魔窟
――――魔窟。
大昔の古代人が己の財宝を隠すために創り上げたとされている。
洞窟、遺跡、神殿と古代人は様々な形の魔窟を創り上げてその魔窟には古代人が残した金銀財宝が眠っているという一説もあり、その実在は不明。
そこの何があるのかはどの書物にも正確には記されてはいなかった。
それでも、万が一の可能性を求めて翔達は魔窟を目指していて移動している。
そこに眠っているかもしれない古代魔法を手に入れる為に。
「ねぇ、いい加減に機嫌直してよ…………」
「うるせぇ」
不貞腐れているかのようにそっぽを向く翔の機嫌をなんとか宥めようとするサクロ。その原因は昨夜のサクロの夜這いであり、挑発に乗ってしまった翔は危うく一線を越えかけた。
「まったく、サクロ様はもう少し慎みというものをですね」
「ちゃんと慎んでいるよ。しないのはショウのときだけ」
「ショウ様の前でもしてください!」
「おい、前見ろ」
手綱を握って操車しているラヴァンの小言を頂きながらも元凶であるサクロはどこ吹く風だ。
三人の中で操車できるのはラヴァンだけで、できない二人は馬車の中で得物を磨いたり、魔窟を探索する準備に取り掛かっている。
「こうか…………」
翔はリーヴル・ノーウェが記した本を片手に錬金魔術を己のガントレットに施した。
まだ基本的な事しかできないが、ないよりかはマシだろう。
「ショウ様、サクロ様。見えてきました」
ラヴァンの声に二人は前に視線を向けるとそこにあるのは天然の洞窟のような入り口をした魔窟を視界に捉える。
「あれが魔窟か…………? ただの洞窟じゃねえよな?」
そんな疑念を抱きながら到着し、翔は魔窟と思われる洞窟の中を覗いて先ほどの疑念は一瞬で解消された。
中は綺麗に整備された階段が奥へと続いてその先は見えない。
間違いなくここは魔窟だと確信した翔は自然に手に力が入る。
この先に求めているものがあるかもしれない。それを必ず掴み取る。
意気込みと決意を胸に秘めて翔は二人と一緒に念入りに準備を行ってから魔窟に入る。
「行くぞ」
翔の言葉に二人は力強く頷いて三人は魔窟にその足を踏み入れる。
長い下り階段を下りて行く三人。中は光を差さない暗闇と思っていたがそうでもなく、淡い輝きを放つ鉱石が魔窟の壁のあちこちに存在している。
光灯石と呼ばれる光を放つ鉱石のおかげか灯りを頼ることなく前に進められる。
そして長い下り階段を下りて行き、三人は漸く階段を下り終えて平らな道に足をつける。
「魔窟より迷宮だな…………」
下りた先にあるのは広い空間。そこにある通路や階段が不規則に繋ぎ合って滅茶苦茶な具合になっている。
ある意味ダンジョンらしいといえばらしいが、面倒この上ない。
「お前等のどっちかマッピングはできるか?」
地図作製という技能を持っていない翔は後ろにいる二人にそれができるかどうか尋ねてみた。
「あ、私できます。城に滞在していた頃に学びましたので」
「じゃ、頼む」
「はい」
羊皮紙とペンを取り出して早速この広い空間から地図を作っていくラヴァン。
「取りあえずしらみつぶしに行くぞ」
どこが正規の道かわからない以上は一つ一つ潰していくしかない。
三人は一番近くにある通路に足を向ける。
周囲に警戒しながらその通路の奥へと足を動かす三人。すると、ガコンと翔の足が床のブロックを一つ踏み抜いた瞬間、足場が消えた。
「―――――――っ」
急な浮遊感と共に空いた穴に落ちていく翔はブーツに魔力を注ぐ。
「《空歩》!」
宙を蹴って空を駆ける翔は無事に穴から脱出した。
「ショウ様!? ご無事ですか!?」
「大丈夫!?」
「……………………問題ねぇ。クソ、テンプレトラップに引っかかった」
しかし、想像以上に焦った。万が一を備えてブーツに術式を組み込んでいたおかげで早くも功を奏した。
ブーツに術式を書き込んで魔力を注ぐことによって空気を足場にして宙を疾走できる魔道具を作っておいた。
穴の底を覗き込むと底には剣山に突き刺さった白骨の死体。
もし、この魔道具を作っていなければ翔は間違いなく串刺しになっていた。
頬に冷汗が垂れる。
一つの行動によって命を落とすかもしれない魔窟の恐怖を身を持って体験した。
それでも翔の足は止まることなくその先へ進む。
覚悟は既に固めた。こんなところで死ぬ訳にも立ち止まることはできない。
罠に警戒しながら奥へ進む三人が待ち受けていたのは壁。行き止まりだった。
一応、隠れ道があるかどうか調べてみたが特にこれらしいものはなく三人は大人しく来た道を引き返して先ほどの広間にある別の道に進むと今度は人の形をした木のモンスターがいた。
人間の大人ぐらいの大きさをした木のモンスターが大群となって三人に襲いかかってくる。
「【帯びよ、炎。荒ぶる轟炎は一切合切の全てを焼き尽くし、焦土と化す】!」
襲いかかる木のモンスターに詠唱を唱えて魔法を放つ。
「【ヴォルケーノ】!」
ラヴァンお得意の炎の魔法は木のモンスターを呑み込み、全てを焼き尽くした。
そしてその先に進むもまた行き止まり。
再び来た道を引き返して別の道へと進むと今度は灰色の体皮をした蜥蜴に似たモンスターだ。長い尻尾も含めた全長なら先ほどの木のモンスターよりも大きい。
「今度は私が行くね!」
両手にメイスを持って蜥蜴のモンスターに接近、メイスを頭部に叩きつける。
「ぎぇっ!?」
奇声を上げて絶命する蜥蜴のモンスター。続けてサクロは両手に握り持つメイスで打撃を与えていく。
聖職者とは思えない活発な動きと容赦のない攻撃は前衛のクラスと遜色はない。
傷一つ負うこともなく全滅させた。
本人自身も強いと言っていたが、ここまで強いとなると今は心強く思う。
だがその道も行き止まりだった。
それからも別の道を探ってはまた別の道を探る。
その度に罠やモンスターを回避、撃退しながら三人は長丁場になることを覚悟する。




