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ひねくれ者の最弱魔術の使い方  作者: 幻影十夢
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お金に執着する理由

サクロが現在いるのは自分の部屋ではなく、この街の警察署にある薄暗い牢屋。

簡易な寝台とトイレ。それに鉄格子のはまった窓。

その寝台に腰を下ろしてサクロは静かに時が過ぎるのを待っていた。

先日、翔と別れてすぐのことだった。

教会に戻って祈りを捧げようと聖堂に向かう途中で教皇と警察が聖堂前で立っていた。

最初はそれに怪訝したサクロだったが、それはすぐに驚愕に変わった。

教皇の口から自分がこの街に魔族を引き寄せた人類の反逆者と告げられ、こちらの言い分も聞かずに強引に牢屋に連行された。

ご丁寧に魔力を封じる手錠までされ、サクロは自由を封じられている。

抵抗する意思はもうないのだからいい加減に外して欲しいと思うが、そんな言葉を信じてはくれないだろう。

「……………………処刑かな」

裁判も待たずに自分が処刑されるのは目に見えてわかる。

人類に脅威をもたらす者は容疑にかけられた時点で反逆罪だ。その程度によって罪状に変化はあっても重罪であることには変わらない。

それも国を滅ぼそうとした存在であるサクロなら処刑は確定事項だ。

「おい」

聞き覚えのある声が牢屋の外から聞こえてサクロは小さく笑みを作る。

「来てくれたんだね…………」

「うっせ」

サクロの牢屋の外で壁に背を預けている翔は両腕を組みながら言う。

「外は面白いことになってんぞ。聖職者(プリースト)が魔女だったって下らねえ話で盛り上がっていやがる。どう考えても冤罪だろうが」

「疑ってないの…………?」

「話が急すぎんだよ。それに仮にお前がそうだったとしてもお前が戦う理由がねえからな。大方、お前が溜め込んだ金目当てなんだろう。碌に信仰心もないお前を処刑してその金を自分の物のしようと誰かが企んだ計画だと俺は踏んでる。たくっ胸くそ悪い」

イラつきながら悪態を吐く翔にサクロは笑みを作ったまま言葉を告げる。

「犯人は教皇だよ。表向きは立派な教皇様だけど、教会の地下に教皇の隠し財産があるのを私は見たから、多分その口封じも兼ねているんだろうね」

「ハッ、まっくろくろすけじゃねえか。教皇が聞いて呆れる」

「他の信者ならまだ教皇の言葉を信じて説得できたのだろうけどショウの言う通り碌に信仰心を抱いていない私は教皇のは邪魔な存在だったんだろうね」

それで今回の魔族の襲撃を利用してサクロを犯人に仕立て上げた。

本当に腹正しいことをしてくれる教皇に翔は今すぐにでもぶん殴ってやりたい気分だ。

「で? お前はどうするんだよ? 散歩がてらここまできたついでにこの壁ぶっ壊してやろうか?」

手元に魔法陣を展開させていつでも牢屋の壁を破壊できるように構えているとサクロはそれを断った。

「いいよ。私のことは気にしないで」

「……………………お前わかってんのか? このままだと間違いなくお前は濡れ衣を着せられたまま殺されるぞ?」

「そうだよね。だけど、それでこの街の皆が安心できるのなら別に構わないよ」

「……………………それでお前は納得できんのかよ?」

「うん、覚悟はもうできてるから」

サクロは全てを受け入れて死を迎える覚悟はできていた。

それに翔は知らず知らずのうちに手に力を入れている。

「ねぇ、最後に私の話を聞いてくれないかな?」

「聞くだけ聞いてやる」

翔は最後にサクロの話に耳を傾けることにすると彼女はありがとうと告げて自分の半生を語る。

「私はね、幼い頃に両親に捨てられた捨て子なんだ。貧しい家庭でもう私を養える余裕がなかったから捨てられたんだよね」

そんな捨て子だったサクロを拾ったのは孤児院を経営している心優しい院長だった。

その孤児院も決して裕福ではなく、それでも自分と同じ境遇の子供と優しい大人達に囲まれてサクロは両親に捨てられた傷が癒えていき、皆と一緒に笑えるようになった。

だが、それから数年後に院長は病に患う。病気で治すには多額の金が必要だった。

大人達は孤児院を経営しながら別の仕事で金を稼ぎ、子供達も援助や街の手伝いなどで少しでも多くお金を集めよとした。けど院長は病に侵されてこの世を去った。

院長の死後、孤児院は解体。元々裕福ではなかった為に院長の死をきっかけに取り壊されることが決定し、サクロを含む孤児院の子供達はそれぞれ別の孤児院に引き取られた。

お金があれば両親に捨てられることもなかった。

お金があれば自分を拾ってくれた院長は死ぬことは無かった。

サクロは学んだ。お金があればきっと何もかも違ったんだと。

それから別の孤児院に引き取られてからサクロはお金に執着するようになった。

聖職者(プリースト)になった今でも金が手に入る機会があれば遠慮なく金を手に入れる。

それがサクロ・クリッドの半生だ。

「だから私はお金を集めていたの。お金があればきっと救える命もあるから…………」

「そうかよ…………」

サクロの半生を聞いて翔はそれ以上は何も言わなかった。

口を開けばきっと悪態を吐く。そういう自分の性格は重々承知しているからそれ以上は何も言わない。

「でもそれもお終い。最後は潔く死ぬよ」

「……………………」

潔くも自らの運命を受け入れて死を選ぶ彼女に翔は何も答えない。

覚悟を決めた彼女に言う言葉などないからだ。

「ショウ、聖堂の祭壇の下に私が今までに溜め込んだお金がある。それを全部ショウにあげるから今夜にでもこの街を去って」

「……………………」

「我儘を言っている自覚はあるよ。でも、ショウにはショウの目的があるよね? その為に使ってくれるのなら私も嬉しいし、何より教皇に使われて欲しくないの。それに、私の最後の瞬間を君に見せたくないから…………お願い」

「……………………わかったよ」

渋々と言った感じで返答して翔はその場から離れていく。

「……………………願わくば貴方に幸せな未来が訪れますように」

最後の彼女の言葉を聞いて翔はその場を去った。

「クソッたれが…………」

吐き気がする思いを愚痴にしながら翔は宿に戻る。

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