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99 ダンジョン最下層・激戦③

一昨日の更新は、間に合わず遅くなってしまい、すみませんでした。


謎の竜種との激戦。

パルトは耐え切れるのか。

今のわたしが倒せる魔物ではない……。



そんな考えが頭を巡っていた。



目の前にいるのは最強種の一角の竜種だった。



『左から尻尾がきます!』



その言葉を聞いてハッとしたわたしは、瞬時に頭を下げた。


その真上を硬そうな尻尾が鋭く走り抜けると同時に、再びガイドさんの声が響く。



『次がきます!』



目の前の竜種は尾の回転を利用してぐるりと一回りし、その勢いを利用して今度は両腕を振るう。


左右交互に放たれる拳撃と爪撃。


地面を割りながら襲いかかるその攻撃を、後ろに下がりつつ必死にかわしていく。


しかし、それで竜種の攻撃は終わらない。


翼を大きく広げて軽く羽ばたけば、嵐のような暴風が吹き荒れた。


必死に身を屈め、鋭い風に耐えようとしたが、やはり小さなわたしの体では耐えきれず、後方へ吹き飛ばされてしまった。


そのタイミングで、竜種の口に収束し始める黒い粒子。



『回避を!!』



空歩によって空気の足場を構築し、体の向きを無理やり変える。


それはガイドさんの言葉とほとんど同時に行っていた。



漆黒の光線が再びわたしの横を通り過ぎ、地面と壁、そして天井を抉る。


その様子を尻目に、回避を終えて着地したわたしは必死にスキルを発動していた。



「アイスジャベリン(氷蒼槍)!!!」



自分の周りに創り上げた無数の氷の槍。


それを奴へ向けて一斉に放った。



だが、15階層のミノタウロスですら体勢を崩すほどの氷の槍撃が、竜種にはほとんど効いていない。


轟音と氷煙が巻き上がる奥で、何事もなかったかのように大きな竜の影が動いていた?



わたしの攻撃が……全然通用しない……



わかっていたことではあるが、そんな絶望感が全身を支配していく感覚。


切札だった【脱兎如(ライトニングラビット)】だって、すでに発動しているのに、1ミリすら攻撃が及ばない。


【脱兎如(ライトニングラビット)】の効果時間も、残り20秒ほどしかないし、絶望的な状況。


そんな状況にわたしは焦りを隠しきれず、すぐさま剣を鞘に納めて、全身の魔力を氷属性とリンクさせていた。


それは完全に無意識の行動だったと思う。


全ての魔力を一気に全身へ巡らせる。


そして、剣と剣を握る右腕に魔力を集中させ、他の部分への魔力の循環は最小限に抑えていく。



『注告します。その技だけでは……倒せません!』



ガイドさんから注告が飛ぶ。


だが、それはわたしの耳には届かない。


現時点で、自分の中で最強だと考えられるスキルに全力を注ぎ込んだのは、あの竜種に対して自分の全てが無意味だと理解させられたからだろう。


ヤケクソ……というわけではないが、焦りと恐れの感情によって無意識のうちに納刀し、このスキルを選んだのは思考と行動がリンクしていない表れ。


わたしが我を失いかけているのは、周りから見れば一目瞭然だったと思う。


この状況下において、ガイドさんの言葉すらもわたしには届かなくなっていた。



そうして放たれたのは、何度も自分の窮地を救ってきた氷術スキル。



「氷塵華斬(フロストダストスラッシュ)……」



今のわたしが放てる最強氷術スキル。


駿歩によって自分のスピードを最大限まで高め、すれ違い様に斬り抜くシンプルな抜刀スキル。


剣には氷の魔力を通しており、斬り抜いた瞬間にそれを爆散させる荒技。


爆散した氷は敵に纏わりつき、その体を凍らせて絶命させる必殺のスキル。



わたしはすでに、駿歩で竜種に向かって突進していた。


最大限のスピードで。


剣を握る右手に、さらに力を込めて。


そして、大声で叫んでいた。



「氷塵華斬(フロストダストスラッシュ)!!!」



奴の目の前に飛び込んだ瞬間、すぐさま抜刀してスキルを発動する。


鞘から抜いた剣は氷の粉塵を舞い散らし、同時に放つ鋭い一閃とともに竜種の体を斬り捨てる。




……はずだった。


だが、響いたのは肉を断つ音ではなく、鈍い金属音。


わたしの剣が奴の鱗に弾かれた音だった。



なんで……



どうしようもない絶望感が胸を突き抜ける。



どうして……



自分の弱さに対する喪失感が胸を抉る。



くそ………………くそ………くそ!!!



全てがスローモーションのように見える視界。


再び黒い粒子を口元に収束させる竜種を見て、わたしは悔しさから唇を噛んだ。


その先で笑っているサヌラの顔を見て、さらに悔しさが胸を染める。


耳に届く彼女の高笑いは、わたしの死を確信していると理解できた。



そして、それがわかったら必然的にこう思った。




こんなところで……………………死んでやるものか……





「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



大きな雄叫びとともに、胸に燻っていた怒りにも似た感情。


それにわたしは身を委ねていた。


魔力のリミッターが外れる感覚は、あの時と同じだ。


真っ黒な何かが体の奥底から湧き上がってくるのは、あいつに対する憎しみからだろうか。


ミッドウェルを殺すまで……わたしは死ねない……。


死ぬわけにはいかない……。


家族と……師匠の仇を……取るまでは……!!



胸が焼けるように熱い。


そして、全身から炎が噴き出したかの如く、大量の魔力が体の外に溢れ出していく。


その魔力は炎のように燃え上がり、わたしの髪や服を激しく揺らした。


頭の先からつま先まで、全身を巡る魔力の奔流を感じ取りながら、わたしの視界は黒い光に包まれていく。



『やはり……こうな……りますか……理性は…………失わぬ………………よう…………………………に……』



ガイドさんの言葉が、静かに胸の奥へと消えていく。


それと同時に、わたしの体を黒いオーラが包み込んだ。


それは具現化された怒りと憎悪か……。


その正体が何なのかなんて、今の私にはわからないし、わからなくていい。


今はとても気分が良く感じられた。



「こ……これはまさか……ボスが言っていた……?」



サヌラが何のことを言っているのかは知らないが、笑っていた彼女の顔は、今度は驚愕の色に染まっている。


竜種もブレスの予備動作を1度止めて、変わり果てたわたしの姿を睨んでいる。


それを見て、私はこう思った。



「さっさと……死ね!!!」



言葉とともに、わたしは竜種へ斬り掛かっていた。

再び黒い力に覚醒してしまったパルト。


この力は何なのか。

謎の竜種とのサヌラを退けることができるのか。



今回もご愛読いただきまして、ありがとうございました!

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