27 テンプレ冒険者活劇
冒険者ギルドを目指したパルト。
早く稼いでお腹を満たさないと!笑
少し歩くと、あのドワーフの言っていたとおり、すぐに冒険者ギルドに着いた。
煉瓦造りで両側にある尖塔が特徴的なその建物は、荘厳で威圧感を感じさせる。
長い歴史を思わせる装いは、見ていて少しだけ感心させられた。
それと、メインの玄関の上にあるのは蛇と羽を組み合わせたシンボル。
"蛇"は知恵と再生、そして幸運の象徴として、"羽"は自由と飛躍の意味が込められている。
昔、父からそう教えられたことを思い出してしまい、連想的に家族の顔が浮かんでしまった。
本当なら、弟も妹も……
黒い気持ちが胸に湧く。
でも、ここで怒りを曝け出したところで、何も変わらないことはわかっている。
わたしは暗くなった気持ちをなんとか切り替えると、気を取り直してギルドのドアを開いた。
中に入ると、思っていた以上に広々とした空間が広がっていて、それに少し驚いた。
正面に見えるのが受付カウンターだろう。
2人の受付嬢が訪れる冒険者に対して、案内を行っている様子が伺える。
左手には大きな掲示板。
冒険者たちが数人ほど前に立っていて、何やら悩んでいる様子を見るからに、あそこにはギルドに集まってくる依頼書などが貼られているのだと推測できた。
そして、右手にはフリースペースが広がっている。
談笑したり、食事をしたり、冒険者たちが各々の時間を過ごせる場所のようだ。
けっこう綺麗でしっかりしてるんだ……。
もう少し汚くて荒れている感じを予想していたが、良い意味でのギャップにホッとした。
ただ、一点だけを除いてだが……。
フリースペースの一角にあるテーブル席。
そこに屯している3人の冒険者たち。
そいつらがこっちを見て、ニヤニヤと笑っているのだ。
品定めをしているようなじっとりとした視線が、気持ち悪くて癇に障る。
でも、ここで問題は起こせない。
殴り飛ばしたい衝動を抑え、なんとか踏み止まる。
わたしはこの街に不法侵入した身だ。
まずは身分証となるものを手に入れなければならない。
でなきゃ、騒ぎを起こしてお縄に付くのは、たぶんわたしの方になる。
わたしはその気色の悪い視線を無視して、受付へと向かった。
「こんにちは!今日はどのようなご用件でしょうか。」
優しい笑みを浮かべる受付嬢の女性を見て、小さな安心感に包まれた。
おっとりとした雰囲気で、話しかけやすそうな彼女を選んだのは、無意識だったのかもしれない。
誰しも初めての時は不安なもの……。
安心感を求めてしまうのは、仕方がないのかも……。
そんな考えが浮かんだが、同時にそんなことを考えてしまう自分の弱さに嫌気が差した。
「え……と、大丈夫?」
「あ……ご、ごめんなさい。」
何も言わないわたしに困惑する受付嬢。
それに対して、口から出たのはお詫びの言葉。
こういう時に謝ってしまうのも、自分の弱さだと気づかされるが、黙り込むわけにもいかない。
「あの……冒険者登録をしたくて……」
「あっ!そういうことですね!初めてのことって緊張しますもんね!」
あのドワーフに続いて、ここでも彼女に見透かされている……。
そう思うと、わたしは少し恥ずかしくなった。
「それなら、いくつか質問を……。まず武術などの経験について教えてください!」
「……け……剣を扱えます。」
「なるほど……剣ですね。長剣や短剣など、得意なものはありますか?」
その質問に対し、"刀"と答えるべきかどうか少し悩んだが、ふとミッドウェルの言葉が頭に浮かんだ。
あいつは"刀"が珍しいと言っていた。
なら、ここでそれを言えば目立ってしまうかも……。
そんな考えに辿り着き、わたしは「片手剣です。」とだけ答えた。
幸い、剣は丈の長い外套の中に隠れているから、バレはしないだろう。
「片手剣ですね。……あと、スキルはどの程度扱えますか?」
「水術がメインで……風術が少し……」
「ふむふむ。水術と風術……っと。」
彼女は、わたしが答えた内容をメモに書き込んでいるようだ。
それに何の意味があるのかはよくわからないが、おそらくは受け付けで必要な作業なのだと1人で納得する。
「最後に、お名前を伺ってもいいですか?」
「え……と……パルト……です。」
「パルトさんですね!ありがとうございます。」
受付嬢は再びニコリと笑い、「少々お待ちくださいね。」と言い残して裏へと駆けて行った。
彼女の背中を見送った後、手続きが順調に進んだことに胸を撫で下ろし、これからのことについて思案する。
冒険者登録ができたら、何でもいいからまずは依頼を受けてお金を手に入れよう……。
そして、美味しいものをたらふく食べよう……。
そんなことを考えつつ、左手の掲示板を眺めていると、唐突な嫌悪感が背中を襲った。
「よう。嬢ちゃん。」
予想していたとおり、後ろから声をかけられた。
その薄汚い声に耳を塞ぎたくなるが、無視すると余計に面倒くさそうだ。
仕方なく渋々と振り返ってみれば、嫌悪感の正体がそこにいた。
先ほどわたしを見て笑っていた3人衆だ。
「お前……新顔だよな。」
真ん中のハゲた大柄な男が笑った。
それに合わせるように後ろにいる2人も笑う。
「……だったら?」
大柄なハゲがさらに笑う。
「礼儀っちゅうもんがあるだろ?新入りなりのな。」
その言葉に、ハゲの後ろにいる2人もケタケタと笑った。
だが、わたしには彼が言うことの意味がよくわからなかった。
新入りなりの礼儀とは?
もしかして、挨拶が足りてなかった……とか?
それとも、さっき睨み返したのが良くなかった?
疑問符とともに悩んでいると、周りの冒険者たちの小さな声をわたしの耳が捉えた。
「おい……またゴズルたちがやってるぜ。」
「凝りねぇよなぁ。新人狩りをして何が楽しいんだか……」
「まぁ、あいつは自称新人教育者だからな……」
「……あの嬢ちゃんも可哀想に。」
呆れる者、楽しみができたと喜ぶ者、我関せずを貫く者。
そんな彼らの様子を見て、わたしはこの状況をやっと理解する。
「あ……わたし一文無しだから。」
「あぁ……?」
「だから、お金もそうだし、金目になる物も持ってない。」
ポケットの中身を引っ張り出して、何もないとアピールする。
だが、ハゲ男は逆に怒りを露わにした。
「てめぇ……舐めてんのか?」
さっきまでの笑みはなく、彼は眉間に皺を寄せてわたしを睨んでいる。
でも、その理由がわたしにはわからない。
初めてのギルドを訪れた新人に、難癖つけて金品を巻き上げる。
そういうことではなかったのだろうか……。
なので、何もないと正直に伝えて帰ってもらおうと思ったんだけど……。
何がいけなかったんだろう……。
そんな純粋な疑問が浮かぶ。
と同時に、苛立ちも湧いてきた。
ていうか、さっきは見逃してやったのに……。
本当なら、ボコボコにしてやっても良かったんだ……。
それなのに……。
声をかけてきたのはそっちなんだから、用があるならわかりやすく伝えろよ……。
「……なんだとぉ?」
男がさらに怒りを露わにした。
それを見て、わたしは心の声が漏れていたことに気づいて反省するが、時すでに遅し。
「お前には教育が必要だな。」
「そうだぜ!兄貴!こいつ、俺らのこと舐めてやがる!」
「冒険者とは何かを教えてやりましょう!」
ハゲ男は実力を行使することを選んだらしい。
拳をパキポキと鳴らして笑っている。
そんなハゲ男の言葉を聞いて、後ろにいる2人も絶妙なタイミングで相槌を打つ。
まさに阿吽の呼吸……。
いつもこんなことをしてるんだろうな……。
そんなことを思いつつも、わたしの苛立ちもすでにピークに達していた。
静かに拳を握り締め、どうやってぶち込んでやろうかとタイミングを探る。
まずはハゲ男の顎を打つ……。
その後、右の男に回し蹴り……。
左のやつは……。
そんな物騒なことを、今まさに実行しようとしたその時だった。
「あなたたち!何をやってるの!」
突然のことに驚いて、声の方へと顔を向ける。
3人衆も何事かと同じ方を見る。
4つの視線の先で、金髪のツインテールを携えた少女が、腕を組んでこちらを睨んでいた。
銀色の胸当てを付け、腰にはロングソードを佩き、背には長い槍を背負うその少女は、ゴロツキ冒険者たちに鋭い視線を向けている。
その2つの瞳は、青と緑のオッドアイでとても特徴的だった。
「大の大人が寄ってたかって女の子を虐めて、恥ずかしくないの!?」
ハゲ男を指差しながらズカズカと歩み寄る少女に対し、ハゲ男も負けてはいない。
「なんだぁ?てめぇは!部外者は引っ込んでやがれ!」
なんともテンプレな返しだが、ツッコむのはやめておく。
ここでわたしが口を挟むと、何となく収集がつかなくなりそうだと思ったからだ。
「あなた。大丈夫?でも、もう安心していいわ!」
「ん……。」
わたしを庇う素振りを見せ、少女は男とわたしの間に割って入る。
「私が来たからには、絶対にこいつらの好きにはさせないから!」
「いい度胸だなぁ!女のくせに生意気な奴め!」
「女とか男とか関係ない!あなたたちみたいな奴らは、私が叩きのめしてあげるから覚悟しなさい!」
少女がハゲ男を指差してそう言い放つ。
ハゲ男はそんな少女の態度に、さらに顔を赤くした。
だが、2人が顔を近づけて睨み合っているところで、またしても聞き慣れない声が後ろから聞こえてきた。
「威勢がいいようで何よりだな。てめぇら。」
その瞬間、少女の背筋がピンと伸びた気がした。
そんな少女の様子を見て、声の主の正体が気になってしまったわたしは咄嗟に後ろを振り返っていた。
その視線の先には、巨人を思わせるほどの大男が先ほどわたしの対応をしてくれた受付嬢とともに立っていたのだった。
テンプレな絡みの数々でした。
そして、最後に出てきたのは、、、!
早く冒険者登録して、ご飯にありつきたい、、、トホホ




