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マルタン王国の魔女祭  作者: カナリア55
エリス・ルロワ

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12/79

黒い魔女

 マルタン王国。

 元は小さな王国だったが、戦争により領土を広げていき、現在はガルシア帝国に次ぐ大国。

 特産品は綿や絹の織物と酒、宝石。

 海に面した領土もあり塩も採れる。

 農作地も充分あるが、近年は戦争のせいで食糧不足ぎみだという。




 王都に入ってすぐ、数十人の兵達と合流した。


「この者達は、先の戦で手柄を挙げた者達で、ここから王宮まで同行させます。一度凱旋式は済ませていますので、あまり人は集まらないと思います。貴女の護衛も兼ねていますので、よろしいですか?」

「はい、もちろんです」


 わたしは、彼らが打ち倒した帝国の象徴という事なのだろう。


 マルタン王国の王都に来たのは初めてだ。

 これまでの村はガルシア帝国の田舎とそう変わりはなかったが、王都は違う。こちらの方が発展して、栄えているようだ。

 石だたみの広い道路の両側に煉瓦造りの建物が並ぶ、美しく整えられた街。

 広い公園には大きな噴水や銅像が見えた。

 王宮へとつながる大通りの両端には、大勢の民がこの行進を見るために集まっていて、馬車の中でも歓声が大きく聞こえた。

 マルタン王国の旗を振り、老若男女、皆笑顔で心から勝利を喜んでいるのがわかった。


 しばらく進んだところで、馬車が止まった。

 何か嫌な予感がしつつ、息を殺して様子を覗っていると、


「申し訳ありませんが、馬車から降りてもらえませんか?」


 馬車の扉が開かれ、ルグラン侯爵が言った。


「集まった国民達が、貴女の姿を見たいと騒いでまして……周りを兵達で囲みますので、安全は私が保障します」


 そうよね、馬車の中に隠れっぱなしというわけにはいかないわよね。

 みんな、わたしを見て罵りたいはず。

 だって、国王を殺した女なのだから……。


「わかりました。歩いて王宮へ向かえばいいのですね」

「あ、いや、たまに降りて姿を見せるだけでいいで」

「いいえ、大丈夫です。鍛えておりますので、歩けます」


 そう言って馬車から降りると、一瞬、それまで響いていた歓声が止まった。

 そして間もなく、ザワザワし始める。


「あれが、ガルシアの黒い魔女か?」

「思ったより普通だな」

「あんな華奢な女性が、王を殺したのか?」

「やっぱり何か、魔法でも使ったんだろうか」

「そんなのデタラメに決まってんだろう」

「あのドレス、どうなんだ?」

「似合ってないわね。それに、古いデザインだわ」

「フェリックス陛下が用意したって聞いたけど……」

「ああ、じゃあ、仕方ないな。可哀そうに、あんなの着せられて」

「もう少し、まともなドレスを用意してあげればいいのにねぇ……」


 そんな声が、聞こえてきた。

 ドレスはともかく『ガルシアの黒い魔女』か……。

 そんな風に呼ばれていたとは知らなかったけれど、王殺しの女にはピッタリの異名だと納得した。


知らぬ間に『黒い魔女』との異名がつけられていました。

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