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転生ボーナスなし、巻き戻し体質あり。死因がダサい俺は108年かけてダンジョン最下層を目指す  作者: 椎間板ベルビビ


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第四話「ノーキンバルクの幼稚園はジムだった」

 三歳になった。

 体は小さいが、握力は同年齢の三倍。プロテインは毎日五杯。ダンベルは片手で持てる。

 三年間の成果だ。

 ただ——それがノーキンバルクでは「最低レベル」だということを、俺はまだ知らなかった。



 誕生日の翌朝。

 BIGヒロが仁王立ちで俺を見下ろしていた。

「リツよ。明日から幼稚園(ちびさっぷジム)へ行け」

幼稚園(ちびざっぷジム)? 普通の幼稚園じゃなくて?」

「ノーキンバルクに普通の幼稚園はない」

「そうか……」

「ジムだ」

「そうかぁ…」

 隣で尚飛が「バブ(ようやくだな)」と言った。

 三歳になっても、尚飛はまだバブバブ言っている。

 理由は単純だ——筋肉の発達が著しすぎて、言語能力の発達が追いついていないのだ。

 ノーキンバルクではわりとよくある話らしい。

 俺にだけはなぜか伝わる。それはそれで怖い。



◆入学前健康診断(BIG3測定)

 幼稚園(ちびざっぷジム)の入学には健康診断がある。

 ノーキンバルクの健康診断は、問診票も体温測定もない。

 あるのは——BIG3だ。

 スクワット、ベンチプレス、デッドリフト。

 この三種目の合計重量が、そのまま健康状態とクラス分けを決める。

「……普通じゃない。どう考えても普通じゃない」

 会場に着くと、同い年の子供たちが整列していた。

 全員、俺より一回り大きい。筋肉の質が違う。目の色が違う。立ち姿が違う。

「今年の園児も期待できそうだな!」

 係の兵士が叫んだ。

「では、BIG3測定を開始する! まず——縦山尚飛!」


 尚飛が壇上に上がった。

 バーベルを前にして、一度深呼吸した。

 スクワット——

 ドン、という音がした。

 重量計が弾けた。

「……計測不能ってあるの?」

「縦山尚飛! BIG3合計——計測不能! 主席認定!!!」

 会場が沸いた。兵士たちが泣いていた。BIGヒロが天を仰いでいた。

 尚飛は涼しい顔で戻ってきた。

「バブ(次はお前だぞ、相棒)」

「プレッシャーかけるな」


 合田律——俺の番だ。

 バーベルの前に立った。深呼吸した。

 スクワット——ベンチプレス——デッドリフト——

 やった。全部できた。

「合田律! BIG3合計——四十二キロ!」

 静寂が落ちた。三秒の沈黙。

「……最低記録更新!!!」

 会場がどよめいた。

「わかってた。わかってたよ……」

 BIGヒロが頭を抱えていた。尚飛が無言で肩を叩いてきた。

「バブ(気にするな)」

「いやこれでもすごいことだからね?」


【入学時ステータス比較】

合田律 縦山尚飛

BIG3合計 42kg 計測不能

握力 平均の3倍 計測不能

体格 平均的 規格外

言語能力 正常 筋肉に圧迫されている

クラス 最下位組 主席

備考 頑張れ 天才


◆地獄の幼稚園(ちびざっぷジム)、開幕

 翌日。俺は初めて幼稚園(ジム)の門をくぐった。

 同い年の子供たちが、ベンチプレスをしていた。

「この国、本当におかしい……」

 先生——もとい、師範が前に立った。三メートル近い巨漢だ。首がない。肩と頭が直結している。

「諸君、ようこそ幼稚園(ちびざっぷジム)へ! ここでは三つのことを学ぶ!」

 黒板に書いた。

① 鍛える

② 食う

③ 寝る

「以上だ! 質問は?」

「……それだけ?」

 誰も手を挙げなかった。当然のように授業が始まった。


◆時間割

午前の部「BIG3実技」

 三歳児がバーベルを担いでいる。普通に担いでいる。

「前世の幼稚園では、お歌を歌っていたんだけどな……」

 俺は担げなかった。師範が無言でバーベルを一番軽くしてくれた。それでもギリギリだった。

「これは現実なのか……」


昼食

主食 :プロテイン(フレーバー:サーモン風味)

副菜 :鶏胸肉(味付けなし)

汁物 :EAA配合スープ

デザート:プロテインバー

飲み物 :プロテイン

「……全部プロテインじゃないか」

 尚飛は三秒で食べ終えた。

「バブ(うまいな)」

「サーモン風味のプロテインがうまいわけないだろ……」


お昼寝(二時間)

 師範が言った。「成長ホルモンは睡眠中に分泌される。寝ることも鍛錬だ」

「これだけは同意する」

 俺は三秒で寝た。前世でも今世でも、昼寝だけは得意だ。


午後の部・格闘技

 起きたら殴り合いが始まっていた。いや、「格闘技の授業」だ。正確には。

「幼稚園で格闘技……」

 師範が俺の前に立った。「合田律。構えろ」

「……え、俺も?」

「構えろ」

 構えた。次の瞬間、尚飛に投げられた。

「バブ(受け身を覚えろ、相棒)」

「先に言えええ」


座学の時間(ぶら下がり受講)

 教室に入ると、天井からぶら下がり棒が無数に下がっていた。

「諸君、ぶら下がれ」

 全員がぶら下がった。俺もぶら下がった。

「……ぶら下がりながら授業受けるの?」

「理由を教えよう」と師範が言った。「座ると体幹が緩む。一石二鳥だ」

「一石二鳥の使い方が違う……」

 尚飛が片手でぶら下がりながらノートを取っていた。

「なんでそんな馴染むのがはやいの……」


闘気の授業

 師範が言った。「闘気とは、己の内なる筋肉を解き放つ力だ」

「内なる筋肉……?」

「体中に広がった筋肉を縮めて、縮めて——一気に爆散させるイメージだ」

「爆散……」

「目を閉じろ。己の体の中心に意識を向けろ」

 目を閉じた。

 体の中心……筋肉を縮めて……縮めて……

 何もない。

「俺には闘気ないのかな……」

「バブ(焦るな、相棒)」

 目を開けると、尚飛の手が薄く光っていた。

「……もう出てるじゃないか」

「バブ(お前にもあるはずだ)」

 師範が静かに言った。

「合田律。大丈夫だ。お前にこの言葉を贈ろう」

「……はい」

 師範は荒々しく黒板に書いた。

焦りは筋肉を固くする。

「たとえも全部筋肉の話だな……」


◆一日目終了

 帰り道。俺と尚飛は並んで歩いた。

「疲れた……。前世の幼稚園と全然違う」

「バブ(前世?)」

「……なんでもない」

 尚飛は不思議そうな顔をしたが、それ以上聞いてこなかった。

 空が赤く染まっている。プロテインくさい城が見えてくる。

 BIGヒロが門の前で仁王立ちで待っていた。

「リツ! 今日の成果を報告しろ!」

「……疲れました」

「よし! 明日はもっと追い込めい!」

「聞いてない」


 城に戻って、自分の部屋に転がり込んだ。

 天井を見上げる。

「あぁ……こんな毎日が続くのか……」

 筋トレ。プロテイン。格闘技。ぶら下がり。

 毎日毎日、筋肉のことしかない。

「せめて……空いた時間にこの世界の勉強とかしたい」

 六国の仕組み、ダンジョンのこと、創造神が言っていた「最下層の願い」のこと。

 考えることはたくさんある。なのに与えられる情報は筋肉のことだけだ。

「俺、ちゃんとダンジョン攻略できるのか……?」

 天井に、誰も答えなかった。

 尚飛が隣で「バブ(寝ろ、明日も早い)」と言った。

「うるさい」




 でも、目を閉じたら一秒で寝た。


【律の現状・三歳時点】

名前 :合田律(ノーキバルク名:リツ)

年齢 :3歳

前世 :高校生(享年17歳・死因ジャンプ)


■ステータス

体力 :38(+18 プロテイン生活の成果)

攻撃力 : 9(+6 鍛錬の成果)

防御力 : 7(+5 体幹強化)

素早さ : 5(+1 格闘技の授業開始)

魔力 : 3(変化なし)

信仰値 : 2(変化なし)

交渉力 : 3(変化なし)

幸運 :10(変化なし)


■習得スキル

プロテイン耐性MAX :どんな味でも飲める

ぶら下がり :両手で30分可能

BIG3 :42kg(クラス最下位)

闘気 :未覚醒


■現在の悩み

・闘気が出ない

・この世界のことを勉強したい

・尚飛にマウントを取られ続けている

・サーモン風味のプロテインが続いている


■合トレ仲間・縦山尚飛

言語能力 :筋肉に圧迫されバブバブ期継続中

BIG3合計 :計測不能

闘気 :既に発現済み

律との関係 :謎の意思疎通が可能

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