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103 ダンジョン最下層・激戦⑦

最下層の激戦!

竜種の不死に驚くパルト。

そんなパルトを助けるために駆けるクレアとガザル。


果たして、戦いの行方やいかに!

真っ赤な双眸がわたしを睨んでいた。


胸を突き刺したはずなのに……


心臓を突き刺したはずなのに……


その真っ赤な瞳は、影を浮かべることなくわたしを見据えていた。



なんで……



それが1番始めに頭に浮かんだ言葉だった。


そんなわたしに向けて竜種が口を大きく開くと、鋭い牙を携えた口の中が見える。


それはわたしを食い殺すわけではなく、黒い粒子を集めるために開かれたもの。


周りの魔力を掻き集めるように収束していく漆黒の粒子は、ゆっくりとその大きさを育み、人の頭ほどの大きさまで膨らんでいった。



「そのまま、葬ってやりなさい!!」



サヌラの声が聞こえた。


だが、わたしの体には力が入らなかった。


このままでは死ぬとわかっているのに……。


でも、体が動かない。


目の前で膨らむ高エネルギーの塊を見てなお、わたしは竜種の胸に刺した剣を抜けずにいた。




黒い竜種が目を見開いた。


それはまるで、黒竜砲を放つ合図のように思えた……。


わたしは、唖然としたまま悟った。


自分の運命を。



死ぬ……ここで……終わるんだ……。



頭をよぎるのは、殺された師匠の優しい笑顔。


そして、家族の笑顔。



仇を……取れなかった…………。



そんな思いが頭の中を駆け巡った。




そして……竜種の砲撃が……。






しかし、次の瞬間、わたしの視界が捉えたのは竜種からの砲撃ではなく、真っ赤に燃える炎の刃。


見たことのある炎の斬撃が横から現れ、竜種の頭部を捉えて大きな衝撃を生む。


頭部に攻撃を受けた竜種は大きな呻き声を上げ、その反動で頭を揺らした。


そのおかげで、すんでのところで竜種が放った黒竜砲がわたしの横を掠め、地面を抉って消えた。



今の……は……



疑問の中に生まれたのは小さな歓喜。


そして、その感情が正しかったことがすぐに証明された。



「パルト!!」



目の前に立ったのは、見慣れたいつもの背中。


頼もしくて力強いクレアの背中だった。



「ク……クレア……」


「よく頑張ったね!!もう大丈夫だよ!!」



堂々とした気迫のこもった声に心が震えた。


わたしの中の胸の奥にあるドス黒い感情が、一気に消えていく感覚。


それに安堵しつつ、ゆっくり立ち上がる。



「大丈夫……」


「よし……!」



チラリとこちらを見たクレアが、安堵の表情を浮かべた。


それにわたしも笑顔で返すと、彼女はすぐに竜種を睨んだ。



「……ったく!早ぇよ!!」



相当全力で走ってきたんだろう。


肩で息をしながら、ガザルが愚痴を溢して到着した。


それをチラリと見て、再び竜種を見る。


そして、3人で竜種に剣を構えた。





反対に、サヌラは辟易していた。


せっかく幸運が舞い込んできたのに、再びそれを手放さなくてはならない感覚。


ダンジョンの中に仕掛けた魔方陣によりパルトを分断し、殺して宝玉を得るはずだった。


なのに、あのウサギの娘は未知の力を解放して抗い、その結果、最下層への"紅蓮"の到達を許してしまった。


こうなると、この竜種……もとは最下層のフロアボスであるが、これだけでは勝てないかもしれない。


そんな不安がサヌラの胸を渦巻いた。


そして、その不安はサヌラを次の行動へと誘うことになる。



「これはできるだけ使いたくなかったけど……」



懐から取り出した小さな小袋の中から、黒い球体をひとつ摘み出す。


少し大きめの飴玉程度の大きさで、その中には黒い影がゆっくりと蠢いている様子が窺えた。


サヌラはそれを少しだけ眺めると、ゆっくりと自分の口へと運ぶ。


そして、そのままごくりと飲み込んだ。



「ボス……使わせてもらいますね……。」



天を仰いだまま小さく呟くその顔には、愉悦が浮かんでいる。


そして、その直後、彼女の体から黒いモヤが噴き出した。


竜種が纏うそれと同じモヤが……いや、それよりも何よりも、パルトが解放した黒いオーラのようなそれが、彼女を激しく包み込む。



「開……放…………感…………ボスゥ!!」



体を捩らせながら、自分を抱きしめるサヌラ。


見上げるその瞳が黒く染まり、瞳孔が紅く光る。



「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



まるでオーガズムにでも達したかのような叫びが、最下層内に響き渡り、その声はパルトたちにも聞こえていた。





「何の声……!?」



クレアが竜種を睨みながら首を傾げた。


わたしにも聞こえたその声には、耳を劈くような不快感を感じた。


そして、それが誰の声なのかは、わたしにはわかっていた。



「サヌラだ……。」


「サヌラ……あの女もここいるの?」


「うん…………竜種の後ろにいたはず……。」



わたしの言葉を聞いて、クレアが眉間に皺を寄せた。



「今の声は……何なんだ。何だか気色わりぃな。」



ガザルも辺りを見回して、怪訝な表情を浮かべている。



「あの女がこいつを操ってる……。」


「サヌラが……?竜種を……?」


「そう……それに、こいつは心臓を刺しても死なない。」


「なんだそりゃ……!反則じゃねぇか……」



わたしは2人にこれまでの状況を、簡単にだが伝えていった。



「状況はわかった……。今の声が何なのかは気になるけど、まずは目の前のこいつを倒すことが先決だね。」



クレアの言葉に、わたしとガザルは無言で頷いた。



だが、その見立てはすぐに外れると思い知らされる。



「わたしも仲間に入れてくださいな!」


「……っ!!」



突然、クレアに斬りかかってきたサヌラ。


その手には黒いモヤを変形させて作ったと見られる刃が握られている。


クレアはそれをすんでのところで受け止めた。



「前までとは全然違う姿じゃん!」


「力の解放とは……気持ちの良いものですね!!」



クレアの言葉に笑うサヌラ。


その姿は異形としか言いようがないほど、変わり果てていた。



「クレア!!」


「大丈夫!!こいつはわたしが……!!」


「いいえ……あなたの相手はわたしじゃない!!」



サヌラはクレアを剣ごと押し返すと、今度はわたしに斬りかかってきた。



「ウサギのお嬢さん……わたしと踊りましょう!!」


「……誰が……!」



サヌラの刃を弾き返し、わたしは怒りを奴へと向ける。



「お前は……わたしが殺す!!」


「うふふ……お手柔らかにぃ!!」



こうして、ゼルケイのダンジョンにおける最終決戦が火蓋を切った。

サヌラまで黒いオーラを、、、

この戦い、どうなるのでしょうか!


今回もご愛読いただきまして、ありがとうございました!

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