装備を買う
「見えてきましたよ。次の街です」
煌とローレルの二人の行方と古代魔法を求めて旅をする翔達は次の街を目前とする。
「ねぇ、本当に顔を隠さなくてもいいの?」
「問題ねえ。むしろそっちの方が疑われんだろうが」
心配そうに尋ねてくるサクロに堂々と言ってのける。
前の街で冤罪とはいえ魔族を街に招き寄せた反逆罪で処刑とされるはずだったサクロとそのサクロを強引に救った翔はいわばお尋ね者。
街の検問に引っかかれないか心配するサクロはせめて顔だけでも隠したらと提案するのだが翔はそれを一蹴。
「あの後、教皇の悪事を調べて朝一にそれを証拠品として警察署に放り込んできた。お前の冤罪も含めてな。今頃教皇は牢屋で臭い飯でも食ってんだろう」
ハッ、と鼻で笑いながら言う翔にサクロは目を丸くする。
翔もただ単に無策無謀でサクロを助けに行ったわけではなかった。
牢屋でサクロと話して宿に戻った後、教会に忍び込んでサクロが隠した金を取って教皇の悪事を調べてそれを証拠品として纏めて朝一番にそれを警察署に放り込んでいた。
流石に異世界で監視カメラもなければ赤外線センサーもない。見回りの警備にさえ気を付けて行動すればどうとでもなった。
唯一罪状があるとすれば翔の公務執行妨害ぐらいだろう。
「嬉しい! 私の為にそこまでしてくれるなんて! お詫びに無料で抱きしめてあげる!」
「だぁあ! くっつくな! 鬱陶しい!!」
「お二方! 馬車の中で暴れないでください!!」
抱き着いてくるサクロを振りほどこうとする翔。そんな二人を叱るラヴァン。
三者三様の反応をするなかで三人は正門前に移動して簡易の取り調べと質問だけで街の中には入れた。
「……………………前の街に比べると治安はそこまでよくなさそうだな」
馬車の中から街の様子を見てそう呟いた。
前の街は治安もよくて綺麗な街でもあった。だが、この街はゴロツキのような者が多く、肥えている人もいれば貧相な人もいる。
街もぱっと見た感じではお世辞でも綺麗な街とは言えない。
「おい、馬車を止めて先に宿に向かうぞ。その後で行動だ」
「はい」
「わかったよ」
二人も翔の言葉に異を唱えることなく同意して馬車を馬小屋に預けて宿を探す為に街中を歩くと周囲の視線が三人、いや、ラヴァンとサクロに向けられている。
卑下な眼差しを向けられてラヴァンはやや嫌そうにして翔の近くに寄り添い、サクロは気にする素振りすらみせずに翔の隣を歩いている。
「ねぇ二人共。先にちょっと武器屋に寄ってもいいかな?」
「あぁ? ああ、お前メイス使ってたな」
前の街での魔族襲来の際に見た二振りのメイス。流石にそれまで持って逃げることは出来なかった為にサクロの得物はない状態だった。
「まぁ別に問題ねぇ。お前は?」
「私も問題はありません」
二人も先に武器屋に寄ることに反対はなく三人は宿より先に武器屋を探そうとする。
瞬間、背後から襲ってくる男に翔は回し蹴りを炸裂させた。
「ぐぅ!?」
「ハッ、わかりやすいんだよ!」
「ぶうッ!!」
続けてもう一人の男の腹部に拳撃を放ち、その場に蹲って動かなくなる。
その男の手元には人一人は入れるほどの袋がある。
それを見てすぐに察した。
この男達はラヴァンかサクロのどちらかを攫って奴隷商人に売ろうとしていたことに。
「……………………ショウって拳闘士?」
「魔術師です。一応」
二人は翔の拳の威力を間近で見てそんなことを話している。
そんな二人の話を無視して翔は蹲っている男の髪を乱暴に掴んで顔を強引に上げさせる。
「おい、なんでこいつらを狙った?」
「か、金になるからだ…………ッ。そんないい女ならどっちでもいい金になって一儲けできると思って…………」
「へぇ? 奴隷商人にでも売るつもりだったか? なら俺がお前等を売って金してやる。毎日金持ちの下で働けるな?」
冷笑を浮かばせながら話す翔に男は顔を青ざめる。
「わ、悪かった…………許してくれ…………」
「はぁ? 自分がされる立場になったらそう言うのか? 流石に都合が良過ぎね?」
「か、勘弁してくれ…………! もう二度としねえ! だから…………ッ!」
「だからなんだ? それで許すほど俺は優しくなくてな。……………………と普段なら言うが、特別に許してやる。代わりにこの街で一番いい武器屋と宿を教えろ」
「あ、ああ…………ありがてぇ…………それなら――――――」
男は素直にこの街にある武器屋と宿を教える。
「なるほどな、いいぜ。許してやる。だが、次に二人を狙ったら容赦しねえ。死を懇願するほど嬲り続けてやる」
「ひぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっっ!!」
最後にしっかりと釘を刺して男は仲間を担いで走り去る。
「行くぞ」
聞き出した武器屋を目指す翔に二人はついていく。
「ショウってああいう輩に手慣れてる?」
「凄い様になってましたよね?」
「ほっとけ」
二人の質問を一蹴して三人は武器屋に足を運ぶ。男の言葉に嘘はなし品揃えも充実している。
「へい、いらっしゃい! いい武器もいい防具も揃ってるよ!」
サクロは自分の得意とする得物であるメイスを探し、翔とラヴァンも見て回る。
「一応防具も買った方がいいか。魔窟に行くなら尚更」
「そうですね。あるとないとでは大きく違いがあると思います」
古代魔法があると思われる魔窟。そこで何が起きるかわからない以上は備えておいて損はない。
幸いにも不死の王討伐で得た金はあるからそれなりに良い装備は買える。
「兄ちゃん! いい体格してんな! クラスは戦士か!?」
「違えよ。魔術師だ」
活気ある声で話しかけてきた子の武器屋の店長は翔が魔術師とは思わずに一瞬呆気を取られた。
「はぁ…………てっきり戦士だと思ってこれを買って貰おうと思ったんだがな」
店長の手には白銀のガントレットとブーツ。
「戦闘に耐えられるように堅牢さと実用性が高い。値は張るがいい装備なんだが…………」
「それはいいな。いくらだ?」
「おっ! 買ってくれるのか!? なら50万ユールで兄ちゃんに売った!」
「ほらよ」
金を渡して商品を手にする翔は早速それを装備してみるも特に違和感はなくしっくりとする。
「……………………ますます魔術師から離れていきますね」
「うるせぇ」
ガントレットにブーツを装着してより近接戦に向いてきた翔の姿にラヴァンはもはや苦笑い。
そしてラヴァンも自身の身を守る為に胸当てを買った。
「お待たせー! いいメイスがあったよ!」
丁度いいタイミングでサクロも戻ってきて三人は装備を買って武器屋を出る。
「毎度――――!!」
三人はその後、宿に訪れて部屋を二部屋借りる。
「私とショウが一緒の部屋でラヴァンが一人だね。わかってるよ」
「おい、こいつを見張ってろ」
「わかりました」
察しているかのような顔で言うサクロを無視して翔はラヴァンにサクロの見張りを頼んだ。
当然男女別れて部屋を借りた。
「よし、今後の予定を確認するぞ」
一つの部屋に集まって三人は今後の行動について話し合う。
「明日は情報収集だ。煌とローレルの行方、古代魔法そして魔窟。この三つの情報を集める。特に魔窟は必須だ。攻略の為にも少しでも情報が欲しい」
万が一の可能性ではあるが、そこに古代魔法がある可能性も捨てきれない。
「今日のように攫われると面倒だからお前等は明日一緒に行動しろ。俺は一人で動く」
「私達のことを心配してくれているのですね」
「それならショウも一緒に動く?」
「うるせぇ。あとそれだと効率が悪い。いいか? 捕まっても俺は助けたりしねえからな?」
冷たい発言をするも二人は暖かい眼差しを向けている。
きっとなんだかんだ言って助けにくると二人はわかっているからだ。
「取りあえず今日はこれぐらいだ。ほら、さっさと出てけ」
シッシッと追い払うように退出を促す翔に二人は笑みを見せたまま出て行く。
「あ、一緒に寝たくなったらいつでも来ていいからね?」
「誰が行くか!?」




