ティータイム
……一体、どういう事なのだろう。
目の前のテーブルに、色とりどりのお菓子が並べられていく。
真っ白なクリームで飾られたケーキ、フルーツが沢山乗ったタルト、キラキラ輝くゼリー、ナッツの入ったクッキー、バターの香りがする焼き菓子、ゆで卵や燻製肉が挟まれたパンまである。
「日程上、昼食の時間をとれなかったようなので用意させた。飲み物は、お茶でいいだろうか」
「…………はい」
混乱しつつ、わたしは頷いた。
けれど、とてもじゃないけど、何も喉を通りそうにない。
俯き、膝の上に乗せた自分の手を見つめていると、
「気に入らなかっただろうか。それなら別の物を用意させるが……あ、毒など入っていないぞ。ほら」
フェリックス陛下は、わたしの目の前にあったタルトをヒョイと指で摘み、食べてみせた。
お行儀は良くないが、親しみがもてる。
わたしより年上だろうけれど、少年のような軽やかさがある。
「お茶も入れ直させよう」
「い、いえ、このままで大丈夫です、いただきます」
そんなに気遣っていただくわけにはいかない。
わたしは慌ててカップを持ち、まだ十分温かいお茶を口に運んだ。
温かさと良い香りに、少し気持ちがほぐれる。
「……美味しいです」
「それは良かった。……えー、ところで、そのドレスだが……」
「はい」
「寸法が、合っていなかったようで……いや、それ以前に、古いデザインの物のようで……悪気はなかったのだ、決して。ただ私は、あまりそういう事には詳しくなくて……」
「い、いえ……ご用意下さり、有難く思っております」
「ん、そうか……」
頷き、そして目を逸らして黙ってしまった。
……お優しい方なのだろう。
すぐさま投獄すればいいだろうに、このようにもてなしてくれるなんて。ドレスも、どうやらわざとではないらしいし。
「わたくしのような者のために、ありがとうございます。こちらも、いただきます」
「ああ、食べてくれ。口に合うといいのだが」
最後のお菓子になるかもしれないと、わたしは目の前のケーキに手を伸ばした。
甘いクリームに、フワフワのスポンジ、甘酸っぱいフルーツ。
ガルシア帝国で食べていたどのケーキよりも美味しく感じられた。
「……とても、美味しいです」
「それは良かった。ああ、夕食も、今日は豪勢な物を用意するように命じておいたから、楽しみにしていてくれ」
「夕食……」
「ああ。ん? もしかして、長旅で疲れているのか? 今日は早く休みたいか? それだったら無理に一緒に食事をとらなくてもいい。これからいつでも一緒に食べられるし」
「これから、一緒に?」
……どういう事だろう。
処刑は、しばらく先という事だろうか。
いや、そうだとしても、一緒に食事をするなんて事は無いはず。
わたしは投獄され、そのうち処刑されるのだから。
いくらなんでも、処刑までの間、一緒に食事をするなんて事は……ありえないでしょう。
なにか、様子が……?




