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マルタン王国の魔女祭  作者: カナリア55
マルタン王国

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テラスにて 2

「二人とも、ちょっとこちらへ」


 エリスに呼ばれ、テラスに残っていたトマと、エリスと一緒にやってきたローラが進み出た。


「すぐ戻るから、二人ともはずしてちょうだい」

「ダメです、エリス様」

「陛下に命じられましたので、エリス様を残してここから動く事はできません!」

「陛下にはわたしがちゃんと話すから、大丈夫よ。せっかくの夜会なのだから、二人でダンスでもしたらいいわ」

「そんなわけにいきませんよ!」

「そうです、エリス様! わたくしはここでお待ちします!」


 揉めている女性の方に、シャルロットは見覚えがあるような気がしたが、『マルタンの貴族なんて、知っているわけないわ』と思いなおした。 


 結局、二人は少し離れ、テラスの入り口で待機する事になり、エリスが自分の正面に立つと、シャルロットはニヤリと笑いながら口を開いた。


「本当に、生きているなんで驚きましたわ、お姉様。なんて悪運が強いのかしら」

「悪運ではないわ。わたしは今、ガルシアにいた頃よりもずっと幸せですもの。それよりもシャルロット、あなた、ブロケット国のレースを侮辱したというのは本当なの? そのせいで、ブロケットとの交易が停止してしまったと聞いたわ」

「ええ。でも、本当の事を言ったまでよ。今時ブロケットのレースなんて古臭いもの、流行らないわ」

「伝統と流行を一緒に語るなんて、間違いよ。それにブロケットとの取引は、レースだけではないのよ? 良質の塩を生産しているし、ガルシアは絹や砂糖を買ってもらっているでしょう? 今すぐブロケットのアナスターシャ姫に謝罪しなさい。今ならわたしが間に入ってあげられるから。さあ、行きましょう」


 しかし、シャルロットは座ったまま動こうとしなかった。


「……その件は、お姉様にお任せしますわ」

「……なにを、言っているの?」

 

 ニヤニヤ笑うシャルロットに、エリスはキュッと眉を寄せた。


「貴女が謝らなくて、どうするの。ガルシア帝国の皇后となる者が、帝国に損失を与えるなんて」

「皇后には、ならないかもしれないわ」

「えっ?」

「だって、フェリックス様が、わたしの事を気に入ったらしいの。ごめんなさいね、お姉様。また、お姉様のものを取ってしまって」

「…………」

「やだ、そんな怖い顔しないで。だってしょうがないじゃない。向こうが勝手に、わたしに好意を持つんだから」

「……そんな戯言を、信じろと?」

「戯言なんかじゃないわ。だって、ダンスの時にやたらと身体を触ってきたし、ここでお話ししているときは、ずっとわたしの胸を見ていたし。そうそう、結婚はまだしていないのだろうと、改めて確認されたわ。そして、ドレスを贈って下さるそうよ」


 僅かにだが、エリスの目が動揺し揺れたのを見逃さず、シャルロットはクスクスと笑った。


「ここの特産の藍染のドレスだそうよ。お姉様が着ている、それと一緒でしょ? 地味なお姉さまには似合っているけど、わたしは地味で好きじゃないのよね。でも、フェリックス様がどうしても、っておっしゃるのだから、着てあげてもいいわ」

「…………」

「ねえ、わかったでしょう? フェリックス様は、わたしの事が好きなのよ。だから、わたしがこの国に残って、フェリックス様と結婚してあげる。お姉様は、アレクシ様とガルシアに戻ればいいわ。そして、大切なガルシアの為に、精々努力すればいい。喜びなさいよ。大切なアレクシ様を、返してあげるんだから」


 そう言うとシャルロットは席を立ち、笑いながら室内に入って行った。


 

ガルシア帝国の事を放っておけないエリスの厚意を、この妹はっ!

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