学院内の各勢力が“彼女の登場”で揺れる
セラフィナが学院へ姿を現したその瞬間から、
まるで静かだった池に巨大な石が落ちたように、
王国の内部は一斉に波立ち始めた。
彼女は何もしていない。
ただ微笑み、ただ情報を求め、
ただ歩いただけ。
だが――それだけで充分だった。
●聖務院
聖務院の廊下では、
普段は威厳を崩さない高官たちが、露骨にざわめいていた。
「帝国の神統院が……学院に?」
「神意の解釈主導権が奪われるぞ」
セラフィナが一歩足を踏み入れただけで、
彼らは自分たちの権威の喉元に、
鋭い棘を押しつけられた気分になっていた。
実際、彼女は神の名を掲げて行動する。
それは聖務院の領分を踏みにじる“他国の聖域侵犯”に等しいのだ。
●学院(学術派)
学院の研究棟では、
魔術学者たちが露骨に眉をひそめていた。
「宗教勢力が学院を荒らし始めた……」
「しかも帝国か。最悪だ」
彼らは宗教的解釈より“事実”を重視する。
セラフィナのような存在は、
学問を曇らせる不確定要素以外の何物でもない。
しかもユールグ(北方連邦)という学術派の強者が既にいる。
そのため学院内は、
宗教派(帝国) vs 学術派(連邦) の情報戦の様相を呈し始めた。
「……ユールグ殿、帝国の資料にも目を通したのですか?」
「必要ない。事実だけを見ている。」
静かな火花が散る。
●貴族派
一方、学院内の貴族学生やその親族は、
別の意味で肝を冷やしていた。
「帝国が動いた? 王国の内政を探っていると?」
「学院から政治不安が広がるなど……!」
彼らにとって学院とは“保身の砦”。
そこへ国外の鋭利な刃物が持ち込まれた以上、
安心などできるはずがない。
おそらく一番怯えているのは――
王太子周辺だろう。
●政治派
そして国政の中枢では、
官僚たちが深刻な顔で報告書を机に叩きつけていた。
「レティシア・アーデルハイト――
この少女の存在が、いまや国政不安の種だ」
「一介の学院生だぞ?」
「だが、帝国と連邦が嗅ぎつけた。
その時点で、もう“ただの学生”ではない。」
レティシアの名前が、
王国の政治資料の“重要因子”欄に記されてしまう。
●そして――
セラフィナただ一人が学院に来ただけで、
国内勢力はすべて軋み始めた。
誰もが薄々察していた。
この軋みはまだ序章でしかない。
そして――
その中心に立たされている本人、レティシアだけが、
まだ自分の影響の“規模”を理解していない。




