表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説のレフリー津久田健次郎、悪役令嬢に転生す。  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/82

すれ違う“健次郎の常識”と“この世界の因果”

夕暮れの光が学院の石床を淡く照らし、

レティシア(健次郎)はそこを歩きながら、胸の奥が重く沈むのを感じていた。


自分が歩くたびに、周囲の視線が揺れる。

それだけならまだしも、その視線に宿る“意味”が、

どれもこれも健次郎の常識とは噛み合わない。


◆すれ違っていく“二つの常識”


健次郎にとって、この世界は

「乙女ゲームの延長線上にある、“一応、理屈が通るはずの世界”」

という認識だ。


行動すれば、結果がある。

発言すれば、解釈がある。

それは分かる。普通だ。


だが――

この学院、この世界は、もっと根本が別物だった。


わずかな仕草、ちょっとした言い回し、

軽い返答、ふとした沈黙。


そのすべてが、

“物語構造の都合で回収される”のだ。


文字通り、世界側が因果を組み替えて意味付けしてくる。


◆小さな行動が“象徴化”されてしまう


レティシア(健次郎)が困ってため息をつけば――

「深い思索に沈んでおられる」

と学院派は受け取る。


ただ人混みが苦手で少し距離を置けば――

「その清廉さが神に愛されているのだ」

と聖務院派が囁く。


お礼を丁寧に言えば――

「気品の滲む物腰だ。将来有望だ」

と貴族派が双眼鏡のように観察してくる。


何もしていないときでさえ――

政治派は

「何もしていないのが逆に不自然だ」

と記録を残し始める。


すべて、健次郎の意図とはまったく関係がない。


◆“自分”が遠ざかっていく恐怖


レティシア(健次郎)は胸に手を当てて歩を止める。


(……俺はいったい、

 この世界で“何者として扱われてる”んだ……?)


レティシアでもない。

悪役令嬢でもない。

ましてや聖女でも改革者でもない。


ただただ、


「トラブルを避けたい」

「普通に生きたい」

「静かにしていたい」


――それだけだったはずだ。


なのに、世界はその“普通”すら素材にして、

新しい意味や称号を勝手に積み上げていく。


まるで、“中心に立つ者”として配置しようとするかのように。


◆それでも健次郎は願う


心の奥で、レティシアの思考は必死にこぼれる。


(頼む……

 俺はただ、平和に暮らしたいだけなんだ……

 目立ちたくてやってるわけじゃないんだよ……)


しかしその願いすら、

周囲から見れば“謙虚さゆえの奥ゆかしさ”という評価に変換されてしまう。


望まぬまま、物語が形を変えていく。

そして気づけば、中心に立たされているのは――


他でもない、健次郎自身だった。


世界の因果が、

この“異質な存在”を物語の軸に据えようと

静かに蠢き始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ