:セラフィナの真の狙い(火種その2)
舞台:学院・臨時会議室(帝国側控室)
王国学院の華美な迎賓区画から奥へ案内され、
帝国側に割り当てられた控室に入ると、
セラフィナはゆっくりと扇を閉じ、誰もいない室内に静かに視線を巡らせた。
背後で控えていた神統院補佐官が、
彼女の表情の奥にある“別の目的”を感じ取り、慎重に口を開く。
補佐官
「……レティシア嬢は、本当に“中心点”なのですか?
まだ確証は――」
セラフィナ
(淡く笑いながら)
「確証は後からついてくるものよ。
世界が揺れるとき、必ず中心には“逸脱を起こす少女”がいる。
それは物語でも、歴史でも同じこと――」
扇でそっと空を払うように動かしながら、
その微笑は、慈愛のようでいて、ぞくりとするほど冷静だった。
机の上には、帝国から運ばれてきた封緘済みの書類が置かれている。
セラフィナはそれを指先で軽く叩いた。
帝国宗務局・極秘計画書
【“神意の揺れの中心点”――
レティシア・アーデルハイトを確保し、
王国意思決定への影響力を獲得すること】
補佐官は眉を寄せる。
「……つまり、“少女そのもの”ではなく、
彼女がもたらす影響を……?」
セラフィナ
「ええ。彼女が何をするか、何を選ぶか――
それが、王国の未来を決めるわ。
だからこそ、帝国が最初に手を伸ばす必要がある」
補佐官
「ですが、王国側は必ず警戒を……」
セラフィナはその言葉を、
まるで子どもの心配をあやすかのように微笑みで包んだ。
「警戒させればいいのよ。
“恐れ”は人を動かし、“不安”は決断を早める。
そして――そのどちらも、帝国にとって好都合だわ」
一歩、彼女は大理石の床を踏みしめる。
その姿は、優雅な聖女にも、
策謀を編む女帝にも見えた。
「さあ、準備をしましょう。
レティシア嬢と王国がどんな反応を見せるのか……
これからが一番、面白いところですもの」
淡金色の髪に差し込む光が、
まるで彼女の笑みを冷たく照らした。




