黄泉平坂へようこそ
冥土ならぬメイド出ます。
「ようこそ黄泉平坂へ」⋮、楽しんでいただけたら嬉しいです。
三途の川を渡り終わり、私はぼぅっと景色を眺めながら歩いていた。
心地よいぬるい風が髪を揺らす。
その問、石蹴りのような硬い音があたりに響いた。
見ると、三途の川に沿うように公園のような敷地があり、
その中で、まだ足もつかないような子供から、20歳くらいの人が、
石をひたすら積んでいた。
(なに、この奇妙な公園…。)
私は首を傾げながら公園の入り口に近づく。
丁度出入り口のところに、石に掘られた文字で
こう書いてあった。
「『賽の河原』両親より早くに亡くなられた方は、こちらで石を積みましょう。」
そういえば、そんなことを聞いたことがある気がする。
ということは、両親より先に死んだ私は、ここで石を積まねばならないということだろう。
私は敷地内に入ると、そこらに落ちていた石を積み上げていく。
積むこと自体は簡単なのだが、崩れないようにバランスを考えておかないとならない。
(意外と難しいんだな…。)
なんの意味があるかは知らないが、
一応私は、賽の河原で石を積んでおいた。
しばらく歩くと、遊園地の入り口前にある受付のようなものが見えてきた。
今までの流れから、あそこには行ったほうがよいだろう。
私は受付に近寄り、すみませんと声をかける。
そこには、メイド服をきたスタッフが、
眩しいくらいの笑みを浮かべて座っていた。
『人生お疲れさまでした。お帰りなさい。
ようこそ黄泉平坂へ。
城崎綾乃さんですね?」
スタッフは私の顔を覗き込む。
私はこくりと頷いた。
「はじめまして、今回あなたの案内人を務めさせていただきます。
冥土の案内役人、ユリといいます。
これから、綾乃さんが49日間泊まるお部屋をご案内させていただきますね。」
ユリというスタッフは一礼すると、改札の小部屋から出て歩き出す。
私はその背中を追って歩いた。
途中からユリさんはこんなことを言い出した。
「49日という言葉は聞いたことがありますよね?
亡くなってから七週間、亡者は週1ペースで十王という神々に教えを受けたり、審判を受けたりして、次の転生先を決めるんです。」
聞いたことがあるんだかないんだか、微妙な話だ。
そんなことを聞いたこともあったかもしれない。
ユリさんは大きな集合宅の前で足を止めた。
「これから綾乃さんには49日間、こちらで下宿していただきます。
十王からのお呼ばれがあったら私がお伝えしますので、基本はこちらにいてください。
なお、この黄泉平坂の街を歩かれるぶんには構いませんからね。」
そういうとユリさんは踵を返し、歩いていってしまった。
集合住宅の前には「隠世荘」と書かれていた。
(ここで49日を過ごすのが…。
お父さん、お母さん、渚。死後の世界っていうのは、意外とテーマ・パークみたいだよ。)
私はどこか遠くにいるであろう家族に思いを馳せたのだった。
ほとんど丸2日間、何もしなくって申し訳ないです。氷室八弥です。
黄泉平坂というのはあの世のことでして、一番かわいいと思って使ってます。
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