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マルタン王国の魔女祭  作者: カナリア55
エリス・ルロワ

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16/79

驚愕

「あー、んっ、んっ」


 考えこんでいると、フェリックス陛下が咳ばらいをし、わたしは慌てて陛下を見た。


「さっきサミュエルに聞いたが……エリス嬢は、死を覚悟しているようだとか……」

「はい」


 わたしはフェリックス陛下を見つめ、返事をした。


「ガルシア帝国を出た時から、覚悟はできております」

「……そうか……エリス嬢は、何歳だったか」

「十八でございます」

「十八で死ぬとは……」

「これも運命でしょう」


 そう、運命なのだ。

 仕方のない事、なのだ。


 フェリックス陛下は、深い憐みのこもった目でわたしを見つめた。


「皇太子の婚約者だったとか?」

「はい。幼き頃より、そのように決められておりました」

「愛していたのだろうな」

「そのような時もございました」

「今は、違うと?」

「……お役に立てれば、とは思っております」

「それで、皇太子が戦場から逃げる間の時間稼ぎを?」

「ガルシア帝国の皇帝となられるお方です。戦死するわけにはまいりません」  

「だからといって、婚約者をおとりにするか? 女騎士が率いた部隊が攻めてくると、マルタン軍にわざと情報を流したふしまであるんだぞ?」

「わたくしの代わりはおりますので」

「そなたの妹に、皇太子は入れ込んでいるとの噂も聞いたが、本当の事か?」

「…………」


 矢継ぎ早の質問に、わたしはとうとうだまり込んでしまった。

 いくら本当の事とはいえ、他国の王にまで言われると……。


「そんな男に操をたて、死を選ぶというのか?」

「……?」


 苛立ったようなその言葉に、わたしは不思議に思い、フェリックス陛下を見た。


「そんな男、もう忘れたらいいじゃないか。そもそも貴族の結婚なんて政略結婚がほとんどだし、そりゃあ敵国の王と結婚するのは嫌かもしれないけど、そんな男よりはずっといいと思うが?」


 そんな男よりずっといい、とは、誰が?


「ちゃんと和議も結んだし、そもそも、先に攻めてきたのはガルシアの方だし」


 ええ、確かにそれは……。


「俺は結婚したら、他の女とどうこうする気は全くないし、側妃は置かないと約束しよう。君が王妃。それ以外無し!」

「…………」


 何を、言っているのだろう。

 聞こえてはいるものの、頭には入らず通り過ぎていく感じだ。


「そうだ、きちんと書類を作成しよう。そうしたら安心して結婚できるだろう?」

「へ、陛下、申し訳ございませんが、その、仰ってる意味が……結婚、とは一体……」

「えっ? あれ? ガルシアと言い方違うのか? 婚姻? 伴侶? 皇后になって欲しいって言えばわかる」

「ちょ、ちょっとお待ち下さい」


 陛下の言葉を遮るなど、してはいけない事だけれど、わたしは思わず声を上げた。


「あの、わたくし、先王を殺害した罪で処刑されるために、マルタン王国に呼ばれたのではないのでしょうか!?」

「え? ええっ!?」


 フェリックス陛下が大きな声を上げて立ち上がった時、扉がノックされた。


「誰だ!」

「サミュエルです。大至急ご報告したい事が」

「入れ!」


 扉が開かれ、慌てたようなルグラン侯爵が入って来ると、フェリックス陛下は大きな声で『サミュエル!』と言った。


「サミュエル! マルタン王国との交渉の時、エリス嬢について何て言ったんだ?」

「何て、って……え、どうでしたかね……『エリス侯爵令嬢をマルタン王国に引き渡すなら、賠償金は減額する』とかでしたか……」

「新王の妃として迎えたいとか、そういう事は」

「それは、言いませんでしたけど……いや、どうせあちらは拒否してくるだろうと思って軽く言ったら『解かりました』って即答されて……そういや、どうする気だ、とか聞かれなかったから答えてないか……って、それよりも、怪しい男女を捕えたんです。城に忍び込んでいて……おそらく、エリス侯爵令嬢の関係者かと……」

「わたくしの!?」


 更に驚き、わたしは立ち上がった。



どういう事!?


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