表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冥土の旅のご案内  作者: 氷室八弥
五七日
PR
13/14

閻魔大王会談

閻魔大王の審判です。

「閻魔大王会談」楽しんでいただけたら嬉しいです。




電車に乗り、やっと到着した閻魔庁。


隣を歩くユリさんは今までないくらい緊張している様子だが、

私は限りなく現世に近い景色に安心感すら覚えていた。


しばらく道なりに閻魔庁内を歩いているのだが、ところどころ吹き抜けのシャンデリアが見え隠れし、

他にもたくさんの部署が入っているのか、オフィスの入り口のようなものも多い。


私は緊張のあまりカクカク歩きになっているユリさんに声をかけた。



「ユリさんの派遣元もここら辺なんですか?」

「まぁそうですけど…。」


「なぁに緊張してるんですか?ただ審判を受けるだけだというのに。」

「私は緊張するんですー!」



あの世の住人の緊張って、なんかよくわかんないなぁ。


私はキョロキョロと建物内を見回す。

華美な装飾こそないが立派なものだ。自然と背筋が伸びる雰囲気を醸し出している。


閻魔庁という建物はよっぽど広いようで、十数分階を移動しては歩くを繰り返す。



「あの、後どれくらい歩くんですか?」

「そうですねぇ、あと10分くらいかな。」

「ぇえー…?」



正直この落ち着かない空間を長時間歩くのは疲れる。

審判を受ける前に疲弊してしまっては元も子もなかろうに。


そんなことを考えながら歩いていると、目の前に一際大きいエレベーターがある。

エレベーターの前には係員のような人がいて、こちらに話しかけてきた。



「お名前を伺います。」

城崎綾乃(しろざきあやの)です。」


「城崎綾乃様ですね。このエレベーターで最上階までお上がりください。」

「ありがとうございます。」



ユリさんが若干ぎこちない声で応答する。

そのまま私たちはエレベーターに乗り込んだ。



「いいですか綾乃さん。このまま審判会場に向かいますから、いい子にしといてくださいよ。」

「はーいわかりましたよー。」




エレベーターが最上階に到着する。

扉が開き、赤い絨毯(じゅうたん)の敷かれた廊下が広がる。


(なんか…小6の時に行った国会議事堂思い出すなぁ…。)


廊下はかなりしんとしていて、絨毯を踏む足音だけが響いた。



突き当たりに大きな扉がある。

扉の前にはドアマンのような青年が立っていて、ゆっくりと口を開いた。



「案内人は、この者の亡者番号と閻魔帳を提出してください。」

「はい。亡者番号89935番城崎綾乃です。案内人は役人番号973番ユリが務めました。」


(んん?)


亡者番号やら役人番号やら、今まで聞いたことない単語が並ぶ。

というか閻魔帳ってなんだよ。

私が双方の顔の間で視線を右往左往させてる間に、ユリさんはどこからか数枚の資料のようなものを青年に手渡す。



「亡者番号89935番の閻魔帳です。」

「ありがとうございます。お預かりします。どうぞお進みください。」


(だから閻魔帳ってなんだよ!何それ見たすぎるんだけど!)


思わず叫びそうになるがなんとか堪える。

私はユリさんに手を引かれ、扉を潜った。




扉の先は天井の高い空間になっていた。

ドラマで見た法廷のような部屋に呆気に取られていると、ユリさんにちょんちょんと突かれる。



「綾乃さん早くしないと怒られちゃいます。」

「あ、すみません。」



というかさっきの閻魔帳、見せてもらえないのかな。

そんなことを考えていると、低く通りやすい声が室内に響いた。



「城崎綾乃さんユリさん、どうぞお座りください。」



見ると、確かに目の前に一つ席があるのだが…


(いやこれ、被告人の席じゃん!私が何したんだよー。交通事故で死んだだけなんですけど!)


席の配置的には完全に裁判のそれなので、被告人のところに亡者が座る。

そして弁護士のところにユリさんが座る。

ここで拒むという選択肢はないので、不本意だが座っておく。


ということは、裁判長の席に座っているのが閻魔大王ってことかな。



そこに目をやると、大手レコード会社のオーディション現場にいる審査員みたいな(行ったことないけど)身体からプレッシャーが出てるタイプの人間がこちらを見つめていた。



(うわぁ。こりゃこえぇ。)


私はそっと席に座る。



「城崎綾乃さん、ユリさん、まずは35日間お疲れ様でした。

五七日の審判を担当します。閻魔です。」



なんとなく頭を下げる私たちに、閻魔大王も小さく頭を下げる。



「えー今回はですね。綾乃さんの総合評価と浄玻璃(じょうはり)の鏡を使った審判をします。

よろしいですか?

まずはこちらから、閻魔帳の読み上げをさせていただきます。」


よろしいですかって聞いときながら拒否権ないじゃないか。

そうすると、検察官的立ち位置の女性が立ち上がり、音読を始める。



「氏名は城崎綾乃。没年17歳。2009年8月4日に広島県府中市のクリニックで生まれます。

家族構成は、父圭介(けいすけ)、母(あおい)、弟(なぎさ)です。

死亡日は2026年5月4日。死因は交通事故。シートベルトをつけなかったのが原因と思われます。

生前に目立った悪行はしていませんが、窃盗の前科があります。以上です。」



(前科って言い方やめてよ…)



「綾乃さん、今読み上げた内容に間違いはありますか?」

「間違いないです。」



「窃盗について伺います。何を盗みましたか?」



閻魔大王が検察っぽい人に話を振る。

女性はもう一度立ち上がり、ぺらぺらと喋り出す。



「4歳の6月4日に幼稚園のクレヨンと分かっていながら、私情の理由で肌色のクレヨンを盗みました。

他にも10歳の12月5日に雑巾、12歳の7月11日に白色のチョークを盗んでいます。それぞれ隣のクラスからです。

また、13歳の1月20日に消しゴム、14歳の6月17日に鉛筆を盗っています。双方他者のものと自覚しています。」



(私が喋ることなくない…?)


そう思った瞬間、閻魔大王が私に視線を向ける。



「綾乃さん、今言った内容ですが、その通りですか?」



その通りですか…と聞かれてもちょっと迷う。

窃盗とか言われるけれど、商品を盗んだ訳じゃないし、ちょっと大袈裟すぎるのではなかろうか。



「あってます。でも、盗るという言葉を使うのはいかがでしょう…。」


「そんなにたいそうなものを盗んだわけではないのだから罪に問われはしない…ということですか?」

「そういうわけじゃないですけど……そうです。」



閻魔大王は「わかりました」と言うと、近寄ってきたスタッフに何か耳打ちする。

すると次の瞬間、後方から大きな音がした。


見ると、スクリーンのようなものが垂れてきており、照明がだんだん暗くなっていく。


(まさかこれが浄玻璃の鏡っていってたあれ?)


私は思わず声を上げた。



「あ、あの!これ、なんですか?何するんですか?」

「これから綾乃さんの生前の物事をダイジェストで振り返らせていただき、審判の参考にさせていただきます。」



そんなこともするのかよ…。




上映している内容は、本当に「城崎綾乃人生ダイジェスト版」と言った感じで、

この世に生まれてからの家族との関わり、友人との付き合い、授業の受け方、喧嘩から仲直りまで全て上映される。

いい気持ちのするものではない。




小一時間ほどで上映は終わった。結構癇に障ったところとしては、上映終了後に「はい、わかりました」意外誰も何も言わなかったことだ。

正直、もう帰りたい。



「では、遺族の供養状況について確認しましたので、六道の中でどこに振り分けるのかを宣告いたします。」



(いきなり?!)

私は唾をごくりと飲み込み、手をぎゅっと握った。





『あーーー緊張したぁあー!』


ユリさんと二人で隠世荘の壁にもたれかかる。

疲れが一気に出てきた気がする。


ユリさんがこちらに顔を向ける。



「とりあえずこれで一安心ですね!あと2週間大人しくしてればOKです。」

「そうですかねー。」



あと2週間で現世の記憶を無くしてしまうのは嫌だけど、亡者なので仕方ない。


とりあえず今日は早く眠りたいと思った。






なんか面白い小説大賞があったので、書き下ろししようかなぁなんて呑気なこと考えてます。氷室八弥です。

賞なんてもらえないんですけど、ちょっとやってみたいのでやってみようかなーと思ってます。

なんの大賞に出そうかはお楽しみでございます。

こういうのがいいよーみたいなものがあれば是非是非。

ご意見・ご感想・ブックマーク等喜びます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ