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伝説のレフリー津久田健次郎、悪役令嬢に転生す。  作者: 南蛇井


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80/82

宗教問題へ“政治問題”が拡大

聖務院が《正式評価会》を強行しようとした、その翌日。

王都全体が、微かだが確かに揺れ始めていた。


宗教問題で済むはずだった火種は、

帝国・連邦の介入により、あっという間に“政治の領域”へ広がった。


◆王国宗教勢力 vs 学院(学術派)


学院が「学問の独立」を主張する一方で、

聖務院は「神意の解釈は宗教権威の管轄だ」と譲らない。


互いの思想が正面からぶつかり、

その衝突は、職員室から講義室の隅々まで伝播していった。


学院の廊下では教授同士の激論が日常になり、

学生たちでさえ、

「学問か、信仰か」のどちらに肩入れするか問われ始める。


◆宗教勢力 vs 帝国神統院


聖務院の内部文書には、もはや隠しきれない焦りが滲んでいた。


“帝国の神意干渉術師セラフィナがレティシアに接近。

 主導権喪失の恐れあり。”


帝国からの使節が学院に入ったことで、

聖務院は自らの権威が奪われる未来を直視せざるを得なくなった。


だからこそ――

彼らは評価会を前倒しにし、

強引にでも権限を確保しようとする。


それは、帝国と王国宗教勢力の間に、

確かな火種を落とす行為だった。


◆聖務院 vs 王政府


聖務院の独断専行は、ついに政府内でも問題となり始める。


王政府高官

「学院は国の教育機関だ。

 宗教だけで動かすわけにはいかない」


聖務院側

「神意に関わる事だ。政府の口を挟む余地はない」


意図せずして、権力機構の亀裂まで表面化した。


◆学院内の学生たちにも走る緊張


そんな大きな波紋が、

最も弱い立場にいる学生たちの耳にも届く。


廊下の隅で、

昼食の列で、

図書館の静寂の中で――

レティシアの名前だけが独り歩きを始めた。


「聖務院が、レティシア嬢を“連れていく”段取りらしい……」


「帝国と連邦の使節も狙ってるって噂だぞ。

 どうなるんだよ、王国……」


「……学院って、こんな危ない場所だったの?」


はじまりは、ただの噂だった。

だが繰り返されるほどに、

それは不気味な現実感を持ち始める。


◆そして――当のレティシアは。


世界のどこより静かな、学院寮の小さな部屋。

昨日よりも早く沈む夕日が、

レティシアの机の影を長く引き伸ばす。


彼女は知らなかった。


自分が踏みしめる床の下で、

宗教と政治と国際情勢が絡み合い、

巨大な渦をつくりはじめていることを。


知らぬまま、

孤独なまま、

ただ“いつも通り”を守ろうとする。


その姿こそ――

各勢力が求める中心点であり、

同時に最も脆い火種でもあった。


レティシアは、まだ分かっていない。


自分の周囲で静かに燃え広がる炎が

もう誰にも止められないところまで来ていることを。

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