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伝説のレフリー津久田健次郎、悪役令嬢に転生す。  作者: 南蛇井


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学院派との対立が再燃する

学院教務院の応接室。

午後の光が差し込むはずの窓辺は、いまや重たい緊張に押しつぶされていた。

部屋に座る三人の間には、まるで薄い氷の膜が張り詰めているかのようだった。


神官学者は、書類を軽く整えたうえで静かに口を開く。


「レティシア嬢を《正式評価会》へ。

 神意の揺らぎが確認されている以上、これは義務であり――当然の措置です」


声は穏やか。

しかしその響きには、決定事項を告げる者の硬さがこびりついていた。


対面するゼフィル教授が、机を指で叩いた。

耐えていた怒りが、ついに表情の底から浮かび上がる。


「本気で言っているのか、君たちは!

 あれは――神意評価は、人生を文字通り変える儀式だ。

 まだ未来が決まってもいない学生に背負わせる代物じゃない!」


神官学者は、教授の激昂など初めから織り込み済みだと言わんばかりに、無表情のまま返す。


「人生が変わったのは、学院で起きた“逸脱”の時点です。

 その中心にいたのは、間違いなく彼女でしょう?」


淡々とした断言。

しかし言葉そのものが、粘度のある毒のように空気を濁らせる。


学院長が深い皺を寄せ、両手を組んだ。


「国外勢力の接触で焦っていることは理解する。

 だが、理由がそれだけで儀式を急がせるわけにはいかん。

 神意評価は学院と王国の双方に関わる問題だ……慎重に行う必要がある」


その言葉に、神官学者の口元がわずかに引きつる。

微笑にも、嘲りにも見える――“黒い笑み”。


「では――」

彼はゆっくりと書類を閉じた。

まるで勝利を確信した者の動作だった。


「帝国に先を越されても構わない、ということですね?」


その一言は、

まるで刃のように応接室の空気を斬り裂いた。


学院長の表情が固まり、

ゼフィル教授の肩が震え、

窓の外で吹いた風まで凍りついたかのように静まる。


――聖務院と学院の対立は、もう引き返せないところまで来ている。


その瞬間、部屋にいた全員が悟った。


レティシアを巡る争いは、

もはや“学院内の問題”ではない。

国と帝国と連邦――

宗教と政治と学術の複雑な綱引きが、ついに学院内部へ噴き出したのだ。

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