祝祭
花が咲き乱れる美しい季節。
マルタン王国は歓喜に満ちていた。
若く勇敢な王の戴冠式と、美しく慈悲深い王妃を迎える婚姻の儀が執り行われるからである。
式の数日前から、王宮に続く広い路の両側には露店が並んだ。
王家からの振る舞い酒を手に、揚げ物や、肉、魚の焼ける匂いを漂わせた食べ物の露店に並ぶ人々が、笑顔で会話をする。
「この酒は、俺達には甘くて弱すぎるな」
「ああ、女達にゃあいいだろうがな。串焼きを買ったら、酒を買いに行こうぜ」
「あんたら! 飲みすぎんじゃないよ! めでたい日に酔ってケンカなんてしたら、牢に入れられるよ!」
「わかってるよ、ちょっとだけだって……って、おかみさんも酒飲みながら肉焼いてるじゃねぇか」
「ハハッ! 舐める程度だよ! だってお祝いだからね! 王様がくださったお酒は飲まなくちゃ!」
食べ物の匂いや煙が少し落ち着いたところでは、マルタン国王特産の絹や染物、小さな宝石を使ったあまり高額でないアクセサリー等を扱う店が並んだ。
「さあこれは、魔女姫様が使っているのと同じ香油だよ! これを使えば、ツヤツヤ、サラサラの髪になるよ!」
「藍染のワンピースはいかがですか? 魔女姫様が視察で街にいらっしゃったときに着ていたのも藍染でしたよ! お財布に優しい、スカーフや小物もありますよ! 奥様へのお土産にいかがですか?」
子供達が嬉しそうに列をつくっているのは、色とりどりのアメを売っている店だ。
「魔女姫様が食べてくれたのは、うちのアメだよ! さあさあ、子供にはタダであげるから並んで並んで! 大人は家で待ってるお子さんのお土産に買っておくれ!」
見渡せるだけでも三軒のアメ屋が『うちのアメを食べた』と言ってアメを配っているが、子供達にとっては大歓迎だろう。
大人たちも、笑いながら『せっかくだから土産に』と買い求めている。
「もう一年も前に王位にはついていたんだけどね、国外に向け、盛大にその事を知らしめるための儀式なんだと。準備に時間をかけた分、盛大に執り行われるそうだよ」
「そして、結婚式! あの魔女姫様が、ようやくお妃様になるんだ、嬉しい事だよ」
「この揚げイモだって、魔女姫様が種芋を用意して下さって栽培したイモだそうだ。ほら、あそこの店で売ってるよ。美味いから食った方がいいよ」
「これまでも、学校を建てて子供たちにパンを配るようにしてくれたり、孤児院の整備をしてくれたり、いろいろしてくれてるんだ」
「あの方は立派な方だよ。外国人ったって、これだけこの国の事を考えてくれているんだから、そんなの関係ないね」
「学校で字を教えてもらったの! 名前書けるんだよ! 書いてみせようか?」
王都は祝福ムードに包まれ、地方から国民が集まってきていたし、国外からの客も多く、式典に出席する各国の使節団も続々と王宮に到着していた。
お祭り騒ぎ!




