三途の川
三途の川、渡ります。
「三途の川」楽しんでいただけたら嬉しいです。
川のせせらぎが聞こえる。
しかし、私が今立っているのはのどかな田舎街ではなく、あの世だ。
川は蛇行するようにところどころ曲がっており、前方に建物が立っている。
真ん中から木が突き出しているため、某有名映画の城のように見えた。
(確か三途の川には、三つの渡り方があったと思うけど、どこで決めるんだろう。)
私はぼんやりと川を見ながら進んでいく。
おそらくは目の前の建物で渡り方を決めるのだろうか。
私は草履の裏を心ばかり叩くと、建物の中に入った。
中は吹き抜けになっており、一階は受付のような構造にいて、奥には二つの部屋が繋がっていた。
2階には本棚がたくさんあり、スタッフと思われる白いエプロンを着た者達が忙しく動き回っていた。
私は受付にいる痩せ型の受付嬢に声をかけた。
「あの、あの川を渡ろうかと思ったんですけど、大丈夫ですか?」
「はい、構いませんよ。
亡者の皆様は必ず三途の川を渡っていただくのが、ここの決まりですから。」
受付嬢はにっこりと微笑み、二つの部屋のうち右側の部屋を指差した。
「あちらの部屋が女性ですので、そこに入ってください。
反対は男性ですのでお間違いなく。」
私は頷くと、右側の部屋に入ろうとした。
その時、他の受付にいる受付嬢の言動に目がついた。
なんと、電話の受話器を取ったかと思いきや、何も喋らずにぶつ切りしているのだ。
私は内心訝しみながら、さっきの受付嬢に声をかけた。
「あの、向こうの人たちは何をしているのですか?」
「あぁ、あれは無言電話をしているんですよ。」
「っはぁ?」
私はあまりにも素っ頓狂な発言に耳を疑った。
無言電話というと、受話器をとって電話に出たにも関わらず、相手はうんともすんとも言わず、
ただこちらを不安にさせるだけの傍迷惑なあれだ。
「えっとですね、あの世の一丁目であるこちらから現世へお電話差し上げることで、
『私たちはここにいます』アピールをしてると言いますが…。」
「はぁ…。」
開いた口が塞がらない思いで、私は無言電話をしまくる受付嬢を一瞥した。
あの行為がやめれば、現世で迷惑被る人も減るだろうに…。
私は少し呆れながら右側の部屋に入った。
そこは女更衣室のようで、中には数人の女性職員(?)が立っており、いかにもベテランの雰囲気を醸し出している。
「あなた、そうそこの人。服脱いで私にちょうだい。」
あ、なんとなく想像がついた気がする。
生前に誰かから教わったものだ。
三途の川を渡る時に、奪衣婆が服を奪って懸杖爺が衣領樹という木にかけることで決まるらしい。
確か善人であれば低く、悪人であれば高くかかったはずだ。
私は大人しく死装束を脱ぐと、奪衣婆と思われる肝っ玉母さん風婆さんに服を預けた。
奪衣婆は服を値踏みするように見つめたあと、奥にある大きな木に服を持っていく。
さっき建物から突き出ていた木は、衣領樹だったらしい。
奪衣婆は思いっきり手を振り上げると、私の服をぶん投げる。
高さは中くらいで、どちらかというと低いよりだ。
奪衣婆は投げた服を持ってくると、私に返しながらこう言った。
「あなた真ん中くらいなんだけど、若いから橋でいいわ。」
ありがとうございますと返しながら、私はひとつ気になっていたことを言った。
「あの、懸杖爺はどうしたんですか?」
「あの人男性よ。前亡者から苦情が来てね。男性の鬼に女性の服を投げさせるのはどうなんだって。
だから私が統括してやることになったの。もちろんきついからシフト交換制だけどね。」
なんだその妙に現代地味たそれ…。というか、しっかり変更してあげるんかい。
私が苦笑いを浮かべていると、奪衣婆は咳払いして続けた。
「あのね、あなたはここの突き当たりの廊下をまっすぐいくのよ。まっすくね。
右とか左に曲がったらダメだからね。絶対間違えないで。」
「わかりました。」
私は言われた通りに進む。
廊下には扉が設置され、それを開くと、三途の川が目の前にあった。
前方には大きな橋がかかっている。
「この橋、渡っていいのかな。」
私はそっと一歩踏み出す。
橋の傾斜はなだらかで、欄干から壮大な景色が見える。
「わぁすごい。写真撮ってSNSに送りたい〜。」
まぁでも、スマホもない上にネット回線が繋がってると思えないけど。
よくよく目を凝らしてみると、橋を渡る以外にも渡り方があることが見える。
少し奥には、小舟を漕いで渡る人がいて、さらに奥には泳いでるような人も見える。
(泳ぐのは嫌だなぁ。)
私はそう思いながら三途の川を渡り終えた。
これで私は、正式にあの世に入ることとなったのであった。
今日一日、ほとんど何も投稿できてなかったんですね。氷室八弥です。
明日からちょっと忙しくなりそうなので、投稿遅れちゃうと思うんですけど、
どうかご容赦くださいね。
そして今回、懸杖爺の漢字変換が出てこなくって大変でした。
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