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69 幕間 〜姉弟子と妹弟子〜

第二章、幕間です!

いつもご愛読いただき、ありがとうございます!


少しずつPVも伸びているので、頑張ります!!

ツヴェルクとマーシャから装備をもらった翌日。


わたしはギルドを訪れた。



「あら……?パルトさん、その装備は……。」



ギルドの受付に立つと、わたしを見つけたリプリーが駆け寄ってきた。



「うん……ギルマスとツヴェルクさんたちのおかげ……」



リプリーもガルシュの行動は知っていたようだ。


嬉しそうに頷くと、わたしの服装を褒めまくっている。


それが少しくすぐったくなり、わたしは本題を切り出すことにした。



「ギ……ギルマスは……いますか?話があって……」


「ギルマスですか?いますよ。奥で資料と睨めっこしてます。」



リプリーはそう笑うと、「息抜きしてもらいましょうか。」と呟いて奥へと入って行った。


少しだけ待っていると、受付の奥からリプリーとともに大きな巨体が姿を現した。



「よう。どうやら、ツヴェルクの旦那から無事に受け取れたようだな。」



ガルシュは嬉しそうに笑っているが、目の下には隈があり、少し眠たそうにも見える。



「こんな顔ですまねぇな。伯爵への報告やワイバーンの素材の販路の整理……その他もろもろ忙しくてな。」



ギルドの責任者ともなれば、わたしの知り得ないことややらなきゃいけないことがたくさんあるんだろう。


わたしには絶対にできない……。


なんて考えていると、わたしの様子にガルシュは気づき、頭を掻きながら苦笑いを浮かべた。




「……で、話っちゃなんだ?奥に入るか?」



気を遣ってガルシュが執務室を案内してくれるが、わたしはそれを丁寧に断った。



「大丈夫……すぐに済むから。」


「そうか……何かあったのか?」



わたしの雰囲気を察したのか、ガルシュが少し柔らかい口調になる。


わたしはその言葉に後ろ髪を引かれた。


でも、もう決めたことだから、ちゃんと言わないといけない。


そう自分に言い聞かせ、ゆっくりと口を開く。



「そろそろ……この街を出ることにする……。」



その言葉にリプリーは驚き、ガルシュは……寂しそうな表情を浮かべた。



「わたしには目的がある。この街には、冒険者になる為に寄っただけ。だから、そろそろ次に向かわないと……。」



ガルシュもリプリーも、わたしの言葉を静かに、そして見守るように聞いている。


そんな2人の様子に気づいたら、ちゃんと話してもいいかなと思った。


自然と言葉が溢れていく。



「わたしはある魔人族を追ってる……何か情報があるなら、教えて欲しい……。」


「魔人族……?」



ガルシュが眉を顰めた。



「そう……わたしはそいつに、大切な人たちを殺された……」


「なっ……!」



今度はリプリーが声を上げた。


その表情には嫌悪感が浮かんでおり、リプリーが怒ってくれていることがわかる。


わたしは、2人にこれまでの経緯を……わたしが知る限りのことを伝えていった。





「ミッドウェル……聞いたことのない名だな。」


「そうですね……。容姿は魔人族の特徴に合うので間違いはないですが……それだけでは特定は難しそうですね。」



いつのまにか2人は、あーでもないこーでもないとミッドウェルに関する考察を広げている。


さすがは冒険者ギルド。


彼らのところに集まる情報の質と量は、伊達ではないということだ。


わたしはそんな2人を見ていて、嬉しかった。


嬉しかったが、これはわたしの問題である。


わたしが解決すべきことなのだ。



「2人とも……ありがとう。でも、大丈夫……これから強くなって必ず見つけ出すつもりだから。」



わたしがそう告げると、ガルシュたちは一度顔を見合わせると、小さくため息をついた。



「ひとつだけ、お伝えしてもいいですか?」



リプリーが真剣な顔でわたしを見たので、小さく頷いた。



「偏見だけは持たないでくださいね。魔人族の中にも、ちゃんと良い人はいます。帝国内でも領主を務める人だっていますし……」


「だな。神話の中では、確かに魔人族は世界の敵とされているし、過去には……相当昔の話だが、魔王種が生まれたこともある。そういった事実によって、魔人族も迫害を受けてきたからな。彼らなりに苦しんでいることは理解しないといかん。」



それは……理解している。


わたしは無言で頷いた。


悪いのはミッドウェルであって、魔人族ではない。


わたしだって、それは……ちゃんと理解している。



モヤモヤとした感情が、胸の底から湧き上がる。


わたしはミッドウェル以外の魔人族に対して、普通に接することができるだろうか。


悪いのはミッドウェル……。


でも、奴を生み出した魔人族という種族を……わたしは許せるのだろうか……。





「それで……これからどこを目指すんだ?」



ガルシュが突然、話題を変えた。


たぶん、わたしに気を遣ってのことだろうと思う。


ミッドウェルの話をしている時のわたしは、相当酷い顔をしていただろうから。


わたしは一度深呼吸をして気持ちを切り替えると、ガルシュの問いに答える。




「ゼルケイの街に行く……」



正直、行き先は決めていなかった。


突然消えたアナスタシアのこともあって、わたし自身どこへ向かうべきなのか、わからなくなっていたからだ。


でも、ツヴェルクたちと話した後、色々考えて悩むのはやめた。


悩んでいてもアナスタシアに会えるわけでも、ミッドウェルが見つかるわけでもない。



「ゼルケイか……。しかし、またなんで……。」


「特に理由はない。最終的にグランゼリア王国方面を目指すつもりだから、ルート的に次はゼルケイ……それだけ。」



それを聞いたガルシュは、なるほどなという表情を浮かべた。



「確かに王国へ向かうなら、そのルートだな。」


「そうですね。ゼルケイなら、ここから歩きでも3日あれば着きますから良いと思いますよ。」



リプリーもわたしの計画に賛同してくれたので、ちょっと安心した。


そうして、わたしは明日出発することを伝え、ギルドを後にした。



◆



翌朝、宿を出たわたしは、街の西側の門を目指していた。


ゼルケイの街へ行くには、ここトゥウランの街から西側へと進む。


とはいえ、道中は険しい道などなく、街道に沿って進めば3日ほどでゼルケイに着く道のりだ。


途中、屋台に寄ってお昼ご飯を買った。


この串焼きも食べ納めかと思うと、少し寂しさを感じる。


アナスタシアと食べた思い出がふと蘇ったが、わたしはそれを振り払い、西門を目指した。




門の前に着くと、なぜか見知った顔ぶれがあった。


ギルドマスターのガルシュと受付嬢のリプリーを初め、Bランク冒険者クリスとその仲間たち、そして、ツヴェルクとマーシャまでいるではないか。



「みんな……どうして……」



驚いた顔をわたしが浮かべていると、クリスが笑う。



「そりゃあ、この街を守った英雄の門出だ。見送らないわけがないだろ!」



クリスの言葉に、モルドリー、マシェット、ロビンの3人もうんうんと頷いている。


少し困惑してガルシュとリプリーへ視線を向けたが、2人も当然だという顔で笑っている。


嬉しさと恥ずかしさが込み上げてくる。


だが、それは表に出さないように我慢した。


涙で別れを惜しむつもりはなかったからだ。


だが、ツヴェルクとマーシェが近づいてきて、わたしに古びた胸当てを手渡した。



「……これは?」


「それはな……ダビドの奴が使ってたもんだ。」



ツヴェルクは、友人に思いを馳せるようにそう告げた。


それを聞いて、わたしは胸に込み上げるものを感じ、ついつい俯いてしまう。



師匠の形見……。



愛用していたことがわかるほど、丁寧にメンテナンスされていて、まるで古さを感じさせない。



「いいんですか……もらっても……」


「もちろんだ?お前さんが使うのが、そいつにとってもいいだろう。」



ツヴェルクの言葉にわたしは頷くと、その胸当てを装備する。


マーシェが似合っていると微笑んでくれた。



「そろそろ……行く……。」



そう呟き、わたしは涙を拭って皆に背を向けた。


そして、ゆっくりと歩き出した。



背中にみんなの視線を感じている。


でも、振り返らない。


振り返ったら、余計に悲しくなるからだ。


もしも……もしも、全部終わらせることができたなら、この街には帰ってこよう。


師匠の友人がいて、わたしが初めて過ごしたこの街に。



わたしはそう決意して、歩く足を早めた。




西門を抜けると、目の前に草原と街道が広がっていた。


その先に、長く連なる山々。


その雄大な景色に目を奪われながら、先ほど別れた仲間たちに思いを馳せていると、突然後ろから声をかけられて驚いた。



「パルトちゃん……いや、妹弟子よ!」


「え……!?」



意味不明な言葉に戸惑いつつ、振り向くとそこにはAランク冒険者のクレア=デストロイが腕を組み、笑顔で立っていた。



「クレア……さん?街の外まで……どうしたんですか?」



そう尋ねると、クレアはよくぞ聞いてくれましたとばかりにニヤリと笑う。



「わたしも一緒に行こうと思って!」


「は……?」



さすがのわたしも、クレアが言っている意味がわからずに思わず聞き直してしまった。


だが、クレアはわたしの反応など気にしていないようだ。



「ゼルケイに行くんだよね!?楽しみだね!」



そうやって悪戯に笑う。


美人の悪戯な笑みは、かなりの破壊力がある。


この人はそれを自覚すべきだ……。


その笑みに怯みながら、わたしは内心で愚痴を溢す。



……と、そんなこと、今はどうでもいい。


わたしについて来るなんて、クレアはいったい何を考えているのだろう。


彼女の意図が全く読めないわたしは、ため息しか出てこない。



「嫌ですよ……。なんでクレアさんがわたしについて来るんですか?」


「ツヴェルクさんに、あなたの師匠のことを聞いたんだ……。」



聞き返したわたしに対し、クレアは突然真面目な顔を浮かべた。



「師匠のことを……?」


「そう。ダビド……それがあなたの師匠の名前なんだね。」


「……そ……そうですけど……」


「この前、わたしにも師匠がいるって言ったの……覚えてる?」



わたしは、彼女にも教わった師がいると聞かされたことを思い出した。


短い間だったが、魔力操作の基礎を教えてくれたと言っていた。


だが、今の状況とその師の話がどう関係するのだろうか。



わたしが疑問を浮かべていると、クレアは静かにその答えを告げた。



「わたしの師の名前もダビド……わたしもあなたと同じ人に魔力の基礎を学んだんだよ。」



信じられなかったが、ツヴェルクに聞いた話だから間違いないとクレアは言う。


そして、彼女はこうも言った。



「わたしも一緒に仇討ちするよ。師匠の仇……ぶっ殺す……!!」



わたしは色んな意味で、幸先が不安になっていた。


だが、これがわたしの新たな旅の門出。


ミッドウェルは……必ず殺してやる。

トゥウランの街でのお話はこれで終わりです。


しかし、Aランク冒険者のクレアがついて来る?

そんなことあるんですかね笑


第三章は、1/26から始動です!!

ぜひ引き続き、ご愛読ください!

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