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追想のヒガンバナ  作者: 希塔司
第2章「戦禍」
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第21話「互いの能力」

「そんなバカな、お前の体は両手足どころか首まではねたはすだ!一体どうやって生き返りやがった!」



 周の顔は驚きと恐怖の顔で引き攣っていた。自分がその手でバラバラにして死んだのを確認しているから尚更だ。私だってそれを目の前で見ているから、なぜ今るみの体が再生しているのか不思議だった。



「あーよく言われるんだよねー。確かにあんた以外にも私の首を切ったり内臓を取り出したりして殺してきたやつもいるんだけど。全てはこの白虎の細胞のおかげなの。この大陸に暮らしていた白い虎の伝説、その女なら知ってるよね?」



 集落に向かう途中、2人に話した英雄と白い虎のお話。まさか本当に存在するとは思っていなかった。私が生まれたころには白い虎は絶滅していると聞いていた。


 そもそもその白い虎が実在していたというのも信じていなかったのだから。



「じゃまさかあんたの中には白い虎の能力も?」


「そうよ、その白い虎の能力は『蘇生』。いくら身体的に私を殺したとしても、私の血や肉があれば時間はかかるけど再生することができる。ただ今回は乗っ取ってる体を胴体だけにされたから、急遽別の場所に保管してある私の血のストックで生き返ったんだけどね。」



 別の場所にという違和感が頭をよぎっていく。



「無論この体は私が化けるのにうってつけだからまだしばらく使わせてもらうのさ。全く、貴重な私の血をよくも使わせてくれたな。」



 最盛の能力は恐ろしいものだった。もしこの話が本当なら最盛の血や肉を跡形もなく消し去らないと無限に蘇るということ、私たちはとんでもない化け物に遭遇してしまった。ただ最盛の話には希望も見出せた。


 それは乗っ取っている体の状態では蘇生をするのには時間がかかるということ。もう一つは血のストックには限りがあるということ。殺し続ければいつかは蘇生もできなくなるのではと考えた。



「ん...くっ!先輩...。」



 すみれは少し脇腹を抑えながら私に話しかけてきた。



「すみれ、無茶しちゃダメよ。ここは私がやる。」


「わかりました、先輩にこれを...。」



 すみれが渡してきたのは注射器だった。中には何かの液体が入っている。これが一体何なのかは私にはわからないけど、これを奴に注入すればいいのはわかった。ズボンから銃も取り出し、最盛を牽制しにいく。



「忠告するわ、もう私は今これ以上ないくらいにあんたを殺したくてうずうずしてるの。けどその前に、乗っ取ってるるみの体を返してもらおうか。」



「あらあら、今更お姉ちゃんぶって。もうこの子はすでに死んでるのよ。仮に体を返したところでもうあなたに言葉も発さない、見てくれない、感じ取れないのよ?それでもそんなくだらないことを言うのかしら?」



 私にはあいつの言っていることは理解しようとしない、なぜなら。



「私の家族を傷つけたお前を、悪魔に代わり私が切る!」



 煮えたぎる怒りをそのままぶつけたいから。


 まずは私が銃で適度な間合いを保つために何発か撃った。手練れなのか簡単に交わすものの最盛は私に近づこうとはしない。すみれから渡された注射器を打たれたくないと思ったからなのか。弾倉を取り出して弾を的確に素早く込めてリロードしていく。



「あらあら、その男のように接近戦しないのかしら?」



 最盛は逆撫でるように挑発するも、バラバラにされたにも関わらずこうしてあっけなく蘇生されるのを見た私がそんなヘマをするわけがない。


 得意の中距離戦に持ち込むために私は再び銃を撃つ。一発、また一発とぶつけるように。だが最盛は余裕な顔をして次々と交わしていく。そして手をガシッと合わせて念じていく。



「さぁ、吹っ飛べ!」



 ブォン!

 

 え?何が起きたのかはさっぱりだ、耳や体が痛い。気づいた時には私は後ろに吹っ飛ばされている。その技に私は恐怖を覚える。後ろの木に体をぶつけてしまう。



「ぐっ!いったい何が起きたの?」



 頭の中でぐるぐると思考を巡らせるがさっぱりだ。立ち上がって間合いを近づけていくも。



「そーら、もう一発!」



 最盛は再び手を合わせて念じ、そして。


 キーーン、ボン!



 耳鳴りがような轟音と吹き荒れる風が私を襲うのを今度はしっかりと見えた。ただどんな力でそのような技を仕掛けることができるのかはまだわからない。



 私はまた後ろに吹っ飛ばされるも今度はしっかりと刀で木を刺して足をつけて態勢を整えた。吹き荒れる風はまだ収まらず、ビューという風の音が耳にかかる。


 周はすみれを庇ったのか少し腕を抑えている。タラタラと血を流す周に申し訳なさそうに布で拭っているすみれの顔を見る。ダラダラと続けばジリ貧でやられる、そう思い私は少しだけ能力を使うことを決めた。



「これは正直使いたくなかったんだけど、しょうがないわよね。」


「へーついに使うんだ。あなたの能力がどんなものか試させて。」



 私は目をつぶって静かに深呼吸する。静かに心臓がドクンドクンと鼓動するのを感じる、額から血と汗が流れるのも。木々が風に揺らめく音が聞こえる。そうして精神を落ち着かせたところで私は胸に手を乗せる。



「開放、2割。」



 最盛は目を輝かせている。自分と同じように能力を使える人間がいると知ったから。体中の汗が少しずつ蒸発しているのがわかる。そして地面が。


 ドン!と音と共にへこむ。力の解放により足に力を入れただけでフワッと飛べる。その影響で地面がへこむ。



「さぁ、いくわよ。」



 そう言った瞬間に最盛の目の前まで瞬時に移動した。私は刀を右手に持つ。


 スパっ!


 まるでかまいたちにあったかのように、最盛の左腕を切り落とす。その顔はあまりの速さに驚きを隠せずにいる。



「な、なにが起きたの!?」

 

 

 そして最盛は切り落とされた腕を見て唖然としている。私がるみの体を傷つけることはないとたかを括っていたのがわかる顔だ。そして私は瞬時に後ろへ下がる。周やるみも同じように絶句している。



「どういうことなの、見えなかった...。」


「痛みを感じないんでしょ、だから今切り落とされたのもわかんなかったでしょ?」



 逆に私は最盛の顔を見てスッキリする。こうして久しぶりに力を解放した私は晴々とした気分で戦える。獲物を狩る時とは違う、能力持ちどうしの戦い。



「くそ!舐めやがって!ならこれならどうだ!」



 ニュルニュル!っとなんと腕から触手が生えてきた。正直触手などはヌルヌル感が苦手。私は思わず顔を下に向ける。徐々にシュルシュルという不快な音に変わっていく。やがてその音がなくなり見上げると、綺麗に腕が繋ぎ合わされていた。



「残念だったわね。こんなこともあろうかと、この子の体を応急処置できるように改造してあるのよね。」



 妹の体を勝手にいじって、好き勝手なことをしているこいつを追い出してやりたい。だがどうやってるみの体から離せるだろうか。本体を探す?いや、そもそもどこに隠しているのかもわからないのにどうやって。



「そーら、お返しよ!」



 最盛はそう言いながら狂気の笑みを見せた。私は銃を再び持ち引き金を引こうとした。



 ザシュッ!



「先輩!」


「あやめ!」



 2人が私に叫んでいる、何かと体を見てみると嘘でしょ?なんと触手が私の太腿や両肩を貫通しているじゃないか。能力解放で痛覚は遮断してるけど、さすがにこれでは身動きがとりにくい。



「あははは!捕まえた!」



 よく見ると最盛から触手が生えて地面を貫通してそのまま私に突き刺していた。刀を上手く持ち替えられない。力を入れても全然抜け出せない。



「ほらほら、こっちにおいで!」



 どんどん触手を引っ張り、私を誘き寄せていく。蟻地獄の罠のように一度かかると抜け出せない状態だ。そして目の前まで歩いて来た最盛は、するどい牙で私の首を噛む。



「いっ!」



 思わず声に出るそしてなんと。



「あああ!」



 く、こいつ血を吸い取ってる!私は腹が立ち、頭突きをする。



「ぐっ!やりやがったわね!でもいいわ。あなたの血をようやく吸えたから。さぁ、どんな能力持ってるのかしら。」



 こいつまさか血を吸い取ることでその人間の能力を使えるようになるのかとようやく気づいた。それが最盛の能力だ。他者から能力を奪うことが。



「あぁーいいわこれ!内側から力がみなぎるみたい...。」



 喘ぐような声で夜空を見上げた最盛は両手を広げる。月明かりが照らす中、彼女は言った。



「開放、4割」



 私たちはまんまと最盛が埋め込んで入る本当の能力に騙されていた。


 

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