枯れた大地
サンドウルフはじわじわと、だが確実にその距離を縮めてくる。
そしてよく見ると後ろあたりに一際大きい個体がいた。あれがこの群れのボスか?
「ウォーーン」
今度は少し短い鳴き声だ。
するとそれを合図に一斉にサンドウルフがこちらへ向かってきた。
が、ラーミの柵のおかげで一気に攻められることはなく、誘導路から少数で向かってくる。
向かってきた所を先ずは小盾で頭部を殴る。キャンと鳴き声を上げ左側へと吹っ飛ばされ柵へと刺さる。
そのすぐ後ろに着いていたもう一匹が牙を剥き襲いかかってくる。
「はっ!」
短剣でなんとか止めることが出来たがすぐ後ろに下がりこちらの様子を伺っている。
「数は20匹。そのうち1匹が大物の上位個体よ。」
上空からカトレアが教えてくれる。
そしてラーミはノービィに乗りブラットアーツで出現させた大鎌を、柵の周りでどうするかとこまねいているサンドウルフ達に向かって振りかざす。
敵も上空からの攻撃にやられるだけでなくなんとか抵抗している。
リリィとドッペルはブーストが切れない様にかけ続けてくれている。
「基本的に上位個体は下位個体の援軍を呼ぶ能力を持っているので呼ばれる前に決着をつけましょう。」
リリィが新たな情報をくれる。
その間にも敵は猛攻してくるがなんとか対処する。
敵の数が半分くらいまで減ったあたりくらいで後方から見ていたリーダーが遠吠えをあげる。そうするとそれを聞いたサンドウルフ達は一斉に引き返していった。
「諦めたのか?」
先ほどの油断できない状況から敵が引いた事で緊張が途切れたのか、そうポツリと呟いてしまっていた。
その言葉を聞き逃さなかったのがリリィだ。
「いえ、一度引き返したのちに仲間と合流し体制を整えてから再度攻めてくるはずです。実際ギリギリ感知出来るところに何匹かこちらを監視している者もいます!」
想像以上に統率のとれたモンスターだ。
ふと、これからはこういう統率のとれたモンスターや個の力がとてつもないモンスターと戦っていかなければならないと言う不安感に襲われた。
「「精神安定!」大丈夫ですか?シルヴァ様。少し顔色が悪くなっていましたよ。」
「ありがとうリリィ。少し弱気になってたのかも、でももう大丈夫!それにしても新しい魔法を覚えたの?」
リリィの新たな魔法によりさっきまでとは打って変わり心が軽くなった。
「一応ですが初級の全魔法適性を持っていますからね!少しずつですが頑張って覚えてます!」
そうか、あくまで適正だからか。ギフトで直接使えるブーストの魔法とは違って初級全魔法適性の場合は、扱える範囲が広い代わりに自身で覚えなければいけないのか。それともNPCだからか?まだまだわからないことが多いな。
「ちょっといいかしら?いちゃついているところ悪いんだけどそろそろ敵さん達がこちらに来そうよ。」
上空からカトレアが報告をしてくれた。それを聞いて皆、改めて戦闘体制に入る。
その数十秒後、ウォーンと遠くから聞こえたのちその姿がギリギリ確認できるまでの距離まで詰めてきた。
先程と違うのはサンドウルフの数が大体1.5倍ほどになっていること。そして上位個体が数が2匹になっているというところだ。
「「ウォーン」」
2匹がそう吠えるとだんだんと風が吹き始め、巻き上がってゆきみるみるうちに竜巻が発生してこちらの方に向かってきた。
「あれの直撃は流石に不味いわね。」
流石のカトレアもその竜巻の強大さからか弱気になる。
みんな自然と集まり防御系の効果のあるものを発動させていた。
「血界!」
「精霊結界、そして……偽り出でよ、象るはサンドアーマードドラゴン。サンドウォール!」
「「初級対物理結界」」
サンドウォール、血界、各種結界の中で嵐が収まるのを待つ。
「あの技を使う上位個体はサンドストームウルフですね。遠方から強力な技を使ってくるので厄介なんですよ。」
10分ほど経っただろうか、やっと弱まってきたような感じがしてきた。
「多分ですか、竜巻が治っても周りにはサンドウルフの群れがいると思われます。各自戦闘準備をしておきましょう!」
リリィがそう言ってたらさらに10分ほど経ったあたりで竜巻はその威力を落とし散って行った。
皆が結界などを解除すると同時にラーミが広範囲にわたって先ほど同様の柵のようなブラットアーツを発動した。そしてそのままノービィに乗り大鎌でサンドウルフを狩って行く。リリィとドッペルは全体にバフをかけ、カトレアは上空で何かを唱えている。
自分を一体ずつ確実に仕留めて行く。
そして上位個体のサンドストームウルフは遠方からこちらを見るだけで動こうとしない。
先ほどの技の反動で動けないのかただ様子を窺っているだけなのか、願うならばそのまま何もしないでいて欲しい。
少しするとカトレアは落雷を落としサンドウルフにダメージを与えていた。
そして、サンドウルフを大体狩り終えようとしたところで上位個体がまた逃げ出そうとしていた。だがこちらはみんなボロボロになり満身創痍となっていた。
「ふぅ、我があるじよ、それだけのダメージ量と出血量ならばブラッドアーツで大技が出せるのではないか?」
確かにかなりの数を相手したこともありダメージ量も多く、それに比例してかなり出血もしていた。
だが敵はかなり遠方にいて今にも逃げ出しそうな状況だ。時間はかけていられない。
遠方への攻撃手段………銃か!いや、複雑なものは今の自分では作れない。何かないか……槍だ!投擲用の槍!
いつも使っているのでは無い、より投げやすくまっすぐと進み敵を貫くそんな槍。
その姿をイメージしブラットアーツで投擲槍を作りあげる。
色は真紅。貫通力を上げるために先端が螺旋状になっている。重さもちょうどいい。
器用と投擲の効果を使い命中率を上げ、攻撃威力上昇(小)と身体能力強化(中)、武器攻撃威力上昇を使い。その真紅に染まった螺旋状の槍を敵に向かって投げつける。「ゲイ・ボルク」つい、そう呟いてしまった。自分で投げたのに想像以上の速さに驚いた。
槍は目で追うのもやっとの速さで敵に向かい放たれて、当たってもそこに何もなかったのようにそのまま貫き、進み続けるとほどなく霧散した。
仲間が目の前でやられて動けなくなっている間に続け様に2投目を放つ。
見事命中し、残っていた少数のサンドウルフは一目散に散り散りに去って行った。
「なんとかなったね。だけど少し休みたいね。」
少しその場で休んだ後拠点に行き本格的に体を休めることができた。
今回のポイントを確認する。
サンドウルフ 38体で140ポイント
サンドストームウルフ 2体で140ポイント
計280ポイントを稼ぐことができた。
それにしても流石に濃い時間だった………。
結界石のおかげもあり皆で横になってしっかりと朝まで休むことができた。




