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100 ダンジョン最下層・激戦④…黒

記念すべき100話目!

黒い力を解放したパルトは、謎の魔物に勝てるのでしょうか。

頭は妙にスッキリしていた。


先ほどまで感じていた絶望感、焦燥感、喪失感など、まるで存在しなかったかのように。



全身を覆う黒いオーラ。


この具現化された力には見覚えがある。


窮地に陥った時に発現する力。


師匠の仇であるミッドウェルを退けた最高の力……。





「さっさと……死ね!」



頭の中だけ考えたことが、そのまま口から発せられた。


もはや思考など関係なく、頭にあるのは目の前の"獲物"を屠ることだけ。



手に持つ剣を構えると、瞬時に竜種へ向かって飛びかかる。


素早い斬撃は、鈍い音を経て竜種の呻き声へと変わる。


飛び散る血飛沫と驚くサヌラの顔。


それらはわたしの中の行動意欲をさらに掻き立てた。



「カマイタチ(烈風刃斬)!!!」



さっきも放った風術スキルにより、多数の風の刃が竜種へと走る。


だが、先ほどまでと違ったのは竜種の反応だ。


無関心に放っておくのではなく、風の刃を見るや否や腕を振るい、鋭い爪から風の斬撃を放つ。


わたしのカマイタチを相殺しようとしたのだ。


だが、わたしが放った数と同じ数は放てず、相殺し切れなかった数本の刃が竜種の体にぶつかって弾けた。



「グガァァァァァ!!」



大きな呻き声が響き渡る。


しかし、反撃を試みるのはさすが竜種と言ったところか。


奴は怯まずに尻尾を振り回し、何度も何度もわたしを叩き潰そうとしてきた。


尻尾の嵐を難なく潜り抜けたわたしは、タイミングを見計らって尻尾の先を斬り落としてやった。


再び響き渡る竜種の叫び。


わたしはそれに、愉悦を覚えた。



そんな中で、口を開いたのはサヌラだった。


彼女は竜種に少し下がるように命じると、数歩ほど前に出る。



「その力は……大変興味深いものですね。」


「…………」


「あなたはそれが何かご存知で?」


「…………」



サヌラは何度か語りかけてきたが、わたしはそれを無視し続けた。



「まぁ、喋りたくないのでしたら構いませんが……」



サヌラは真面目な顔でそう溢すと、再び竜種に指示を出す。



「本気で行きなさい。殺して構わないから……。」



その言葉を聞き、竜種の双眸が真っ赤に光った。


気合いを入れ直すかのような咆哮。


その叫びとともに、奴はわたしに向かって突進を始める。


その姿がわたしには格下に見えたのだろう。



なんだ……竜種も大したことはないな……



そんな感情が頭に浮かぶと同時に、再び剣を構えて走り出す。


突進してくる竜種に向かって駆け出したわたしは、奴の直前で急角度の方向転換。


そのスピードについて来れず、竜種は焦ったように動きを止めた。


その隙を見逃さず、わたしはすぐに【駿影】を発動。


左右上下、縦横斜めと縦横無尽に動きながら、奴の全身に隈なく斬撃を叩き込んでやる。


血飛沫が舞い、悲痛の叫びがこだました後、竜種は力尽きたようにその場に倒れ込んだ。


それを見届けると、剣に付着した血を払い、鞘に納めながらサヌラに目を向けた。



次はお前だ……。



そう物語る鋭い視線を向ける。


だが、意外にもサヌラは笑みを浮かべていた。



「なるほど…………やはり凄い力ですね。それは……」



称賛を並べ、拍手を送るサヌラに対して、わたしは怒りを覚えていた。



「その余裕……すぐに消す……」



再び抜いた剣先をサヌラに向ける。


だが、彼女の顔から笑みは消えなかった。


その態度がさらに怒りを呼び、斬りかかろうと魔力を剣に込めた瞬間、ゾクリとした気配を背中に感じた。


思わず振り返ると、倒れたはずの竜種が起き上がる様子が視界に映った。



「まだ終わってませんよ。それ……死なないので……」


「……!?」



その言葉が嘘か本当かはわからない。


だが、感じた違和感がわたしの胸に不安を招いたのは確かである。



「早く立ち上がって殺しなさい!」



サヌラの言葉に呼応して、竜種の体が激しく揺らぎ出す。


全身を覆っている黒いモヤが、まるで竜種を傀儡のように突き動かしているようだ。


咆哮とともに大きな翼を広げた竜種は、もはや竜とは呼べぬ姿……黒いモヤが全身で蠢く姿は悍ましさを放つ。



「ゴァァァァァァァァァ!!!!!!」



その声が伝播したかのように、奴の体を黒いモヤが激しく蠢き、ただでさえ大きな翼がさらに大きく見えた。


意志を持つ生き物のように動いている黒いモヤは、竜種を完全に包み込み、まるで黒い竜のような姿に変わる。



「黒……竜……」



咆哮を上げる目の前の竜種を見て、わたしは驚きを隠せずに溢していた。



◆



幾多の魔物を屠り続けながら、最深部を目指していたクレアとガザル。


2人はまもなくパルトが激戦を繰り広げている最下層へと辿り着く頃だった。



「だいぶ潜ったぜ……!さすがに疲れた……。」



さすがのBランク冒険者も、戦い続ければ疲れるものだ。


走りながら、ガザルは汗を拭って大きく息をついた。


だが、自分の前を先行するクレアを見ると、そんな弱音も言ってられない。


まったく疲れた様子はなく、常に前を向き続けているからだ。


ガザルはクレアに対して……というよりかは、Aランク冒険者に対する認識を改め始めていた。


自分の今の目標はAランクに昇格することだ。


それは冒険者にとって誉高く名誉なこと。


Sランクは規格外なので論外だが、Aランクは努力如何では誰にでもなれる領域と、ガザルは認識していた。


だが、クレアを見れば、Aランクも規格外だと知った。


もちろん、クレアが特別なのかもしれない。


彼女はSランクすらも期待されるギルドの星なのだから、自分と比べるのすらおこがましいのかもしれない。


だが、Aランクになるために必要なものを、クレアから学んだ気がしていた。



(不屈の精神か……1番足りねぇな。俺には……)



自分が手を挙げた時、ギルドマスターのアノーリオンが見せた表情の意味は知っていた。


彼は自分に足りないものを見抜いていて、それを不安を感じたのだろう。


今回のことはギルドだけでなく街全体……強いて言えば帝国の威厳に関わる事態。


そんな危機を俺みたいな中途半端な奴には任せられない。


それがアノーリオンの判断だった。


なら、今回のメンバーに加われたのは何故か。


それはAランク冒険者のクレアがいるからだ。



要するに、今の自分はゼルケイのギルドにおいて、大して期待されていない人材ということになる。


そしてそれは、ガザルにとっては受け入れられない事実であった。



(……納得は出来ねぇな。)



ガザルは思う。


自分だって冒険者の端くれ。


名声や功績を上げるためだけではなく、強さを追い求めるのもまた、冒険者の矜持として理解しているのだ。


なら、今回この場にいれることは幸運と捉えるべきだ。


Aランクの戦いを間近で見れることも、もちろん理由のひとつだ。


しかし、1番は自分よりもランクの低いパルトが、このメンバーに選ばれた理由。


ガザルはそれが知りたかった。


知れば、これからの自分の糧になるはず……。


何故かはわからないが、そういう確信があった。



(とはいえ、まずはウサギの嬢ちゃんを助けねぇとな……。)



クレアが吹き飛ばし残した魔物を斬り伏せながら、ガザルはダンジョンの行先を睨みつけた。




まもなく、2人は最下層に辿り着く。


パルトを助けるために、2人は走り続けていた。

記念すべき100話目の投稿。

色々ありましたが、なんとかここまで来れました。


でも、まだまだ物語は続きます!

頑張って書きますので、これからもよろしくお願いします!


今回もご愛読いただきまして、ありがとうございました!

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