91 タマルの緊急事態
投稿頻度を減らしてしまい、申し訳ないです。
ですが、頑張って書いていきます!
今回はカネガたちの目論見が暴かれます!
カネガ邸を後にして、わたしとクレアは再びミケルたちの下を訪れようとスラム街を目指していた。
その道中、わたしの頭はさっきの一幕のことでいっぱいだ。
どうしてなのかはわからないが、クレアは闇魔術スキルの影響を受けず、その結果、宝玉を奴らに渡すことなくことなきを得た。
本来ならば、相手の命令には背けないはずなのに、クレアは平然と切り抜けたのだ。
どうやったのか……。
わたしには、それが疑問でならなかった。
「クレア……さっきの……どうやったの?」
そう問いかけると、クレアは楽しげに笑う。
「わかんない!!渡したくなかったから逆らってみたら、案外すんなりとね!」
その屈託のない笑顔を見れば、疑問に思うことすら甚だしく思えた。
そ……そうだよ!
考えたってわからない!
けど、宝玉は無事に守れたんだ!
悩む必要なんてないんだよね!
そうやって現実逃避みたいなことを考えていたら、ガイドさんにツッコまれた。
『問題の先送りかと……宝玉の詳細はわかっていませんし、おそらくカネガたちが取り返しに来る可能性があります。』
確かにその可能性は高い……というか、ほぼ確定事項だろう。
『タマルの力についても気になることがあります。早急に対応すべきかと……。』
そう言われると、不安が募る。
ガイドさんの言うとおり、今の状況は不確定要素だらけだ。
ガイドさんはタマルの力を解析したいと言っているし、妙な胸騒ぎもし出したから、まずはやっぱりミケルたちの下へ急いだ方がいい。
そう考えて、クレアに急ごうと促したその時だった。
目の前から走ってくるミケルの姿に気づいたのは。
その表情には不安と焦りが滲んでいる。
良からぬ想像が頭をよぎったわたしは、すぐさま彼女の下へと駆けつけた。
「ど……どうしたの!?」
「タマルが……タマルが……!」
「ミケル……落ち着いてよぉ!タマルがどうかしたのぉ?」
パニックになっているミケルの背中をさすり、落ち着くように促すと、彼女の口から思いもよらぬ一言が飛び出した。
「タマルが……いなくなったの!!」
やられた!
直感的にそう思った。
「どこでいなくなったの!?」
「い……家の外で遊んでたはずなんだけど……呼んでも返事がないから辺りを探してみたら、いなくなってて……」
『おそらく、カネガたちの差し金である可能性が高いです。』
そのとおりだと思った。
この街を管理する子爵なら、わたしたちがミケルたちと出会っていたことも知っていた可能性は高い。
タマルを攫った理由は、たぶんこの宝玉だろう……。
タマルを返して欲しくば、その宝玉を……。
そう笑うカネガの顔が浮かぶ。
だが、ガイドさんは別の懸念を抱いていたようだ。
『事はもっと複雑です。推察するに、タマルが攫われた理由は宝玉ではなく、彼女の力……聖光術が大きく関わっていると思われます。』
聖光術とは、昨日言っていたタマルの力のことだ。
使える者があまりいないので、その力についてはあまり知られていない聖なる力。
帝国や王国の首都にある教会には、何人か使える者がいると聞いたことはあるが、わたしの父もほとんど会ったことはないと言っていたくらいレアなスキルである。
『十分ではありませんが、昨日の解析により、タマルは聖光属性の因子を持っていると判断しました。聖光術は闇魔術と相反するスキルであり、昨日のタマルの発言から推測すると、彼女がクレアに掛けられた闇魔術を無意識に解除した可能性があります。』
なるほど……!
だから、宝玉を渡すことなく、わたしたちは帰って来られたのか。
そう考えれば、先ほどのカネガ邸宅での一件については理由が立つ。
『タマルが暴漢どもに追われていたことを思い出してください。あれは、タマルの力を恐れたカネガたちの仕業である可能性が高いと考えれば、今回彼女が攫われた理由にもなります。』
タマルが襲われていたことは覚えている。
わたしたちが助けたのだから、忘れるはずはない。
でも、あれはただの盗賊でたまたま襲われていただけ……そう考えられなくもないのでは?
そんな疑問はガイドさんに簡単に否定された。
『その考えは浅はかです。サヌラという女が用意した契約書……あれには、"ダンジョンの件について口外しない"という項目が設けられていました。あれはこの街のダンジョンについて、カネガたちが公爵家や帝室にバレないようにするための策であると考えられます。』
ちょっと厳しめなガイドさんのコメントに、再びムッとしたが、大事な話なので耳を傾ける。
『現在まで、街中ですれ違った冒険者たちが、ダンジョンのことについて一切会話していないことを確認しています。宿屋でも冒険者を何人か見かけましたが、ダンジョンでの稼ぎの話を一切していませんでした。』
確かに、そう言われるとそうだ。
ダンジョンはある意味、冒険者のロマンであり、そこには一攫千金の夢が詰まっている。
そして。挑戦した者ならば失敗だろうが成功だろうが、話したくなるのが人の性である。
だが、街はそんな話で溢れることはなく、普段とおりの日常が過ぎているだけ。
『言わないのではなく、言えないのです。それがあの契約書の効力です。そして、クレアの件よりも前にタマルは誰かの闇魔術を解除したことがあり、それがカネガに知られてしまった……。』
だから、攫われてしまった……ということか。
でも、誰の制約を解除したんだろう。
彼女の周りには冒険者なんていないし、こんなスラムを訪れる物好きもいないけど……。
『1人だけいます。冒険者ではないにも関わらず、ダンジョンへ挑戦した者が……』
それを聞いてハッとした。
そうだ……1人だけいる。
そんな無謀な挑戦者をした者が……。
タマルの姉のミケルだ……。
『本来なら、このような悪事はすぐにバレるのが定石です。ですが、いまだにバレていないのは、あの契約書が阻んでいるからに他なりません。しかし、そのスキルを解除する者が現れた……。奴らはそれを知り、まずは聖光術を使えるタマルを殺そうとしている。そう考えれば、攫われた理由が立ち、我々がカネガたちに宝玉を渡さずに済んだ理由にもなります。』
さすがはガイドさんだ。
これまでの情報からそこまで推測してしまうなんて。
だが、喜んでいる暇はない。
タマルが攫われたのだから、ことは急を要するのである。
「クレア……おそらく犯人はカネガたちだよ……!」
「うん……わたしもそう思う。だけど、なんで……」
「たぶん、タマルは聖光術スキルを使えるんだよ。昨日の黒いモヤの話……あれはクレアに掛けられた闇魔術のことで、彼女はそれを無意識に解除しちゃったんだ。」
「な……なるほどぉ!だから、今日私が強気でいても大丈夫だったんだぁ……。」
「そう……そして、そのことがカネガたちにバレてしまったからタマルは攫われた。」
わたしは端的にだが、クレアにことの顛末を伝える。
頭のいいクレアは、すぐにわたしが言いたいことを理解してくれた。
「OK!なら、まずはタマルを探そう。」
立ち上がるクレアに、わたしも頷いた。
そんな私たちを見て、ミケルが涙ながらに声を震わせる。
「タマルを……助けてくれるの……?」
「当たり前でしょ!そして、カネガもぶっ飛ばしてくるよ……!」
笑顔で拳を握るわたしを見て、ミケルは泣きながら御礼を言い続けていた。
目論見がわかったところで、タマルの危機はいまだ去らず。パルトたちはタマルヲ無事救えるのでしょうか!
今回もご愛読いただきまして、ありがとうございました!




