことなんか」

「でも、ちょっと怖いよね…………。あの人、チッタ達を容赦なく殴ったんだから」

「自分の思い通りにならなかったらすぐに暴力を振るってきそう…………」

「それなら先生方に言おうよ? 辞めさせてくれるかもよ?」

「そうかな? 先生達、妙にぺこぺこしていたし、それにあの人って噂じゃ魔族を一人で倒したって言っていたんだよ。先生達でも力づくで黙らせることだって」

先日の授業で翔が同級生であるチッタ達に暴力を振るったことから生徒達からの評価は低い。

それだけではなく、今でも生徒達はゴブリン達を一撃で葬ったあの力は魔術だとは信じられない。

魔法かもしくは別の力なのではないかと疑問を抱いているほどにだ。

セシルはそんな同級生達の評価に不満を抱いている。

同じ魔術師だからわかる。あれは紛れもない魔術だと。それもこの学院で魔術を教えている講師よりも遥かに強い魔術を起動させたということも。

魔術王。あの人から魔術を教われればきっと―――

密かに意気込みを高めていると教室の扉が開かれた。

教室に入ってきた一人の男性、黒いローブを羽織って眼帯をつけた自分達と歳も変わらない講師の存在に生徒達は一斉に口を閉ざして静かになる。

翔はチョークを手にして黒板に名前を書く。

「今日から臨時でお前等に魔術を教えるショウ・クジョウだ。初めに言っておくが、俺はやる気のない奴に教える気は一切ねぇ。そんな奴の為に時間を無駄にする気はねえからな」

初っ端ら厳しい言葉を頂戴する生徒達は戸惑いと緊張が走る。

「とはいえ、今日は初日だ。まずは質問を受け付けてやる。何かあるか?」

「……………………はい」

「言ってみろ」

恐る恐る挙手した眼鏡をかけた小動物を思わせる女子生徒は思い切って尋ねた。

「あの、以前ゴブリンを倒したあれは本当に魔術なのですか…………?」

「それ以外になんに見える? 魔法なら魔法陣を介する必要はねえだろう、それに詠唱も必要だ。仮に魔法だとしてもわざわざ魔法陣を使って偽装する意味もねえが…………まぁ、まずはそっからか」

最弱で有名なクラスである魔術師。それについて認識を改める必要があると翔は踏んだ。

「お前等は勘違いしているみてえだがな、魔術師が最弱と呼ばれている由縁はお前等が馬鹿だからだ」

躊躇いことなく暴言を吐いた翔に生徒達は硬直する。

そして、あっという間に苛立ちが蔓延した。

「魔術師が使う術式は計算式だ。もっとわかりやすく言ってしまえば料理と一緒だ。作る料理に必要な調理器具と食材。それと調味料を組み合わせて料理が完成するように、この世界の事象を計算して生み出すのが魔術だ。例えんなら俺がプロの料理人で他の魔術師は素人の料理人ってことだ」

魔術そのものの説明に耳にして生徒達は苛立ちが消え、驚きに変わる。

「お前等は魔術師を最弱と認識しているみてえだが、違う。魔術師に必要な知識を備わっていないから弱い魔術しか起動させることしかできなかっただけだ。見ていろ」

翔は窓際まで歩いて窓を開けて手を空にかざすと魔法陣を展開させて起動させる。

そこから放たれる極太の閃光(ビーム)は雲に穴を空け、生徒達の眼を白黒させる。

「知識があればこれぐらいはできる。いいか? 魔術師は知識があればあるだけ強くなれる。その知識を得ようともせずに最弱と決めつけたお前等は馬鹿だ」

今度は言い返す言葉が出ない。

物心つく前から魔術師は最弱のクラスと教わった彼等にとって魔術師は卑下するものであって大して役に立たないと思っていた。

それがどれだけ自分が愚かだったのかをたった今しがた思い知らされた。

「そ、それでは魔法使いは魔術師より弱いということですか!?」

女子生徒の一人が椅子から立ち上がる。

「あぁ? そんなことは一言も言ってねえだろう? 魔術には魔術の利点があるように魔法にも魔法の利点がある。いいか? 魔術は極めればある意味では万能の力だ。攻撃、防御、支援、回復。得意不得意はあっても使えないことはねえ。だが、魔術には世界に干渉する為にいくつかの縛りが存在する。それに対して魔法使いの魔法はその縛りは存在しねえ。俺の知り合いの魔女の言葉を借りんなら魔法は想像の力。使い手の想像次第で無限に強くなる。自由の象徴が魔法らしいぞ」

ラヴァンの師匠であるレノアの言葉を借りてそれを伝えるとその女子生徒は大人しく席に座った。

「魔術師にとって魔術は当然としても魔術師じゃねえクラスでも魔術は覚えておいて損はねぇ。さっきのお前は魔法使いのクラスでいいな?」

「え、はい…………」

「魔術には周囲の魔力を取り込む魔術がある。その魔術を魔法に加えたらどうなる?」

「えっと、魔力が増えて魔法の威力が上がる…………?」

「そうだ。他にも魔力を蓄える魔道具(マジックアイテム)を作れば魔力が消耗してもすぐに回復できる」

驚きと同時に新しい魔法の使い道を知れたことに歓喜する女子生徒を置いて翔はガタイのいい男子生徒を指す。

「そこのお前のクラスはなんだ? 体格から前衛のクラスか?」

「はい、俺のクラスは戦士です」

「なら自分の得物に術式を書き込んで遠距離攻撃を可能にする武具を作ることだって可能だ。風の刃を放つ剣や鎧に強化の魔術を施せば鎧をより強固にすることだってできるぞ」

「あ…………」

言われてみれば確かにと初めて気付いたその事実に誰もが驚きと興奮を隠せずにいた。

魔術にそんな使い方があるとは誰も想像すらしていなかった。

「さっきも言ったが魔術が極めれば万能の力だ。少し知っているだけでも自分のクラスと合わせれば大きな力にだってなれるが、その為にも知識がお前等には必要だ。知識を得るのは魔術師の基本的な事。俺が教えるのは魔術に必要な計算とその応用だ。後は自分達で身に着けて自分だけの力を手にしてみせな」

ニヤリと口角を上げて告げる。

誰だって自分だけのオンリーワンの力には憧れがあることを熟知している。

翔だってそうだし、既に作っている。

同じ年頃なだけあってわかりやすく、誘導もしやすい。

始めは訝しんでいた生徒達も翔の言葉を聞いてやる気を出している。

「俺がここで臨時で働いている間は質問を受け付けてやる。実戦で魔術を試したいなら相手もしてやるが手は抜かねぇ。それでもいいのなら言いな」

生徒達がなにかしらの成果を上げてくれなければ翔も困る。だからこれは妥協案だ。

あくまで自分の為に翔は生徒達に魔術を教える。

「んじゃ、授業を始める」




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