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114 サヌラ

今回はサヌラの回想です。

彼女は何のために戦っていたのか。


それを少しだけ記します。

サヌラの視界は白く染まっていた。


白く輝いた世界。


そこに舞う白い氷の結晶。


敵と戦っていたにも関わらず、いつの間にか幻想的に舞う雪の結晶に包まれながら、サヌラは爆散する自分の体を見ていた。


見ているうちに、いつの間にか思い出したこと。


それを静かに思い返していた。





彼女は帝国内の辺境の村で生まれた。


その人生は平凡なものではなく、幼い頃に両親2人を亡くした。


原因は流行病だった。


晴れて村のお荷物となったサヌラは、奴隷として売られることになる。


村は裕福でなく、身寄りがなく働けないサヌラを養っておけるほどの余裕がなかったのだ。


奴隷商に売られ、誰にも買われることなく、サヌラは街や村を点々とする日々を送った。


奴隷商にこき使われ、罵詈雑言を浴びせられた。


だが、商品だからという理由で手だけは出されなかった。




そんな折、彼女はある貴族に買われた。


その貴族は優しく親切に見えたので、サヌラはこれからの人生が明るくなることを期待して、幼いながらも一生懸命その貴族に尽くすことを決心した。


だが、待っていたのは、そんな期待とは程遠い絶望の日々。


貴族は謂わゆる幼女趣味の持ち主だった。




貴族は手始めに、成長を止める薬をサヌラへ強要した。


その薬は、子供の身体的成長を無理やりに抑えつけるまさに毒。


そよ貴族は子供の……特に幼女の成長を「自分自身への裏切り」と見なし、無理やり「子供」に留めておくことで、自身の性癖を満たしていたのである。



「これを飲めば、ずっと妖精のように可愛くいられる。」



そうやって嘘をつき、成長を阻害する毒性の強い薬を定期的にサヌラに服用させ、加えて、極端な食事制限を強いることで、さらに成長を抑制する。


サヌラが体調を崩してガリガリに痩せ細っても、「幼いラインが保たれている」ことに満足し、「君はなんて僕思いなんだ」と称賛するほど、貴族は狂っていた。


毒によるものか、はたまた成長を抑制されている副作用なのか。


サヌラがそんな苦痛で泣き叫んでも、彼はそれを「無垢な産声」として楽しみ、無理やりにサヌラを笑わせた。



「大人の女は嘘をつくが、子供の涙は真実しか語らない。だから愛おしい。」



それが貴族の口癖だった。





だが、15歳になった年。


ある人物との出会いが、サヌラの人生を変えた。


その時のサヌラは、年齢は15歳でも見た目は8歳程度で、誰も彼女が成人を間近に控えているとは思わなかった。


だが、その人物はサヌラを見て、すぐにその異変に気がついた。



「君は……興味深いな。」



男の言葉はサヌラに向けられていたが、サヌラに対してではなかった。


だが、儚げで、それでいて好奇心に満ちた瞳。


温かくて慈愛に満ちたそれを見て、サヌラは内心で感嘆した。


サヌラにとって、彼は救世主と言っても過言ではなかった。



彼は貴族の目を盗み、サヌラを地獄から解放する。


何が起きたのかは今でもわからないが、彼から受け取った種子のようなものを……それをただ飲んだだけで、抑制されていた体は成長という自由を得た。



「これを飲めば、君は君であり続けられる……。」



よく考えれば、言っていることは貴族のそれと変わらなかったのかもしれない。


だが、当時のサヌラには、それを判断できる冷静さなど皆無だった。


種を飲むと、体に少しの変化を感じた。


ドクンッと波打つ心臓の鼓動と、全身に血が巡る感覚。


体に起きた変化はそれだけだったし、長年摂取し続けた毒が、それだけで体から消えたかどうかはわからない。



「おぉ……やはり適応した。」



その言葉が何を意味していたのかも知らない。



だが、ひとつ言えるのは、彼によってサヌラは幸せを得たということだった。



もちろん、それを知った貴族は激怒した。


少女ではなくなったサヌラを見て、携えていた剣を抜き、彼女に向けて振り上げるほどに。


しかし、その瞬間に飛んだのは、サヌラの首ではなく貴族の首。


それを実行したのは、彼が持つ紫光の剣。


目の前で噴き出す鮮血に酔いしれ、その光景にサヌラはただ笑っていた。





「私と来るかい?」



その言葉は、サヌラの心をさらに幸せの先へと運ぶ。


彼の手を取り、サヌラはこくりと頷いた。




あの時から自分の人生が大きく変化した。


そのことを、サヌラは今でも幸せに思っている。


彼の言葉は全てが正しく、全てが完全で、全てが愛おしい。


だからこそ、彼の言葉には従うし、彼のために必死に頑張ってきた。


だが、それも失敗してしまった。



(あぁ……ボス………………私はなんと愚かなんでしょうか……)



彼の願いを叶えられなかった……。


彼の力になれなかった……。


そんな自分が情けない……。



サヌラの視界は、真っ白だ。


そこに浮かんだのは、愛おしいボスの顔の影。



「ボス……お許しを……弱い私を……どうか…………」



サヌラの視界には白く美しい氷の結晶が舞う。


彼女の全ての想いを、優しく包み込むように。

彼女の辛い過去。

それを救い、サヌラをここまで心酔させた男とははいったい…



今回もご愛読いただきまして、ありがとうございました!

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