第160話 意外な所での、繋がり。
「オルゥア!」
けもんちゅが握った金属製の棍棒が、ボクに振り下ろされる。
それに、再びチェーンソーを合わせる!
剣と違って破壊はできなかったけど、高速回転するチェーンソーはビクともせずに火花が散る。
「ヤメロッテ、言ッタゾ!」
「うるせえくたばれ虫野郎が!」
新手の人族が横から回り込んできた!
手には……鋭いナイフ!
マント内部には妖精たちがいるから――もう知らんコイツら!!
速射散弾衝撃波、乱れ撃ちッ!!
「げばぁあ!?」「ぐうあっ!?!?」
けもんちゅ、人族共に勢いよく吹き飛ぶ!
「わかった! わかったからもうやめてくれ! 俺達は消えるからよ!」
最後に残った人族が、両手を大きく広げながら近付いてくる。
『油断するな、こやつ何かを企んでおる……やってやれ』
もう正当防衛は成立しているから――衝撃波ファイアファイアファイアッ!!
「ぐぅうあッ!? て、てめっ……!?」
お腹に衝撃波連打を喰らった人族が吹き飛ぶ――あっ! 背中にナイフ2本隠してた!
ぶっぱしといてよかった……
裏路地広場には、ウンウン唸りながら転がるチンピラが残された。
むーん……追い衝撃波連打!
「めっ!?」「まっ!?」「でっ!?」「ふぉっ!?」
地面を転げ回った4人は、もうちょっと唸ってから失神して静かになった。
よしよし、これでいい。
えっと、たしかバッグのここらへんに~……あったよ! 頑丈なロープが!!
悪い子たちは縛っちゃおうね~……
「あ、あのっ!」
ムン? なんですかおねえさん?
あら~……お狐さんっぽい美人さん! モフモフの尻尾が素敵ですねえ。
「ア、今コイツラ縛ッチャウカラ待ッテテクダサイネ~……ット」
まずは1人目。
とりあえず両手両足をギッチギチに縛っちゃえばいいっしょ~?
『――ぬ、誰かが近付いてくるぞ。数は3人……いや4人か』
なんじゃって!? 新手か!?
とりあえず……面倒臭いから残りの3人は重ねて縛っちゃお! そ~れグルグルグルグル~!!
「――ルーシュカ! 無事かいっ!?」
4人(うち3人はひとまとめ)を山にして縛り上げていると、路地の入口が騒がしくなった。
そっちを見ると――おわぁ!? クソデカサーベルで武装したけもんちゅの皆さん!
なんか、アラビアン的な感じ? の武器だ! 強そう!
そして、先頭にいた恰幅のいいおばさんけもんちゅがまとめ役みたい。
彼女もサーベルを持って、肩で息をしている。
「座長ォ! 怖かった~!」
お狐さん……ラルーシュカさん? がダッシュでそのおばさんに抱き着いた。
座長……ああ、サーカスとか楽団のヒトなんかな。
このお姉さんも踊り子さんみたいな服着てるし。
「何もされてないかい!? アンタがいつまでたっても買い出しから戻らないから心配でねえ!」
「だ、大丈夫! そこの虫人さんが全員一瞬でボコボコにしてくれたから! 大丈夫~!」
あ、よかった即説明してくれて。
後ろに控えるムキムキけもんちゅさんたちがボクをむっさ睨んでたのが……一瞬で解除された!
さっきのチンピラよりも100倍くらい強そうだもん、この人たち。
「ぷはっ……そういうわけだ。近くに衛兵がおらんかった故、こやつをせっついてな」
ヴァルがマントから出てきた……ってことは、この人たちはいい人!
「「「妖精!?」」」
ムキムキけもんちゅさんたちがハモッた!? 息ぴったり!
「そうかい……にいさん、ウチの娘を助けてくれてありがとうねえ」
おばさんが頭を下げてきた。
あっ娘さんだったんだ……お母さんはライオンっぽいけど、イヌ科だから一緒か!
そうすると、後ろの方々も一斉にならう。
「「「ありがとうございます! 虫のダンナ!!」」」
「ふにゃあ、なに、なあにい?」「ピチチ! チュチュン!!」
ボクも大声にビックリしたけど、アカとピーちゃんも飛び出してきた!
「「「増えたァ!?!?」」」
息ぴったり!!
・・☆・・
「おにいさん! 飲んで飲んで!」
「スイマセン……ボク、オ酒ガ壊滅的ニ弱イノデ……」
勧められたお酒をやんわり断って、炭酸水をゴクゴク。
「あんなに強いのにぃ?」
「ハハハ……」
何故ボクはここにいるんだろう。
「おいし! おいし~!」
ハムスターみたいになったアカを見ながら、ちょっとホッコリ。
あの後、クールに去ろうとしたボクは……ライオンさんに捕まりました。
『娘を助けてもらった方をお礼もなしにホイホイ行かせるわけにはいかない』ってね。
いいから! 気にしないで! って言ったんだけど……ムキムキむしんちゅさんたちにそのままわっしょいわっしょい運ばれました。
その後連れてこられたのは……なんか、酒場とライブハウスが合体したみたいなお店でした。
そこのテーブルに座らされて、あれよあれよと言う間に料理やお酒が運ばれて来た。
さっき食べたばっかりだしなあ……と思ってるのはボクだけで、カロリーを魔力に変えて貯金できる妖精たちは問題ないみたい。
現在進行形でモリモリ食べております。
あ、例のチンピラ4人組は衛兵に引き渡されたみたい。
あのお姉さんが武器を抜いてたのを見てたので、問題なくタイーホですわよ。
「あたし、ルーシュカ! おにいさんは?」
「ムークト申シマス、ハイ」
んでんで、ボクのお相手をしてくれてるのは絡まれてた女性。
お姉さんって言ったけど……近くで見ると思ったよりかなり若い。
背が高いのは種族ゆえかもしれないけど、ロロンよりちょっと下くらいの年齢じゃないかな?
ってことはあの連中、中学生くらいの女の子を無理やりその、しようとしてたのか……
ボコボコにして正解でしたな!
「おやびん、もらった、いっぱいもらった~」
「ヨカッタネエ、ヨク噛ンデ食ベンシャイ~?」
山盛りクッキーを抱えてやってくるアカを撫でる。
「えへぇ……はい、おやびんにもあげゆ、あげゆ~!」
すかさず口にクッキーを捻じ込む我が子分!
「メメメモ……オイシイ!」
レーズンみたいなのが入っちょる! アクセントになってて美味し~!
「仲がいいのね、ムークさん! 妖精さんと仲良しなんてとってもいい人なのね~」
「モモモ……ボクハ知ラナイケド、アカハトッテモイイ子デスヨ。ンネ~?」
膨らんだほっぺをつんつん、つんつーん!
「きゃーはは! あははぁ~!」
ボクはどこに行ってもアカがいれば幸せな虫!
『おやぁ~?』
勿論トモさんもね! トモさんも!
「でも……ごめんねムークさん、助けてもらった時、アタシちょっと怖いって思っちゃって……こんなにイイ人なのに」
「イヤー、ショウガナイデショ? 気ニシテマセンカラ、エエ」
実際とっても迫力あると思うし、あの時怒ってたからお目目全部真っ赤だったと思うもん。
そら怖いよ、路地裏の暗闇に光る6つの光球は。
ボクなら悲鳴上げるね、キャーッて。
『むっ……ムークさんはとっても優しいヒトよ! 私を助けて、ラーガリからトルゴーンまで連れてきてくれたのよ~!』
むっくんと言いかけたピーちゃんは、丸く重くなった体で肩に着地。
そこで一生懸命チュンチュン鳴いている。
「うむ、こやつは優しさだけは一級品よ。それ以外はまだまだ若輩者ではあるが……む、この魚は美味いな! 香草の香りがなんとも……ももも、もももも!」
ヴァルはボクを褒めてくれてる……くれてる? けど、途中から魚に夢中になっている。
「「「どうぞ!」」」
さっきのムキムキさんたちは、どうやらコックさんだったみたい。
そろって綺麗なエプロンを身に着けて、料理をバンバン出してくる。
……なんで上半身裸エプロンなのかはボクにもわかんない。
「なんにせよ、アンタはウチの恩人だ! 大いに飲み食いしてくんな!」
ライオンおばさんが背中をバンバンしてくる! 凄い力だ!
「ハ、ハイ……! トテモ美味シイデス!」
「見りゃあわかるよ! アンタ、虫人の男にしちゃあ愛嬌があるねえ!」
厳密に言うと謎虫ですからね~?
ま、今日は夜まで帰らないって言ってるからここでゆっくりしていこうかな……
一の街までそんなに離れてないし、ここってば。
……ム! あれは!
あの神棚的な所にお供えされてる像は……!
「アレッテ、月ノ女神様デスカ?」
「おやムークさん、よく知ってるね? そうさ、あれは月の女神シャンドラーパ様! アタシら楽団の尊い守り神だよ!」
月の民だけじゃなかったんだ!
『シャンドラーパ様は舞踏と楽器の神でもあらせられますので。色々歴任されている神々も多いですよ?』
そうなんだ……よく考えれば弱者救済も兼任されてる方が多かったねえ。
「ボクノ、オ世話ニナッタ方モ信仰サレテイマシテ……」
「へえ、どこの楽団だろうね?」
「アアイエ、旅ノ方デシタヨ。北カラ来タッテ言ッテマシタ」
月の民の話、知ってる人とそうじゃない人がいるんだね。
バッグゴソゴソ……っと。
「綺麗ダッタノデ、自分デモ作リマシタ」
リアル頭身と、SDバージョンをテーブルに置く。
「うわーかわいい! こんなちっちゃいの見たことない!」
「へえ、こっちの大きいのもいい出来じゃないのさ……アンタ、腕っぷしもいいけど芸術の才能もあるんだねえ」
えへへ、好評で嬉しい。
「食事代ニ、コレドウゾ。コウイウモノハドンドン広メタイデスシ……」
「いいの!? わー、ありがとうムークさん!」
「悪いねえ……こっちから金を払いたいくらいの出来だよ」
やめておくんなまし! これ以上お金が増えるのはゴメンでしてよ~!
「おやびん、あげゆ、あげゆ~」
あら? アカが炭酸水を作ってくれたみたい! なーんていい子分なんでしょ!?
「アリガト~! ンガッゴッゴッゴ……ム?」
柑橘系の香りの奥に……アルコールの、気配!
は~……なるほど、どっかで混じっちゃったみたいね! しょうがないか! HAHAHA!
――きゅう。




