UFOキャッチ
七十年代、Tさんが子供の頃の話。
友達と遊ぶのに夢中になっていて、児童館を出たのは日もくれたあとだった。
雨上がりの道を駆け足で帰るTさんが、ふと空を見上げると、澄んだ夜空にある星より一回り大きい、明らかに星ではない光が右へ左へ動いていた。
「UFOや!」
おりしもUFOブーム真っ只中であり、Tさんはにわかに興奮し足を止める。
光る物体は、長屋の屋根の上をホタルのように漂っていたが、ピタリとその動きを止めた。
曰く、Tさんのことを見つけたようだったという。
しばらく一方的なにらみ合いのようなものを続けていたが、Tさんはあることに気づいた。
「近づいてきとる!」
先程より輪郭がはっきりしている。
Tさんは胸踊った。僕もテレビで観た甲府の子たちのように宇宙人に会えるかもしれない。あるいは介良の子たちのようにUFOを捕まえられるかもしれない。*注釈
光はどんどん近づいてきて、やがてTさんにも大きさがはっきりわかる程度の距離になった。
ドッヂボール程度の大きさだと思った。速度も友達の投げる球よりぜんぜん遅い。
捕まえられる! とTさんは確信した。
物体は捕球の構えをとったTさんの胸へ一直線に飛び込んできた。
いまだ! と物体を抱きしめたTさんの腕の間をすり抜けて、足元の水たまりにバシャリと落ちた。
水しぶきを浴びて思わず飛びのいたが、確かに落ちたはずの物体はどこにもなくなっていた。
後には油の浮いた水たまりしかなかったという。
*70年代にあった甲府UFO事件と介良UFO事件のこと。




