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マルタン王国の魔女祭  作者: カナリア55
ガルシア帝国

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落胆

「馬鹿な子は、使い物にならないわ。賢いエリスの方がいいに決まっているじゃない。それに可愛いって言ったって、シャルロットは化粧が濃いだけ。エリスの方が美人よ。あの子はわきまえていたから、質は良くても地味なドレスを選んでいたし、化粧も薄かったからそれほど華があるようには見えなかったけれどね」

「……母上は、エリスよりもシャルロットの方がお気に入りかと……」

「そんな事ないわよ。でもまぁ……ほら、エリスは黒髪だったじゃない」

「えっ?」

「アレクシがせっかくわたくしと同じ金髪なのに、エリスとだと、子供は暗い色になってしまうでしょう? その点シャルロットは金髪だから、生まれてくる子も金髪になるわ。それくらいかしらね、あの子のいいところは」

「そんな……」


 アレクシが言葉を失っていると、部屋の扉が叩かれた。


「皇后陛下、宝石商が参りましたが、いかが致しましょう」

「ああ、そう! すぐ行くわ。じゃあ、わたくしは失礼します。シャルロットよりも大きな宝石を着けなければ、皇后として恥ずかしいものね」


 そう言って軽い足取りで部屋を出て行く母親を見送りながら、アレクシはひどく落胆していた。


『母上は、シャルロットの方を気に入っていると思っていたのに……謝罪しなければ会う気もないなんて……僕が、シャルロットに言って、母上に謝罪させなきゃいけないのか? そんなの……』


「アレクシ、あれでも今のシャルロットよりはだいぶ良かったぞ」


 急に言われアレクシは戸惑ったが、自分の表情、態度が、母親に対して不満を持っているように見えたのだと理解した。


「目立ちたがり屋で我が儘な所があるが、人を引き付ける魅力はある。間違っても、外交の場で国賓を侮辱するなんて事はしなかった。今のままでは、シャルロットは帝国にとって害にしかならん。今更婚約者を変えるわけにはいかないのだから、今のうちにシャルロットを教育するしかないが……」


 皇帝は、大きくため息をついた。


「お前を信頼して婚約を許したのだ。どうにかしろ」

「…………」

「ルロワ侯爵にも話はしたから、親としての指導はするだろう。……全く、姉妹でああも違うとはな。……もう下がっていいぞ」

「はい。失礼致します」


 そう言って、部屋を出ようとしたアレクシを『そうだ、ちょっと待て』と皇帝は呼び止めた。


「お前、あの指で机を叩く癖、直っていなかったのだな。落ち着きがなく見えるぞ」

「申し訳ありません、気を付けます」


 そう答えて自室に戻りながら、アレクシは少年時代にエリスに言われた事を思い出していた。


『アレクシ様は何かが上手くいかなかったり、イライラしたときに指をトントンさせますけど、皇帝になる前に直さなければ、余裕が無くて、焦っているように思われちゃいますよ。そうだ、これからアレクシ様がトントンしたら、わたしが膝に手を置いてお知らせしますね』


『……なんでもかんでも、エリスエリス。エリスがいなけりゃ、僕は何もできないのか? エリスがいた頃は、誰も何も言わなかったのに……いやむしろ、背が高すぎるとか、女だてらに剣を習ってとか、あんなに強いと怖くないですか、とか、失礼な事ばかり言っていたじゃないか。それを今になって、素晴らしい方だったとか、シャルロットとは全然違うとか言い出して。マルタンが引き渡せと言ってきた時だって、処刑される事がわかっているのに、皆すぐに賛成したじゃないか。誰も反対しなかったくせに今になって……もう、エリスはいないのに……今更、そんな事言ったってどうしようもないのに……』

 

 アレクシは、心の底から落胆していた。

 

他人の無責任な言葉に憤慨しているけれど、決めたのは自分。

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