88 終わりだ!牛野郎!
クレアとパルトの共闘!
そして、ミノタウロスとの決着の時!!
わたしよりも一歩早く飛び出したクレア。
彼女はミノタウロスの前まで走ると、地面を力強く踏みつけて大きく跳躍した。
「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
大声を上げ、真紅に燃える剣を大きく振り翳すと、その勢いのままにミノタウロスに向けて強烈な一撃を見舞う。
その一撃を斧で受け止めるミノタウロス。
クレアの一撃によって、奴の足は地面へ沈み、そこから激しく亀裂が走った。
「グォォォォォ!!!」
気合いを入れ直すかのような咆哮を上げ、今度はミノタウロスが左拳を握る。
彼女を撃ち抜くために握り締めた拳。
それがクレアへと放たれるが、わたしを忘れてもらっては困る。
すぐさま【駿影】による連撃を奴の両脚に叩き込むと、そのダメージでミノタウロスが大きくバランスを崩した。
奴の左拳は、まるで操作されたようにクレアの横に逸れていく。
その拳を見送ったクレアは、斧を足場にしてくるりと宙返りを行うと、ミノタウロスの後方へ飛び、体を回転させて背中への一撃を見舞う。
その衝撃で前方へ倒れそうになったミノタウロスは、何とか右足を出して踏ん張り、斧を杖代わりにして転ぶのを防いだ。
わたしとクレアは、奴が大きく体勢を崩した隙を見逃さない。
「パルト!」
「うん!」
目配せをするクレアにわたしは大きく頷くと、全力でスキルを叩き込んでいく。
ミノタウロスの左手に移動していたわたしが、走りながらカマイタチ(烈風刃斬)を放つ。
無数の風の刃が奴を襲う最中、タイミングを合わせたクレアが、奴の後方から足元に潜り、その懐に炎の散弾を撃ち込んだ。
呻き声を上げるミノタウロスだが、反撃の意思は挫かれていない。
両手で私たちのスキルを振り払いながら、何とか体勢を立て直そうと立ち上がる素振りを見せた。
だが、すでに奴の右手に移動していたわたしが、氷術スキルを発動。
「アイスジャベリン(氷蒼槍)!!!」
自分の周りに創り上げた無数の氷の槍。
それを奴へ向けて、一斉に放った。
立ち上がろうとしていたミノタウロスは、再び体勢を崩して完全に四つん這いの状態になる。
そこへクレアの炎術スキルが襲いかかった。
「フレイムファング(炎・牙突二式)!!!」
足元から前方へと移動していたクレアは、勢いよく切り返し、炎を纏う剣の打突をミノタウロスの胸部へと深く撃ち込んだ。
「グ……ガァァァ……!」
わたしのヘイルストーム(乱れ狂う雹)によって、その一部が損壊していた奴の鎧は、クレアの一撃によって完全に砕け散る。
そして、胸部を強く穿つ一撃は、ミノタウロスにかなりのダメージを与え、奴は蹲るように頭を下げた。
だが、クレアの攻撃はそれで終わらない。
地面へ舞い降りると同時に、再び地面を強く蹴ると、ミノタウロスに向けて2度目の打突を放ったのだ。
その剣先は、ミノタウロスの顎を完全に射抜いた。
まるでアッパーカットを打ち込まれたボクサーのように、ミノタウロスは天を仰いでいる。
「パルト!見せ場だねぇ……!」
いったい誰に……?
そう思ったことはクレアには言わないが、ミノタウロスを倒すために、彼女が作り出した最高のシチュエーションであることに違いはない。
すでに剣は納刀済みだ。
自分の魔力には氷属性の因子をたっぷりと練り込んでおり、それを剣へ流し込んでいく。
パキキと凍りつく音が聞こえ、ヒヤリと冷たい空気がわたしの周りに舞った。
そして、全身の身体強化に加え、両脚への重ね掛けはわたしの十八番。
「これで終わりだ……牛野郎……!」
そう呟いた瞬間、わたしは【駿歩】によって超スピードでミノタウロスへと突進する。
天を見上げているミノタウロスは、完全に無防備な状態。
そんな奴の腹部目掛けて駆け抜けると、すれ違いざまに抜刀。
奴の肉を断つ感触が、右手に伝わってきた。
そのまま、ミノタウロスの後方へと滑り込んで納刀する。
刀身の全てが鞘に収まると同時に、ミノタウロスの腹部には大きな氷の華が咲いた。
ゆっくりと花開く氷の華。
その氷華の花びらが全てが開き切ると、大きく爆散して奴の血飛沫と氷の粒子が、辺り一面にキラキラと舞った。
その粒子は、ゆっくりと牛の怪物の残骸全てを飲み込んでいく。
『お疲れ様でした。ミノタウロスの反応は無くなりました。』
ガイドさんの言葉に、わたしは大きくため息をついた。
湧いてくるのは達成感だけではない。
自分がSランクの魔物を倒せたという事実に、少し困惑してしまう。
もちろん、わたしだけの力ではないが……。
「すっごいねぇ!今のスキル!!」
隣まで走ってきて、わたしに笑顔を見せるクレア。
わたしを褒めてくれるが、あそこまでお膳立てしてくれたのは彼女で間違いない。
鎧を全て破壊し、奴を丸裸にしてくれたからこそ、あのスキルで奴を倒せた。
わたしはそれを理解している。
それに、わたしのスキルで一部が損壊していたとはいえ、一撃であの鎧を壊すクレアの破壊力は計り知れないと思う。
わたしでは、あの鎧は破壊できなかった。
それも理解していた。
「クレアのおかげだよ……。」
わたしがそう御礼を告げると、クレアはさらに大きく笑い、謙遜を呟く。
「何言ってんのぉ〜!倒したのはパルトでしょ!」
「でも……わたしじゃ、あの鎧は壊せなかった。」
「そうかなぁ?パルトが先に壊してくれたからじゃない?わたしが壊せたのは……」
何を言っても褒めまくるので、わたしは何を答えていいのかわからなくなってしまう。
でも、ミノタウロスを倒したことは事実である。
Sランクの魔物をわたしたちは倒したのだ。
それだけは間違い。
「クレアと一緒で……本当に良かった。」
その言葉に屈託のない笑顔を浮かべるクレアを見て、わたしも小さく笑顔を浮かべた。
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・
「さてさてぇ……」
クレアは両手を擦り合わせ、目を輝かせて宝箱の前に立っている。
フロアボスを倒した報酬。
ボス部屋の奥に置かれた宝箱を開けて、それが何なのかを確かめようと2人で顔を覗かせた。
「何が入っているのかなぁ。」
「お金とか……?」
「う〜ん……それもいいけど、Sランクに近いボスだったしねぇ。もっとすごいものじゃないかなぁ……。」
「もっと……すごいもの……?」
「そう!伝説の剣……とか、超絶レアな素材とか……!ワクワクするよねぇ!」
目に星を浮かべ、興奮するクレアを見ていたら、わたしもソワソワしてきた。
いったいどんなお宝が入っているのか……。
そう考えたら、珍しく気分が高揚してきた。
「それでは!開けてみましょう!!」
「ミケルたちの役に立つと……いいな。」
「だねぇ!!」
笑いながら、クレアは宝箱の蓋をゆっくり開いていった。
開き切った宝箱を、クレアと2人でゆっくりと覗き込む。
その視線の先にあったもの……。
それは、手のひら大の赤い宝玉だった。
ミノタウロスを倒し、手に入れたのは赤い宝玉。
これはいったい何なんでしょうか。
今回もご愛読いただきまして、ありがとうございました!




