第156話 ギョーザ祭のち、エルフさん!
『むっくん! おかえり! おかえり~!』
「タダイマ~……」
孤児院に帰ると、ピーちゃん像(近似値)の上にピーちゃんがいた。
彼女はボクの肩に飛んできて……首を傾げた。
『あら~? むっくん、いい匂いがするわ! ニンニクの!』
おお、わかったのね……バッグゴソゴソ……
「ギョーザ食ベル~?」
『まーっ! 食べるわ! 食べるわ~! ゴーサクちゃんの所ね! 素敵よ~!』
ミライ飯店が誇る持ち帰り生餃子ですわよ。
結局……結局! お食事の代金は受け取ってもらえなかった上にお土産まで! いただいてしまいました!! ボクの完全敗北!!
『本当にお気になさらないでください、従業員も皆納得しておりますし……』と、五代目さんに言われてしまった。
いやらしい話、超儲かっているので大丈夫です……とも。
そりゃあそうなんだろうけどさあ……悪いなあ……
「おや、お帰りなさい皆さん」
イリュシム先生も来たので……バッグゴソゴソ!
「コレ、オ土産デス~……!」
「まあ! あらあら……とってもいっぱい! 五代目さんの所ですね?」
そうです! 『子供たちの分のお土産を買います~!』と言ったら……やっぱりお金を受け取ってもらえなかった分です~!!
「みんなでたべて、たーべてぇ!」
「まあ、ありがとうねアカちゃん」
「んへへぇ、へへぇ」
イリュシム先生に撫でられて嬉しそうなアカ!
「ゴンザさんの依頼もやっていただけて、その上お土産まで……これでは貰いすぎですね」
「イイノデス! オ世話ニナッテオリマスノデ! ノーデ!!」
みんなギョーザをお腹いっぱい食べてくださいな! 美味しいので!
ここの孤児院との関係で、子供たちは何度も食べてるだろうけど……ギョーザは何回食べても美味しいのでね! ね!!
「義理堅い男なのナ」
「でも、それがいい所だって思うな」
「んだなっす! んだなっす~!」
女性陣が何か言ってる……みんな笑顔だから悪口じゃないでしょ!
ふう、これにてミッションコンプリートですよ!
「ぴゃう~!」
あ、ユキちゃんじゃないですか。
おいでおいで~! モフモフさして~!
・・☆・・
「けぷぅ」「はぷう」
お腹をぽんぽこにしたヘレナちゃんと、ミチコちゃんがベンチに転がっている。
持ち帰りギョーザパーティは大好評のうちに終了いたしました。
我ながらとんでもない数だったけど、無事に皆にいきわたったみたい。
お金を払えなかったことが心残りですよ……! ですよ……!
「おいちゃん、ありがと! ギョーザだいしゅき!」
「はじめてたべたけど、わたしもすき!」
「ドウイタシマシテ~」
きちんとお礼の言えるいい子たちですね~!
教育が素晴らしい! この子たちはきっと立派な人になるだろうね!
愛情たっぷりだもんね! ここ!
「イッパイ食ベテ大キクナルンジャヨ~?」
「「はぁい~!」」
いい返事!
「ぴゃう」
おやユキちゃ……でかい!?
ボールみたいになっとる! キミも餃子が好きなようだね……!
「ギョーザハ気ニ入ッタミタイネ~?」
「ぴゃう~!」
ベロがニンニクスメル!
ボクが吸血鬼だったら即死するところだったよ……!
『あ、この世界の吸血鬼はニンニクでどうこうなりませんから』
いるんだ……吸血鬼!
じゅ、十字架とか効く?
『むっくんの場合は魔力オンでぶん殴るのが一番効きますよ』
対抗できるんならいいや……
万物は魔力で殴ると死ぬ、これってトリビアになりませんか?
『常識ですので』
そっか~……
「ぴゃう、ぴゃ~」
しかしユキちゃんのこの鳴き声、癖になりますなあ。
ナデナデ、ナーデナデ。
抱っこしてよしよーし!
「んにゅへへ、えへへぇ」
ほう……瞬時に割り込んでくるとはやりおるな、アカ!
将来が楽しみな我が子分よ……!
「ぴゃ、ぴゃ~!」
「きゃーはは! あはは! あはぁ~!」
ユキちゃんに舐められて大喜びのアカです。
妖精同士、仲が良くて結構ですなあ……
「――ムークさん!」
ムンムム?
この声は――スキアエルフのナラカさん!
門の所からボクに手を振りつつ歩いてくる。
「ドウモ~!」
元気そうだね……あ、よく考えたらあの人は全然怪我してなかった!
無茶苦茶強かったもんね!
「ムークさん、その節は……んん? なんか、姿が変わっとるね?」
近付いてきたナラカさんは、ボクを見て目を見開いた。
あ、そうか……あの頃はまだ進化してなかったから……!
「マア色々アリマシテ。トリアエズ中へドウゾ~」
説明しにくいし、職員さんに言ってお部屋を使わせてもらおうかな。
「ぴゃ、ぴゃ~?」
ユキちゃんがナラカさんを見ている。
「キミノコト、教エテクレタオ姉サンダヨ~?」
「ありゃあ、この子妖精じゃ! あっこにおった子じゃね?」
ボクの腕の中を覗き込むナラカさん。
その胸に、ユキちゃんはピョインと飛び込んだ。
「ぴゃ~! ぴゃう~!」
「おおっ? あは、はっはっは! くすぐったいわぁ! ン~? あんたギョウジャグサの匂いがしよるね? あっはっはっは~!」
へえ、ニンニクってギョウジャグサって言うんだ~?
あ、とりあえず中にご案内せねば~!
・・☆・・
「ぴゃう~!」
「んん~……お日様の匂いじゃあ……元気になってよかったねえ、あんた」
食堂の椅子に座り、ナラカさんはユキちゃんのお腹に顔を埋めてモフモフしている。
いいなあれ……今度やろ!
「ムークさんのお陰じゃね!」
「妖精タチガ頑張ッタノデ~」
ボクだけじゃ、助けても魔力補填とかできんかったからねえ。
「でもムークさんがおらにゃあ、そもそも妖精がおらんかったけえね! 瀕死の妖精に魔力を注ぐっちゅうんは、名うての魔法使いでもぶち難しいんじゃけえ」
「ソウナンデスカ……」
それなら、やっぱり妖精がいてよかったねえ……
『ヴァル様様だねえ……』
『ぬ、何だいきなり』
あ、独り言が念話になってた。
『ああ、今スキアエルフのナラカさんが来てるんだよ。ヴァルのお陰でユキちゃんが助けられたねえって話してたんだ』
『ああ、あの時か』
『ソソソ、頼りになる相棒がいてよかったよ』
『……むっふっふ、わ、わかっておるではないか、お主!』
なんかめっちゃ嬉しそう! ふふふ、ボクもなんか嬉しいや!
「そいでムークさん、ラトナ……あん時助けてもろうた子はすっかり元気になったよ!」
「オー! ソレハヨカッタ! ……ダケド、ソノ、大丈夫デスカ? 拷問トカ……」
あの光景、とってもショッキングだったもん……心の方は大丈夫なんだろうか。
「もう傷は綺麗に治ったよ。あん子、次にオルクラディの連中に会うたら全員挽肉にしちゃるって言いよるよ」
「ソレハヨカッタ……!」
元気すぎる!
逞しいな、スキアエルフさん……!
「じゃけど、すまんねムークさん。あの子もお礼が言いたいって言いよったんじゃけど……今ちょっとアーゼリオンがざわついとってね、そっちに飛んで行ってしもうたんよ」
「構イマセンヨ、元気ダッテワカッタダケデ十分デスカラ」
アーゼリオン……たぶん奴隷解放関係の任務的なアレだろうねえ。
だったら、そっちで思う存分暴れて欲しい。
他種族を奴隷にするようなうんちたちにかける情けは……なぁい!!
ええ! ありませんとも!
ボクの優しさメーターは有限なのです!
『むっくんの優しさメーターは無茶苦茶長いと思いますけどね』
『それな~? あひゃひゃひゃ!』
……シャフさん酔ってる?
『なん~? あーしまだウイスキー5リットルしか飲んでにゃいもーん!』
致死量!?
女神様かドワーフじゃないと致死量ォ!!
「優しいんじゃねえ、ムークさんは。そりゃあ妖精に懐かれるわけじゃ」
「イイ人ニハイイ人返シヲシテルダケデス、ハイ」
「いい人返し! あっはっはっは! そりゃええわ~! あっはっは~!」
ナラカさんはテーブルをポンポン叩いて笑っている。
ユキちゃんがリズミカルに弾んでか~わい~!




