新たな仲間たち
昇降口に入り、各々下駄箱に靴を入れる。
上段にあったスリッパに履き替えると、校舎の中を進んで行った。
外見同様、校内も学校そのものだった。
超緑化現象前の建物をベースしていることもあってか、デジタルで管理されたガーデンの建物と異なり、一昔前の造りが残っているように思えた。
「えーと、2………で、3………、とあった」
階段と廊下をしばらく進み、一行は三年三組の教室の前で足を止める。どうやらここが集合場所のようだ。
僅かにだが、中から話し声が聞こえる。北部チームは既に着いていると言っていたし、おそらく、その声だろう。
前から来たため、まだ教室の中は見れていない。
今更になって妙な緊張感がわいてきた。
そんな春樹のことはお構いなしに、杏奈はドアを開ける。
「おぅ、邪魔するぞー」
「お、お邪魔しま……す…………」
杏奈に続いて春樹たちも中に入っていく。ひなきも一緒に入ろうとしたのだが、さすがにこの爆弾リュックを背負ったまま入るの難しかったようで一旦、廊下に降ろした。
入ってくる春樹たちに気づき、北部チームはこちらに視線を向ける。
男二人、女一人。春樹たちとは男女逆のチーム編成だった。
三人と目かあった。どう返したらいいかわからず、反射的に春樹は会釈で返してしまった。
杏奈が北部チームに近づいていくと、真ん中にいた眼鏡の男が前に出る。
「三日間、うちの子らが世話になる。いろいろ教えてやってくれ」
「いえ、こちらこそお世話になります」
眼鏡の男は杏奈に軽くお辞儀をする。
「あとこちら、……………………うちの教官からです。今日行けなくてごめん、とのことです」
床に置かれていたクーラーボックスを持ち上げ、杏奈に渡す。中身を開け、確認すると杏奈は目を見開く。
「おっスイカじゃねぇかっ!佐々木のやつ気が利くな。飯の時にみんなで食うか」
喜びの声を上げながら蓋を閉じ、杏奈は全体に連絡する。
「今から30分後に訓練を開始する。校庭の朝礼台前に集合な。その前に、お互いに簡単に自己紹介でもしとけよ。じゃあな」
そう言い残すと杏奈と舞香は出て行ってしまった。
教室のドアが閉まった後、沈黙が支配する。大人二人の足音がやたら大きく聞こえる。襲い来る気まずさに思わず目をそらす。
誰か何かしゃべってくれよ。そう心の中で思い、二人を見る。柚利乃は………ダメだ。こいつ口下手だ。ひなきは…、あー緊張してぷるぷる震えてる。紅花は………シンプルに態度が良くない。く…………仕方ないここは俺が___
「…えっと、じゃあ___」
春樹が口を開いた時、北部チームの女の子がステップを踏みながら、こちらに近づいてくる。
金色の明るい髪。ショートボブの髪先とスポーツウェアのスカート揺らしながら、三人の前にやって来た。
「はじめましてー。叶 美琥でーす。高校二年生。これから三日間よろしくね♪みんなの名前聞いてもいいかな?」
そう聞かれた時、不意に柚利乃と目が合う。
一瞬の逡巡の後、柚利乃は一歩前に出る。
「はじめまして、白梅柚利乃です。このチームのリーダーを務めています。よろしくお願いします」
この柚利乃の挨拶をきっかけに南部チームも順に挨拶していった。名前と学年をそれぞれ言っていき、春樹の自己紹介の際に自分と柚利乃も高校二年生だと伝えると美琥は嬉しそうに両手で握手をしていた。
なんか、めっちゃぐいぐい来る子だな……。
「あ、せっかくだし、ひなきちゃんも握手ね〜」
「え、あ……ありがとうございます」
戸惑いながらもひなきは握手に応じる。
「ふん、騒がしいやつじゃのう。__あむ」
頭上からの声に美琥は顔を上げる。見るとポテチを口に詰めた紅花が見下ろしていた。
「ね?…あなたも剪定者?」
「ふーふん」
ちゃんと喋れない紅花に代わり春樹が紹介する。
「あぁ、こいつは紅花。俺の相棒だ」
「へーまだ小さいのに凄いね。よろしくね、紅花ちゃん♪」
首を倒し美琥はニコっと紅花に笑顔を送る。
「……ん、うむ」
口の中ものを飲み込むと、紅花は軽く返事する。
全員に挨拶を終えたとき、美琥の体がグッと後ろへ下がる。眼鏡の男が美琥の肩を引いたからだ。
「美琥、あまりベタベタとくっつくな」
眼鏡の男が指摘すると、美琥の頬が少し膨らます。
「えーなにそれ、タイチョー。あ、もしかして、彼氏ヅラ?束縛すると女の子に嫌われちゃうよ~」
「お前がそうやって接するからいらん厄介ごとが増えるんだ。少しは自重しろ」
一喝を受け、少し不機嫌そうに「は~い」と美琥は戻っていく。
咳払いをし、眼鏡の男は改めてこちらを向く。
「失礼した。リーダーをしてる花見だ。大学一年。よろしく」
と北部チームのリーダー、花見 幸輔が挨拶をする。
そして、それに続くようにパーマがかった髪のもう一人の男がこちらに近づく。
「どうも、清水 巴久です。歳は幸輔と同じね。よろしくー」
と親指で花見を一度指し、その手を開いて清水は微笑みながらこちらに手を振った。
「詳しいことは後で聞いてくれ。まずは部屋に案内する。須藤は俺たちについて来い。美琥、女子の方の案内は頼む」
「はいはーい。じゃあ、三人とも行こっか!」
美琥に促され、柚利乃とひなきが動き出す。
「我も行くのか?」
「そうだな……………っと」
肩車していた紅花の体を春樹が降ろす。
そして、バッグから紅花の荷物(ほぼお菓子)を纏めたナップサックを取り出し紅花に渡した。
「あんま食べすぎんなよ」
「わかっておるわ」
ポテチの袋のゴミをナップサックに入れると、紐を肩に回す。
「紅花ちゃん、行くよー」
呼びかけられ見てみると教室を出たところで女子三人が待ってくれていた。
「うむ」
三人の下へ小走りで紅花は駆けていった。その姿を見て、遠足の行きを見守る親の気持ちってこんななのかな、なんて事を少し考えてしまった。まぁ、またすぐ会うけど。
感慨にふけていると、花見が動き出す。
「俺たちも行くぞ」
「……っ!はい!」
教室を出た後、花見らに連れられ春樹は校舎の右側へと進んでいく。
「ここだ」
一つ階を降りて二年四組の教室で足を止めた。
「男子は校舎の左側。女子は校舎の右側という話になっている」
出てすぐに別れたと思ったらどうやらそう言う話になっているらしい。
部屋の配置としては先ほどの三年三組の教室を真ん中として、左右に別れた感じと言うことか。
教室の中は、机と椅子を全て取っ払っており予想以上に広々としていた。床には二人の荷物と奥に三人分の布団が置かれていたが、それでも十分だった。
「困ったことがあったら聞いてくれ。もうすぐ時間になる。来て早々に悪いが、すぐに準備してもらっていいか?」
「はい!」
トレーニング用のウェアに着替え、準備を整えた春樹たちは指定された朝礼台の前に集まる。
先に来ていた女子グループと合流し、準備運動をしながら、杏奈たちを待っていた。
「お、全員揃ってるな」
杏奈の声がして顔を向けると校庭の奥からリアカーを引きながら現れた。後ろにはカラーコーンや、ディスクマーカーなどのトレーニング用の道具が乗っていた。おそらく隅にある体育倉庫から持ってきたのだろう。
朝礼台の前に杏奈が立つとその前に両チームのメンバーが並んだ。
「こん中であたしの訓練を受けるのが初めてのやつはいるか?」
「はいはーい」
「あっはい、私もです」
杏奈が聞くと美琥とひなきが手を挙げる。
「よし、挙げた二人。前に出ろ」
そう言われると、二人は列から出て杏奈の前に立つ。
「ん〜と、何かあるんですか?」
首を傾げながら美琥が聞く。
「な〜に、一つ頼み事を聞いて欲しいだけだ」
「頼み……?」
なんだろうとひなきたちが考えていると、杏奈が口もとを緩ませながら、二人の肩を両手でそれぞれ掴む。そして、耳元で囁く。
「一発、殴らせろ」
「………………え?」
「………………え?」




