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マルタン王国の魔女祭  作者: カナリア55
エリス・ルロワ

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ティータイム

 ……一体、どういう事なのだろう。

 目の前のテーブルに、色とりどりのお菓子が並べられていく。

 真っ白なクリームで飾られたケーキ、フルーツが沢山乗ったタルト、キラキラ輝くゼリー、ナッツの入ったクッキー、バターの香りがする焼き菓子、ゆで卵や燻製肉が挟まれたパンまである。


「日程上、昼食の時間をとれなかったようなので用意させた。飲み物は、お茶でいいだろうか」

「…………はい」


 混乱しつつ、わたしは頷いた。

 けれど、とてもじゃないけど、何も喉を通りそうにない。

 俯き、膝の上に乗せた自分の手を見つめていると、


「気に入らなかっただろうか。それなら別の物を用意させるが……あ、毒など入っていないぞ。ほら」

 フェリックス陛下は、わたしの目の前にあったタルトをヒョイと指で摘み、食べてみせた。

 お行儀は良くないが、親しみがもてる。

 わたしより年上だろうけれど、少年のような軽やかさがある。


「お茶も入れ直させよう」

「い、いえ、このままで大丈夫です、いただきます」


 そんなに気遣っていただくわけにはいかない。

 わたしは慌ててカップを持ち、まだ十分温かいお茶を口に運んだ。

 温かさと良い香りに、少し気持ちがほぐれる。


「……美味しいです」

「それは良かった。……えー、ところで、そのドレスだが……」

「はい」

「寸法が、合っていなかったようで……いや、それ以前に、古いデザインの物のようで……悪気はなかったのだ、決して。ただ私は、あまりそういう事には詳しくなくて……」

「い、いえ……ご用意下さり、有難く思っております」

「ん、そうか……」

 頷き、そして目を逸らして黙ってしまった。

 

 ……お優しい方なのだろう。

 すぐさま投獄すればいいだろうに、このようにもてなしてくれるなんて。ドレスも、どうやらわざとではないらしいし。


「わたくしのような者のために、ありがとうございます。こちらも、いただきます」

「ああ、食べてくれ。口に合うといいのだが」


 最後のお菓子になるかもしれないと、わたしは目の前のケーキに手を伸ばした。

 甘いクリームに、フワフワのスポンジ、甘酸っぱいフルーツ。

 ガルシア帝国で食べていたどのケーキよりも美味しく感じられた。


「……とても、美味しいです」

「それは良かった。ああ、夕食も、今日は豪勢な物を用意するように命じておいたから、楽しみにしていてくれ」

「夕食……」

「ああ。ん? もしかして、長旅で疲れているのか? 今日は早く休みたいか? それだったら無理に一緒に食事をとらなくてもいい。これからいつでも一緒に食べられるし」

「これから、一緒に?」


 ……どういう事だろう。

 処刑は、しばらく先という事だろうか。

 いや、そうだとしても、一緒に食事をするなんて事は無いはず。

 わたしは投獄され、そのうち処刑されるのだから。

 いくらなんでも、処刑までの間、一緒に食事をするなんて事は……ありえないでしょう。



なにか、様子が……?

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