↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひねくれ者の最弱魔術の使い方  作者: 幻影十夢
PR
29/96

天魔

七魔将の一角であるエクエスとの戦いに勝利を収めて生き残った三人は魔窟(ダンジョン)から出て街の宿に戻ってきていた。

「申し訳ございませんでした…………」

「ごめんなさい…………」

ラヴァンとサクロの二人は宿に戻るなり、翔に頭を下げて謝罪の言葉を口にした。

「何のお力にもなれずにショウ様の足を引っ張ってしまって申し訳ございません」

「私達が弱いせいでショウの左眼が…………」

翔は二人に気絶していた経緯を馬車の中で既に話している。

自分達を護るために左眼を犠牲にした翔に二人は己の弱さを悔やみ、翔に罪悪感を抱いている。

「お前等が謝る必要はねぇ。力が手に入ったんだ。左眼ぐらい安い代償だ」

翔自身は結果に満足している。

左眼が惜しいとは思わない。それ以上の力を手にすることが出来ただけで上々だ。

「ショウの黒くて綺麗な瞳が…………」

「お前、何の心配してんだ…………?」

変な心配をしているサクロに呆れる。

しかしながら目的の古代魔法(エンシャント)ではなくても自分寄りの力が手に入った。

だが、この魔昌眼(ミーミル)の扱いにはしばらくの間は不便だ。

右眼はいつもの光景が見えるも左眼に映るのはまた違った光景。何もない空間にありとあらゆるものが視えすぎてしまう為に脳の負担が大きい。

今も左眼の瞼を下して視界を閉ざしているからいいが、慣れるまでは眼帯をつけないといずれは視え過ぎるせいで脳に負担が掛かり過ぎる恐れがある。

ローレルと再会した時、中二病と言われそうで嫌になる。

それは置いておいて取りあえずは力を手にすることは出来ただけではなくエクエスに自分が脅威だと知らしめることもできた。

今頃は魔王の翔のことを報告して警戒しているはずだ。

そうなればいずれは刺客を送ってくるに違いない。そしたら煌の負担も減らせることができる。

歯向かう者、邪魔する者は倒す。

そういう輩を相手にするのは自分の役目だ。

「おい、サクロ。聖職者(プリースト)のお前に聞きたい。『天魔』ってなんだ?」

不意にエクエスが呟いていた言葉を思い出す。

エクエスが去った後で一度あの泉を魔昌眼(ミーミル)を通して調べてみたが何もわからず。

唯一手がかりがあるとすればエクエスが呟いていた『天魔』という言葉ぐらいだ。

「……………………ショウの口からそれを聞くことは思わなかったよ」

サクロは思いも寄らなかったのか目をパチクリさせながらその問いに答える。

「『天魔』は教会の関係者では嫌悪の対象だよ。神リュマダ様に仕えていた天使がリュマダ様に逆らい天から地上に追放された存在なんだよね」

「堕天使ってやつか…………?」

「う~ん、似てるけどちょっと違うかな? 堕天使は邪な欲望を抱いて堕ちた天使で天魔は神に逆らった罰として悪魔に堕とされた存在。だから天魔。そういう言い伝えだから私も詳しくはわからないよ」

困ったように話すサクロに翔は思う。

あの泉にあったあの何かは悪魔と呼べるような感じはしなかった。

しかし悪魔らしく対価を要求してきた辺りは翔の知る悪魔だ。

「どうしてリュマダ様に逆らったのかはわからない。だけど、凄い力を隠し持っているという話もあるからショウの左眼を見る限りは本当の話かもしれない」

天使でもあり悪魔でもある。それが『天魔』。

また知らない言葉が出て来て翔の頭を悩ませるが、一番気になる点はそこじゃない。

話にまた出てきたリュマダ神だ。

謎が多すぎるリュマダ神。その神の目的もどうして古代魔法(エンシャント)を人間族に授けたのか?

不明な点が多すぎる。

だが、それはそれだ。翔の目的は変わらない。

二人を見つけて元の世界に帰る。その為に必要な力として古代魔法(エンシャント)を探す。それだけだ。

リュマダ神の事は後々調べてまずは目的を最優先。

それにあたって今後の目標としては魔窟(ダンジョン)探索。

また別の魔窟(ダンジョン)を探してそこにあるかもしれない古代魔法(エンシャント)もしくは天魔から力を貰う。

この魔昌眼(ミーミル)だけでは勝てない敵も現れるかもしれない。

その為にもまた違う力が必要になる日が訪れるはずだ。

それを得る為ならどんな対価だろうが支払ってみせる。

「取りあえず、今後の方針だが…………まずはお前等の得物だな」

「……………………はい」

「うん…………」

二人が持つ得物はエクエスに両断されて使えなくなった。

新しい得物が二人には必要だが、翔は物は試しにある考えを実行する。

「お前等得物をそこに置け」

そう言うと二人は首を傾げながらも得物をテーブルに置く。すると翔は魔昌眼(ミーミル)の力を開眼させて錬金魔術を行使する。

一度全ての物質を分解、後に再構築。その間に術式を含めて新たな武器を作り上げる。

時間にして一分。二人の新たな得物が完成した。

長杖(ロング・ロッド)の杖と二振りのメイス。どちらも形状は前と変わらないがその性能は大きく変化している。

ラヴァンが使用する長杖(ロング・ロッド)は周囲の魔力を吸収して魔法の威力を上げるだけではなく、失った魔力を回復に使える。

サクロが使うメイスも前以上に硬化させて更には劣化を防ぐ効果がある。これによって武器が消耗することはない。

魔昌眼(ミーミル)によって得た知恵と知識を活用させて完成させた新しい得物に二人は破顔の笑みを見せる。

「ありがとうございます! ショウ様!」

「ショウの愛ある贈り物を大事にするね!」

「愛はねぇよ…………」

一々ボケを挟まないと気が済まないのかそんなことを言うサクロに嘆息しながら言うとサクロは何かに気付いたように翔に尋ねた。

「…………………ねぇ、ショウ。その錬金魔術でそこらの石を金に変えたりは?」

「……………………できるな」

肯定する翔にサクロはそそそっと翔に近づいて腕に抱き着く。

「お金、欲しいよね? 旅の資金が必要だよね?」

「緊急時ならするが普段はしねえよ。万が一にバレたら面倒事になる」

「ちょっと、ちょっとだけでいいから。身体で支払うから!」

「……………………いい加減にしやがれ」

「うきゅ!」

鬱陶しくなったサクロの頭に拳骨を炸裂。頭を押さえて呻き声を上げるサクロにラヴァンは苦笑い。

そんなサクロを無視(スルー)して話を続ける。

「ここは治安も悪ぃ。今日は休んで明日には次の街に出発するぞ」

もうこの街に用はない以上は長居は無用。治安の悪いこの街からさっさと出る翔の言葉にラヴァンは異論を唱えることなく首を縦に振る。

「そうですね。明日に食料を買い込んでそのまま出発になさいますか?」

「そうするか」

ラヴァンの意見に賛成して疲労が溜まった心身を休ませる三人。

―――その翌日。

次の街を目指して翔達三人は街を出た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。