ドラゴンブレス
目の前が真っ白になり耳がキーンとなる。
感覚が鈍くなっていることが自分でも分かった。
微かに聞こえる声、だが何を喋っているのかがわからない。
実際にはどれくらいだったのかわからない。体感数分後ようやく視力と聴覚が戻ってきた。
「シル………様!シルヴァ様!」
「リリィ………。」
その姿を見るとなぜか安心感が溢れてきた。
「ごめん、リリィ、どれくらい行動不能になってた?」
「5分くらいです。TKG様とユウスケ様は先ほど回復しましたがロバスト様が未だに回復してません。」
見た所精霊たちは問題なく活動している様だ。
とりあえず何が起こるかわからないのでロバストを中心としてフォーメーションを組む。
そこでカトレアが話しかけてきた。
「いいシルヴァ、あれが本来のドラゴンブレスよ。」
圧倒的な破壊力を持った光線。よく聞きはするがブレスなんて生やさしいのもじゃ無い。
そして、放たれた場所を見てみると大きなクレーターが出来ていた。地形を変えるほどの威力、気まぐれで目をつけられただけでも命の保障はないと思う。
そしてタイラントワームの姿は綺麗に消えていた。
そしてその竜は上空を少し飛び問題がないとわかると再び壊されずに残った石柱の上に着地し眠りについた。
そんな所でロバストも回復してきたので即刻この場から離れることにした。
「カトレア、もし制限関係なしに力を使えるとしたらあのドラゴンブレスも模倣出来るの?」
「流石に無理よ、私が本来の力で全力を出せたとして良くて2割から3割といったところかしら。」
あの威力を見ると2割〜3割でもかなり凄い事になりそう。と言うことは心の中に閉まっておく事にした、改めて大精霊ってすごいんだな。
タイラントワームとあの土竜が原因だったのか他のモンスターは現れないが警戒をしながら他のエリアへと移動をする。
もう石柱もほとんど見えなくなるまで移動した頃、ザーと何かを掻き分け進む後とシャーと言う鳴き声が聞こえてきた。
その方向を見ると地面から何か背ビレの様なものが生えていた。
あれだけ探しても見当たらなかったモンスターとタイミング悪くエンカウントしてしまった。
皆リリィにヒールも欠けてもらいTKGの料理を食べたが全快とは行かず多少ながらも心身に疲労感が残っていた。
「来ます、サンドシャークです。」
リリィの掛け声と共に改めて気合を入れ直す。
見えてるだけで3匹。各自パートナーと共に体制を整える。
敵はTKG、ユウスケ、ロバストの各人に襲い掛かろうとする。
だがパートナーたちがその力を発揮する。
「アリア絶対領域だ!」
「わかったわ、パパ」
そう言うとアリアを中心に3メートル程の青黒いクリアな球体が現れる。
敵が球体の中に入るとサンドジャークの特徴である速さは一瞬にして失われ、TKGの包丁さばきからのアリアの召喚した吸血蝙蝠によってしっかり血抜きがされたお造りが出来上がった。
ユウスケの場合はと言うと………
サンドシャークが地面から飛び出してきた所で太郎に指示をだす。
「太郎、影縫。」
そう言うとユウスケの影から出てきた太郎はサンドシャークの影へとダイブした。するとサンドシャークの動きが止まったかと思うと、地面へと無惨に転がりバタバタと必死の抵抗をしている。
だが地面で横たわって何も出来ないモンスターはいい的だ。ユウスケがファイヤージャベリンを放つ、無慈悲に放たれたのは魔法はサンドシャークの大きな口に入り中で爆ぜた。
次にロバスト。
ロバストは1番堅実に対応していた。
アロスに敵の位置を捕捉してもらい飛び出してくる位置を予測し先回りする。
盾を構えて敵が出てきた所でその盾で鼻頭をおもっきり叩き方が怯んだ所でギフトを最大限使用した状態で大きく振りかぶって剣を振り下ろす。
それを数回繰り返したところでサンドシャークは絶命した。
各々がサンドシャークが消えた後ドロップ品を回収し、改めて歩みを進める。
歩き続けて森との境界まできたあたりで休憩を取る。
あれだけ移動したのにも関わらず出会ったモンスターはあのサンドシャークのみだった。
「ほとんどポイント稼げてないな。」
TKGがポツリと漏らす。
確かにそうだ。ガッツリ稼ぐぞ!と意気込んできた先であんなものを見せられたらモチベーションが下がるのは必然だといってもいいだろう。
狩ったモンスターも枯れた大地に入るまでに出会した少しモンスターとサンドジャーク3匹のみだった。
どうしたものかと思っていたらふと以前から思っていたことが頭に浮かんできた。
「ねぇ、これってさ一応大人気ゲームじゃない?それにしては情報が少なすぎるよね?」
実際少し調べてみたこともあったが基本的なことばかりで核心をつく様な情報は一つも出てこなかった。
まだ発売されて間もないからなのか、それだとしても前作の情報もほとんど出てこないのはやはり何が理由があるのか。
「ほんとそれなー!」
適当に返すTKG
「まぁ、気楽にやるのが良いしね。」
いつもブレないユウスケ
「もう少しぐらいあっても良いと思うけどな。」
だんだんとガチ寄りになってきたロバスト。
三者三様の答えが返ってくる。
そんな感じでどうでも良い話を交えながら十分に休憩を取った後、森へと足を踏み入れる。
森を歩いているとどこか監視されている様な視線を感じる。
皆も気づいている様でその顔には程よい緊張感が走っていた。
だがその者たちは一定の距離を保ち近づいてくるだけで攻撃の意思が全く感じられなかった。
何者かの動向に気をつけながら進むと広場の様なところに出た。
そこには木や雑草もなく綺麗に手入れされている様で、その理由は目の前のものを見たらすぐにわかった。
そこには古いが手入れの行き届いた神殿があったのだ。大きさはそこまで大きくはなくこぢんまりとした神殿。
陽の光も差し神々しさも感じられつい足を一歩二歩と進めてしまった。
「止まれ。」
神殿の中から声が聞こえた。だがそこに害意は感じられない。
大人しく止まって待っているとそこから出てきたのは白銀の毛をたなびかせて優雅な足取りでウルフが出てきた。
人の言葉を話すウルフなのでもちろん普通のウルフではないだろう。
「何しにここへ来た?」
そう問いかけるウルフ。
「何かに追われて進んでいるうちにここについてしまいました。」
「ふむ、嘘ではない様だな。」
言葉の真偽もわかるのか。
「付けていたのはうちの一族の者たちだろう。すまなかったな。出てこい!」
そうウルフが言うと広場を囲む様に数十匹のフォレスとウルフが出てきた。
と言うことは目の前のウルフはそこから進化したものなのだろうか?
流石の数にビビっていると心を読まれてしまったのかフォローが入る。
「安心せい、襲わせはせんよ。それよりもうん、確かにそうだな。」
他のフォレストウルフとなにか喋っている様だ。
「先頭のお前から微かに同族の匂いがするな。」
ウルフ系モンスターを狩っていた時についてしまったのだろうか?
「安心しろ、嫌な匂いではない。むしろ安心した様な香りだ。身近におったりせんか?」
思考を巡らせる。
すると一つの可能性が浮かんできた。………ルルナさん?
「自分の仲間にテイマーがいるのでその者と契約したフォレストウルフかも知れません。」
「うむ、正直ものはういぞ。自らついて行ったようじゃの。………もし密猟などであれば全てを無に帰す所であった!」
そういって大口を開けながらカッカッカと笑った。
それを聞いて冷や汗が滝の様に流れ出る。
「本当に良く喋る顔じゃの。安心しろ、我が一族は自衛以外では人族などは襲わん。襲っているのはまた別のグループであろうな。そっちはどうでも良い。」
その言葉で救われた気持ちになった。
「それであの子の名は何と名付けられたのかの?」
「バウバウちゃんと名付けられていました。」
「何とも人らしい名付けじゃな!もしよかったら今度連れてきておくれ。バウバウちゃんとその契約者を。」
「わかりました、伝えておきます。」
「長話をして悪かったの。これは土産じゃ、持っていけ。」
ウルフがそう言うとあたりに立ち待ち濃霧が発生し消えたと思ったらそこはアーツノルドが木々の間から見えるほど近い森の中だった。




