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113 ダンジョン最下層での決着

ガザルを助けたパルトは、サヌラとの最後の決戦へ。

しかし、パルトの状態は何なんでしょうか。

クレアは静かにパルトを見守っていた。


間一髪のところでガザルを救った彼女は、その身に宿す魔力を解放し、サヌラの攻撃を難なく撃ち返していく。


これまで劣勢を跳ね除け、パルトはこの戦いに終止符を打とうとしていた。



「……成長スピードがなんで速いんだろう。」



クレアは本音をポロリと溢す。


パルトのあの未知の力のことはよくわからない。


それが彼女にどのように作用しているのかも。


だが、身体的な能力は、たとえ大きな力を得たとしても、比例して向上するものではないと、クレアは知っていた。


大き過ぎる力を得れば、体は追いついてこないはずだ。


下手をすれば、自滅することだってあるだろう。


魔力量が多いとしても、レアで強力なスキルを有していたとしても、身体的な能力や技能というものは、長い年月をかけて培っていくもの。


クレア自身が、ダビドからの教えの中でそれをよく理解していた。


だからこそ、クレアは感じていた。


自分以上の成長速度を有しているパルトへの嫉妬を。


姉弟子として、簡単には負けられないという覚悟を再認識する。



視線の先で、咆哮をあげたパルトが銀色のオーラを身に纏った。


それを見て、クレアは呆れたように笑う。



「やっぱりついてきて良かったよ……。」



クレアはそう笑うと、「頑張れ、妹弟子。」と小さく呟いた。





サヌラが大きな咆哮をわたしに向けた。


それに呼応するように、わたしも魔力をさらに解放する。



あれ……なんだか……



疑問に思ったのは、自分の魔力に対して。


体の中から魔力が止めどなく溢れてくる感覚に、違和感を感じたのだ。



『現在、魔力の総量が大幅に向上しています。』



それはどういう……?



『原理、理由は現時点では分かりかますが、魔力が増えたことでできることが増えた、と理解してください。』



なるほど……。



わたしはガイドさんの言葉にとりあえず納得する。


今はそれだけわかればいいし、自分自身も何となくそうなんだろうと理解していたから、確信が持てた。



『【神気(黒)】の力は弱まっています。今なら完全に押さえ込むことが可能です。』



わたしはそれを了承する。


あのよくわからない力は使いたくない。


自分の心が蝕まれていく感覚なんて、もう経験したくもないし。


あれは使っちゃダメな力……今回はそれを改めてよく思い知らされた。


だから、あれは使わない!!



「ガイドさん……!いくよ!!」


『はい!!』



【神気(黒)】……この力のことは今はガイドさんに任せて、わたしは目の前のサヌラに集中する。


すでに人としての表情はなく、もはや魔物と化した彼女に引導を渡す。


それが今のわたしの役割なのだ。



「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



体の中から溢れ出る魔力を全力で解放する。


黒い力が抑えられ、代わりにダビドから貰った光の玉が、胸の奥で輝きを増した……ような気がした。


同時に、心臓の高鳴りと血流の激動が全身の体温を一気に上げるが、不思議と熱さは感じない。


加えて、激しく体内を巡る魔力が、身体中に散りばめられた属性因子を余す所なく拾い上げていき、それらが心臓に達したその瞬間だった。


胸の中の光玉が黒い力を飲み込んだ感覚。


そして、わたしの体は銀色のオーラに包まれた。



『これは……銀の神気……!』



ガイドさんは何かに驚いているようだが、わたし自身それどころではなかった。


これまでとは違い、全身で暴れ狂う魔力の奔流を制御するのに必死だったのだ。


だが、その割に意識はちゃんとサヌラに向いているみたいだ。


わたしの変化に驚いている彼女の様子を、冷静に俯瞰している自分がいることに気づいていた。


だが、それは良いとしても、この魔力は……重い!!



『っ!……すみません。私としたことが……制御の一部を預かります。あなたは戦いに集中を。』



ガイドさんがわたしの状況に気づき、そう告げた。


その瞬間、わたしの中の魔力が落ち着きを取り戻し、全身の力が抜けて体が軽くなる。


どうやら、ガイドさんが魔力制御を担ってくれたらしい。


しかし、一息つく間もなく、驚きから我に返ったサヌラがわたしに飛びかかって来た。



「殺すゥゥゥゥゥ!!しねぇェェェ!!!」



背中から生えた刃をうねうねと動かしながら、目を見開いて向かってくるサヌラ。


だが、わたしの目に映るサヌラの動きは、完全なるスローモーション。


ゆっくりと近づいてくるサヌラが、握っている刃と背中から生やした刃のいくつかをわたしに向けていく様子が把握できた。



手に握られた刃はフェイントだ。


受けさせて、背中の刃で連撃を打ち込んで来るつもりだ。


打ち込む順番は右、左、右、右、最後に左か。



ゆっくりと動くサヌラの体。


その体の細かい動きを捉えたわたしの目は、彼女がどのような攻撃を仕掛けてくるのか、すぐに理解した。



ギギギギィン!!



推測どおりにサヌラから飛んできた刃を、丁寧に捌く。


その拍子に彼女の体勢は大きく崩れた。


これまで以上に洗練されたわたしの動きを体感し、驚愕が滲む彼女の表情をチラリと流す。



そして、そのまま一度剣を鞘に納めて、いつの間にか静かに体を巡る魔力を解放させた。



氷塵華斬フロストダストスラッシュ。」



静かに放たれた言葉と同時に、高速の抜刀。


氷を纏うそれが、サヌラの体をすり抜けると、辺りには氷の結晶たちが舞う。



「が……がギ…………」



自分の体に纏わりつく氷に焦るサヌラだが、なす術なく氷に包み込また。


チンッ。


それを見て、わたしが剣を鞘に納める音を鳴らす。


その拍子に凍りついていたサヌラの体は、爆散した。

サヌラを一撃で倒してしまったパルト。

もはやクレアより強いんじゃないかと思うくらいです笑


今回もご愛読いただきまして、ありがとうございました!

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