マルタン王国の状況
新しく入れてもらった温かいお茶を飲みながら、さりげなくフェリックス陛下を見る。
……なんだか、悩んでいるように下を向いていらっしゃるわ。
わたしも混乱しているし……。
この部屋に来てから、フェリックス陛下に言われた事を思い出してみる。
『敵国の王と結婚するのは嫌かもしれないけど、ちゃんと和議も結んだし』
『俺は結婚したら、他の女性とどうこうする気は全くないし、側妃は置かないと約束しよう』
『きちんと書類を作成しよう。そうしたら安心して結婚できるだろう?』
……もしかして、フェリックス陛下はわたしと結婚しようとしているの?
いえ、そんな事ありえないわ。
美しく可憐、とも言っていたけれど、そんなわけ……、
「あー、何か、誤解があったようだが」
頭をかきながら、フェリックス陛下は顔を上げた。
「はい、陛下」
「私は貴女を、王妃として迎えたいと思っている。決して、処刑しようなどと思ってはいない」
……そんなわけがないと思っていた事が、あったようだ。
「ですが、わたくしは、マルタン王国の王を手にかけた者です。そのような者が新王と結婚するなど、ありえない事かと」
「あー……その辺は、まあ、大丈夫なんだ。兄は、あまり良い王とは言えなかったから……」
そしてフェリックス陛下は、現在のマルタン王国の状況について教えてくれた。
フェリックス陛下の父親である先々王は、華やかな事を好み、王宮の改築や日々の贅沢の為に、国民に重税を課していたという。
王が亡くなり、次の王となった兄上様は、更に豪遊をし、酒と女性を好み、政には全く興味がなかった。
毎晩のように王宮で催される、豪華な夜会、舞踏会。
王に気に入られれば能力に関係なく重臣となれたため、貴族達は王に取り入ろうと、珍しい物を差し出し、美しい女性を送り込んだ。
そのうち、華やかな夜会と多くの愛人達に使用する費用は莫大になり、国費を圧迫するようになった。
国の整備や慈善事業は後回しにされ、民は貧困に苦しみ、どうにもならなくなったその対策として、他国への侵略が行われた。
元々、好戦国であったマルタン王国は、もっともらしい理由をつけて周りの小国と戦争をし、吸収していった。
しかし、戦によって国は潤ったが、甘い汁を吸ったのは一部の貴族だけで、民の暮らしは良くならなかった。
国民は戦に駆り出されて大勢亡くなったし、貴族の多くは相変わらず、自分の私腹を肥やす事にしか興味がなく、自分の領地の民に更に税を掛ける事しか考えていなかった。
国民の、王に対する感情は、決して良いものではなかった。
戦争は駄目。




