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ひねくれ者の最弱魔術の使い方  作者: 幻影十夢
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束の間の休息

晴天の下で馬車に揺られながらモンスターに襲われることなく街道を進み、次の街を目指して旅を続ける翔達。

「……………………ショウって子供好きなの?」

「いきなりなに言ってんだ? お前」

突拍子もなく半眼を作りながらそんなこと言ってくるサクロに怪訝すると、サクロはハルを差しながら言った。

「だって私が近づいたら殴ったり蹴ったりするのにどうしてハルちゃんにはそんなに甘いの!?」

翔の膝上に座るハルはご満悦の表情で尻尾もふりふりと振るう。

そんなハルに嫉妬し、頬を膨らませて抗議に出るサクロに呆れる。

「訓練の時は別だがガキを殴るかよ。この程度でどうこうする気もねえし」

素直に甘えて来ている子供を無下に扱うのは気が引けるし、この程度は翔もどうということもない。

「だったら私も行ってもいいよね!? 私だって甘えたい! ショウに膝枕されて頭をなでなでされたいよ!」

「知るか。そこに藁があるからそれを枕にでもしてろ」

翔の視線を向ける先にあるのは備えてある藁の束。それを見てサクロはガクリと首を縦に折る。

「冷たい…………どうしてショウはそんなに私に冷たいの…………?」

「お前の日頃の行いを思い出してみやがれ」

いじいじといじけ始めるサクロに嘆息しながらそう言い放つとハルが翔の服を引っ張る。

「ご主人様、お願いします」

手渡されたのは櫛。それを見て翔の口からはまた溜息が出る。

「たくっ、何度目だ? いい加減に自分でできるようになりやがれ。俺だって好きでお前の髪を弄ってんじゃねえぞ? 俺だってガキには多少は融通は利かすつもりだがいつまでも甘えられるとは思うなよ?」

「って言いながらしてるじゃん…………」

口ではぐちぐちと言いながらもハルの髪をとかす翔にサクロは呆れ、操車しているラヴァンは苦笑い。

おまけに手慣れているかのようにシュ、シュ、と優しい櫛の音が鳴る。

翔曰く、大きな子供によくさたれた。らしい。

その大きな子供は誰なのかすぐに想像できた女性陣達。

「♪」

「うぬぬ…………羨ましい」

「ハハハ」

翔に髪をとかされて嬉しそうに破顔の表情になるハルを羨ましそうに見つめるサクロ。そんな二人をラヴァンは苦笑していると前方に光輝く何かを見て荷台にいる三人に声をかける。

「皆様方。少し先に湖がありますからそちらで休憩にいたしませんか?」

「賛成!」

「そうだな、馬もそろそろ休ませた方がいいか」

「はい」

ラヴァンの提案に反対の言葉もなく、翔達は休息を取る為に湖に訪れる。

「水も結構綺麗だな…………」

馬車から降りて湖を見て翔は水の透明度を見て地球の湖と比較して自然豊かな異世界だけあって湖の水はとても澄んでいた。

「たまにはゆっくり休むとするか」

長旅で突かれている馬やその馬を操っているラヴァンもそれなりに疲労が溜まっていると思い、労いという意味も含めていつもより多く休息を取ることにした。

「コン!?」

馬に顔を舐められて狐の鳴き声を上げるハル。獣人だから動物にもよく懐いている為に馬の面倒はハルが一任している。

「索敵(サーチ)」

魔術を起動させて周辺に危険なモンスターがいないかチャックする翔は次に万が一の奇襲に備えて結界を張っておく。

敵意や悪意を持って近づくものが現れればすぐに感知できるようにしておいた。

これで周辺の安全が確保できる。

「わぁ、綺麗だね」

「そうですね。これほどの透明度の湖は滅多にお目にかかれません」

「ハルも初めてです!」

湖を見て笑みを溢す女性陣。太陽の光が湖の水に反射してキラキラと輝きを放つ。

翔も感慨深くいいところに来たもんだ、と思えるほどだ。

「ねぇ、せっかくだから水浴びしようよ」

全員にそう提案を促した。

「いいじゃねえか? 特に危険もねえし」

透明度も高く澄んだこの湖なら水浴びしたいサクロの気持ちもわからなくはない。

だから肯定を取った翔なのだが。

「えっと、では………ショウ様、できればできるだけ視線を外して頂けると…………」

「ご主人様が望まれるのでしたらハルは脱ぎます!」

頬を赤くして明後日の方向を指すラヴァンに豪快に服を脱ごうとするハル。二人の様子を見て翔はそういえば、とあることを思い出した。

「………………お前等。水着持ってんのか?」

「え? なにそれ?」

「それってショウ様の世界の服の一種ですか?」

水着を知らない三人は首を傾げる。

どうやらこの世界に水着という概念は存在していないようだ。

水着を知らないとなると当然水着などない。なら三人が水浴びする方法は二つ。

翔は一応、万が一、念の為に訊いてみた。

「……………その恰好のまま水浴びをするのか?」

「いえ、それだと服が傷んでしまいますし」

「風邪も引いちゃうよ。それに基本的に水浴びは全裸が普通だよ」

どうやら翔の当たって欲しくない方が普通だった。

「まぁ、いずれは見るんだから今の内にショウも見慣れておいた方がいいよね? 我慢できなくなったら私が無料で相手してあげるから安心していいよ?」

笑みを浮かばせながら自分の服に手をかけるサクロ。

「ハルもどんとこいです!」

「え、で、では、私も…………!」

そんなサクロに続いて二人もこの中で唯一常識人であるラヴァンもつられて服を脱ぎ始める。

普段は隠された少女達の柔肌が外気に触れる。

白い腹や太股が太陽の下に姿を見せる女性陣達に翔は制止の声を投げる。

「ちょっと待ってろ!」

翔は慌ただしく荷台にある布を取り出してお得意の裁縫スキルで女性陣達の水着の制作に取り掛かる。

形を作り終えると次に魔昌眼(ミーミル)を開眼。

術式を書き込んでより完成度の高い水着を作り、そこに身に着けた人のサイズに自動調整できるように施す。

この時、翔はローレルにコスプレ衣装を作らされていて良かったと心の底からそう思った。

「これでも着てろ!」

放り投げる水着に女性陣達はそれに着替える。

「へぇ~これが水着か…………ねぇ、ショウ。これを商品にする気はないかな?」

黒の上下一組(ツーピース)、ビキニ姿となるサクロは初めて着る水着に商魂を燃やす。

「下手な裸より恥ずかしいですね…………」

白の上下一組(ツーピース)、サクロとは色違いのビキニだがサクロとは違い下半身に長いパレオを巻いている。

「うわぁ、とっても動きやすいです!」

スクール水着姿ではしゃぐハル。その胸元にはひらがなで『はる』と書かれている。

「それなら問題はねえな? ほらいけ、俺は寝る!」

最速で作り上げた水着に余計に体力を使った翔は三人を追い払って地面の上に寝転がる。

寝転んで見上げる空には青い空と自由気ままに流れていく雲。

「ふぁ」

不意に眠気が襲い、欠伸をする。

旅の疲労もあってか久しぶりののんびりできる時間ができた為に気が緩んだ翔はせっかくだから昼寝でもしようかと瞼を下ろす。

水遊びに興じている女性陣の賑わう声が遠くなっていよいよ意識が閉ざされようとする。

「―――――――っ」

その瞬間、翔は勢いよく起き上がる。

「チッ、昼寝ぐらいさせやがれ…………」

舌打ちをして結界に反応があったことに気付いた翔は湖で楽しんでいるラヴァン達に気付かれないようにその場から離れて反応があった場所に向かう。

魔術で重力を軽くして木々を飛び移る翔は反応のあった場所に訪れるとそこには巨大な蜘蛛がいた。

タランチュラをそのまま怪物にしたかのような大きなその蜘蛛は獲物だと思われる熊を捕食していた。

「……………………」

翔は無言で蜘蛛の上空に魔法陣を展開させて炎柱を生み出して蜘蛛を消炭にする。

あのまま湖のところに来たら面倒だからここで処分した翔は来て道を戻って再び昼寝に入る。

「またか…………」

だが、またしても結界に反応があってその場所に向かう。

そこにいたのは異世界で有名なモンスターであるミノタウロス。

牛の顔と人の身体を持つモンスターであるミノタウロスに落雷を落として瞬殺。

今度こそ昼寝に入ろうとするも。

「うぜぇ…………」

またしても反応があった。

その次もまたその次も。翔はせっかくの休息を取る暇もないくらいに慌ただしく動いた。

その間、女性陣は心行くまで水浴びを堪能していた。




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