第13話
ガギィィィンッ! と、無残に砕け散る僕の肩の装甲。オロチの『魂喰』の容赦ない無双の剣技の前に、僕のスサノオジェネレーターは完全に限界を迎えていた。システムエラーの赤色警告が視界を埋め尽くす。
(あともう少し……命がベルトを叩き直す時間を、一秒でも多く稼ぐんだ……!)
「あひゃひゃ! 終わりだ、鉄クズがァ!」
オロチの魔剣が僕の首筋へ振り下ろされる。その瞬間、僕はブレードを投げ捨て、自らの両腕でオロチの身体へと正面から猛然としがみついた。
「何ィっ!?」
「……ここには、夜さんも、街の人たちもいるんだ。お前のような化け物を、一歩も近付かせるわけにはいかない……っ!」
僕は残るすべてのエネルギーを脚力へと注ぎ込み、オロチを羽交い締めににしたまま、如月邸の門前から強引に跳躍した。避難所から、力任せに奴を遠ざける。
「離せ、このクソがァッ!!」
ドガァッ!! と、オロチの強力な拳が僕の背中の装甲を殴り抜く。激しい衝撃波と共に、僕たちは如月邸から遠く離れた広場へと墜落した。地面へ激突し、オロチに手荒く振りほどかれる。その瞬間、スサノオジェネレーターが沈黙し、僕の装甲は光の粒子となって消滅した。変身解除。ボロボロになった書生服のまま、僕は地面に膝を突き、荒い息を吐く。エネルギーは完全にゼロだった。
「よくも小癪な真似をしてくれたなぁ……。おい、大人しくその美味そうな魂を俺の『魂喰』に吸わせろよぉ!」
オロチが魔剣をギラつかせ、動けない僕へとゆっくり歩み寄る。死の足音が近づく。だが、その絶望を切り裂くように、硝煙から力強い足音が響いた。
「……そこまでだ、クズが」
「――え?」
振り返ると、そこには詰襟を血に染めながらも、獣のような鋭い眼光を蘇らせた烏丸剣が立っていた。その手には、青い宝石と未来のパーツが融合し、白銀に生まれ変わった新たなベルトが握られている。
「さっきの借りは返すぞ、茶髪」
不敵な笑みを浮かべる剣に、僕は地面に這いつくばりながらも、思わずいつも通りの論理で言い返してしまった。
「……茶髪じゃない。深神八雲だ、と言ったはずだ......」
「ハッ、何人来たって変わらねえよぉ! そんなおもちゃで、俺の剣技に勝てると思ってんのかァ!?」
オロチが声を大にして煽り散らす。だが、剣はもう、あの心を折られた弱い男ではなかった。人々のために気丈に笑った夜の姿が、命の血の滲むような職人魂が、彼の胸の炎を完全に再点火させていた。
「真•滅災ノ輪よ、俺に力を貸せ!」
剣はそれを腹部へと力強く叩きつけた。
「お前が我が一族を滅ぼし、おやっさんを殺し、この帝都を脅かすというのなら……。その呪われた運命を、今ここで、俺が一匹残らず噛み殺す!!」
「――鎧装!!」
『 高出力 ―― 蒸気臨界 ―― 無限 !! 』
大地を揺るがすような未来のシステム音声が鳴り響く。かつての、自らの寿命を削る禍々しい黒い煙ではない。未来パーツのエネルギー還流により、純白の、清らかな蒸気が爆発的に噴き出した。
ゴオオォォォッ!!
白い霧を突き破り、赤熱大剣『裂轟』を構えた白い戦士が姿を現す。見た目こそ同じ白い甲冑、だが内包するエネルギーは無限へと限界突破していた。その神々しい姿を見上げ、僕は肉眼でその勝利の計算式を確信した。
「命が繋ぎ、そして君の闘志が再び天へと登った。――さしずめそれは、『機動鎧装・命昇』だ!」
「命昇……。知らぬ言葉、だがいい名だ」
剣は構えると、純白の蒸気を激しく噴射して地を蹴った。一閃。裂轟の一振りが、オロチの放った無数の凶刃を正面から力づくで叩き伏せ、絶対悪の肉体を激しく弾き飛ばす。
「ごはっ!!(なんだこいつ、さっきとまるで違う!)」
「どうした......クズ」
命を削る恐怖を克服し、仲間たちの想いを背負った烏丸の、真の反撃が今、始まった。




