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冥土の旅のご案内  作者: 氷室八弥
五七日
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12/14

(実質)最後の審判に向けて

閻魔庁に参ります。

「(実質)最後の審判に向けて」楽しんでいただけたら嬉しいです。



綾乃(あやの)さん綾乃さん、何だらだらとしているんですかー。次が実質最後の審判なんですから、お勉強の一つくらいしてくださいよー。」


「だぁってユリさん、今までの十王って辛辣なだけで普通の人だったじゃないですかー。」

「いいえ、鬼です。」


私はユリさんと部屋で駄弁りながら菓子を啄む。

腹ばいでだらしなくしていたのだが、一度長座に戻る。



「お勉強っていったって、一体全体何するんですか?今までノー勉だったのに。」

「綾乃さん、高校受験の時面接の練習くらいしましたでしょ?」

「そりゃしましたけど…。」



面接の練習はした。

しかしながら、あの世の審判と現世の受験じゃわけが違うと思う。



「でも、なんで五七日の審判の時だけ練習しなくちゃいけないんですか?どうせなら今までのやつだって練習すれば良かったのに。」

「………。」

「黙らないでくださいよ。」



十王のうち、今まで審判を受けた四人。

その四人の名前を私は聞いたことがなかったが、五七日の審判相手はあの有名な閻魔大王だそうだ。

名前が有名だからといって、いきなりその前に練習するというのも違う気がする。



「別にノー勉でもいいんじゃないですか?今までそれで来たんだし。」



ユリさんはふぅとため息をつくと言った。



「まぁ…確かにそうなんですけど、でも一応挨拶とか審判場への入り方だけ覚えておいてくださいね。」

「何かマナーでもあるんですか?」



私がそう聞くと、ユリさんは一瞬視線を彷徨わせたのち、私を少し上目遣いにしながら言った。



「あるんですけど、綾乃さん高校生でしたよね。だったら中学3年生の時の受験を思い出してください。

あれが完璧な例ですから。」

「…わかりました。」



中学校って、死んだ後にも役立つことを教えてくれていたのか…。

私は生前の中学校のことを思い出す。



(あの時はまともに聞いてない人も多かったっけ。)



たった2年前の話なのに、遥か昔のことを思い出してる気分になる。

その時、横からぽりぽりと軽い音が聞こえてきた。


見るとユリさんが戸棚に入っていたお菓子をむしゃむしゃと頬張っている。



「あー食べてる!そもそも何でうちに上がり込んでるんですか?」



ユリさんは不思議そうな顔をして言った。



「だって、ここってそもそも黄泉平坂の管理地ですし、このお菓子もうちの管轄で配ってるんで。」

「あー。」



なんとなく腑に落ちはした。

だが勝手に人の貯めといたお菓子を貪られては癪に触るので、私も手を大きく広げて菓子を掴むと、口の中へ放り込んだ。





かたんかたんと音を立てながら列車が進んでいく。

私は車窓からどこまでも続いていく雲海を眺めていた。

景色に齧り付く私に、ユリさんが話しかける。



「毎回それ、眺めるの好きですよね。」

「だって、こんな景色、生前じゃ飛行機でしか見ないですから。」

「そうなんですよねー。人間ってこういう景色を普段から眺めてないんですもんねぇ。」



人間じゃないユリさんには、この景色も見慣れたものなのだろう。


電車が静かに止まる。

窓から四七日の時に行ったお城が見えた。



「ここで降りるのは四七日の皆さん方です。私たちはもっと先に行きますからね。」



ユリさんがホームに降り立つ亡者たちを見つめながら言った。

私ははぁいと返事をして、再び電車が動き出すまで待つことにした。




しばらくすると、電車がゆっくりと動き出した。


今日行くのは閻魔庁というところらしいけど、そんなにすごいところなのだろうか。

私は車窓から視線をユリさんに映す。


「ユリさん、閻魔庁ってそんなにすごいところなんですか?」

「すごいですよー。いろんなあの世の部署が集まってますからね。おっかないですよ。」

「へぇ、じゃあユリさんの上司とかもいるってことですか?」



そういうと、ユリさんは明らかにばつが悪そうに顔を背けながら、

「ま、まぁいますけど…」と呟く。

私はふと面白い(?)悪戯を思いつき、ユリさんの顔を覗き込むようにして囁いた。


「ここに来た時から説明が所々雑だったのをチクってあげましょうかー?」


ユリさんの顔から血の気がさぁっと引いていく。

私の肩を掴み、まっすぐに見つめてきた。



「絶っっっ対にっ、言わないでくださいよ!絶対に!私の生死がかかってると思って!」

「いや、あなた生きるも死ぬもないのでは?」

「それとこれとは関係ないのです!」



冗談にならないくらい大変なことを口走ってしまったらしい。

私は「冗談ですって」と誤魔化した。




15分以上走り続けたであろう電車は、首都圏で見るような大きな駅に停まった。


私はユリさんに手を引かれ、電車から降りる。

四七日の時に停まった駅とは違い、こちらはかなり人気がある。


といっても亡者同士というよりビジネスマン的な人たちで、自分が浮いてる気がする。


改札を通り、広い駅構内を速足で通っていく。



「これから閻魔庁に入るですけど、…気を引き締めてくださいね。」

「そんなに気をつけるものあります?ただの都会の駅ビルに見えるんですけど。」


「これから受験会場に行くようなもんです。」

「あーはいはい。」



しばらく駅構内を歩いていると、まさしく駅直結の商業ビルの風潮の佇まいの建物が現れる。

入り口には大きく「閻魔庁」とはいっていた。



「じゃ、行きますよ。」

「はい…。」



だからそんなに怖がることないと思うんですけど…。


そう言いたいのを堪えつつ、私は閻魔庁の仕切りを跨いだ。






もう1年半分終わったなんて信じられないです。氷室八弥です。

今回だいぶ間が空いちゃっいまして。のんびりたらたらとしていたらこうなっちゃいました。遅刻しちゃってすみません。

関係ないですけど今日、徹夜して睡眠不足になる夢を見ました。

あまりいい夢じゃなかったので、今夜は早く寝て挽回したいところです。

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