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冥土の旅のご案内  作者: 氷室八弥
五七日
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輪廻の麓の遊園地

あの世の遊園地の中にある審判場です。審判とも言わないかもですが。

「輪廻の麓の遊園地」楽しんでいただけたら嬉しいです。



閻魔大王の審判から1週間経ち、私はかなり自由奔放に黄泉平坂(よもつひらさか)を歩き回っていた。


五七日までは入れない場所もあったのだが、閻魔庁での審判を通過するとほとんどの場所に入れるようになる。

中でも私が一番入りたかった輪廻(りんね)の輪は、五七日以上の人しか入れなかったらしいので、行くのがとても楽しみである。



(ユリさんはただの遊園地だって言ってたけど、あの世の遊園地ってどんなんなんだろ。〕



私はここ七日間、ほとんど本を読んだり絵を描いたりして過ごしていたので、遊園地に言っていなかったのだが、ユリさん曰く、六七日の審判はそこでやるらしい。


ちなみに私は、六七日の審判を受けつつ遊園地も回ろうと考えている。


次の瞬間、扉を叩かれる音がした。

私は軽い足取りで玄関扉を開ける。



綾乃(あやの)さんおはようございまーす。六七日の審判ですよー。」

「はーい分かってますよー。」



ユリさんは審判の度にこうして迎えに来てくれる。審判じゃなくても入り浸ることは多いけど。

隠世荘も部屋数が多くて大変だろうに。


玄関の扉を閉め、隠世荘を出ると、早速例の観覧車が見える。



「私ももうすぐあれに乗るんですね。」



なんだか寂しい気持ちを抱きながら、私は呟いた。

ユリさんはあっけらかんと答える。



「そうですよ。今日もあれに乗って旅立つからもいますからねぇ。」

「あの、あれに乗って次の世界に行ったら、今までの記憶って無くなるんですか?」

「…いや、それは世界によるかなーと。もちろん地獄道とかの人達は忘れちゃだめですしね。」



確かに。

できれば原生の記憶を覚えていたい私は、少しだけ胸を撫で下ろした。



「でも、いつかは必ず無くなっちゃうものですよ。記憶をリセットするのも仕事ですし。」

「やっぱそうですよね。」



まぁそうだよなと思いながらあの観覧車を見上げる。

あれに乗って、私はちゃんと次の世界に転生できるのだろうか。現世が名残惜しい。



(本当にあの時シートベルトしておけばな…。)



そんなことを考えながら歩いていると、観覧車の麓である遊園地に辿り着いた。

現世と全く変わらない、和気藹々とした雰囲気で、受付のスタッフがにこにこと微笑んでいる。



「こんにちは〜。閻魔帳お預かりします。」

「はいどうぞー。」



どこから出したのか、例の閻魔帳なるものをユリさんがスタッフに手渡す。

スタッフは手際良くそこにハンコを押し、


「次回からはこのハンコを見せれば出入りできますのでねー。」


と言ってきた。

私はユリさんに手を引かれながら言う。



「あの、その閻魔帳って私管轄じゃないんですか?」

「これ、日本語じゃなくてあの世の住人が読む用語で書かれてるんで、読んでも分からないかと。」

「えぇ…?」



別言語だということだろうか。

頭の中がこんがらがっていく。首を傾げる私にユリさんは言った。



「あんまり気にしないでいいですよ。読めないってだけなので。」

「…あっ…そうですかー。」



気にしなくていいんかい。ちょっと中身気になる。


そう思いながら、私は遊園地の門を潜った。




「なんか…普通ですね。」

「だからただの遊園地だってば。」


生前に遊園地には何度も行ったことがあるが、ここまで忠実に現世の遊園地を再現されると不思議な感覚になる。

あの世の遊園地なのだから、もうちょっと変でも良かったんだけどな。



「綾乃さん、まず審判に行って、その後遊園地まわりましょ。」

「審判長引きません?」

「大丈夫です大丈夫です。秒で終わるんで。」



(秒って…。嘘でしょ絶対。〕



口からうっかりこぼれそうになった言葉を必死に飲み込み、私はユリさんに手を引かれていく。


(六七日の審判会場は遊園地の中って本当だったのかぁ…。)




「ここです。」

「ここって…。」


案内された場所は総合案内所だった。

マップをもらったり落とし物を受けっとたりするあそこである。



「ユリさん、ふざけてます?」

「大真面目ですよ?」


「だったらなんで総合案内所なんですか。」

「ここに審判場があるからです。」



そういう話じゃないんだってば。

どこをどう考えてもただの案内所なのだが、ユリさんは「ほらあそこ」と奥の窓口を指差した。

私は身を乗り出して、その窓口を覗き込む。


そこには、「変成王(へんじょうおう)審判窓口」と書かれている。



「えっ、本当にあそこなんですか?」

「えぇ。本当にあそこです。」


「私、あそこに並んで審判を受けるってこと…?」

「当たりです。」

「当たりじゃないでしょ。もっとちゃんとしたところでやらないんですか?」



ユリさんが苦笑いしながら目線を逸らす。

閻魔庁の豪華さはどこへやら…。



わたいはため息をつきながらその窓口に並んだ。


そこまで人は並んでいなかったのですぐに呼ばれた。



「はい、次の方ー。城崎綾乃(しろざきあやの)さんですね。閻魔帳確認します。」

「あ、はい。」



また閻魔帳の出番か。

結構駆使している気がするが、あれには五七日までの審判結果がずらりと載っているらしい。



(結構適当に受けてたけど、あの審判かなり大事だったのかもな。〕



変成王という名前のひっつめ団子にメガネのご婦人は、3分ほど閻魔帳を眺めて言った。



「この転生先に不満はありますか?」

「いえ、ないです。」



これもまた即答だ。

五七日に伝えられた転生先に特に不満も不安もないので、ここは普通にスルーする。

そうすると変成王は「わかりました」と閻魔帳に印を押す。



「じゃあここでの審判は終わりです。また1週間後にここの総合窓口に来てくださいね。」

「…はい…?」



きょとんとしながら私は窓口を出る。


外ではユリさんがにやにやしながら待ち構えていた。



「鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔してません?」

「こんな早く終わるなんて思ってなかったし、本当に秒だったもん。」



砕けた口調で私は閻魔帳をユリさんに手渡す。



「まぁまぁ、早く終わったんだからいいじゃないですか。早いとこ遊園地回りましょうーよー。」

「まぁ…そうですね。」



私たちはアトラクションマップを手に取り駆け出した。


ここはあの世だということを、すっかり忘れていたのは内緒である。




最近おサボり気味になっていて申し訳ないです。氷室八弥です。

活動報告に書こうとも思ってるんですけど、ちょっと小説大賞に応募してみたくなって、そのお話の原稿書いてて遅くなっております。

後々複数公開になると思うのでお楽しみに。

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