第155話 中華料理、お支払いチャレンジ。
「ちからもち、ちからもち~♪」
「ギャッ、ギャッ~!」
ゴンザさんの走竜……名前はセータカちゃん……の頭に乗って、アカが左右に揺れている。
セータカちゃんは気にならないどころか喜んでいるみたいで、歌うように鳴いている。
例のナントカワームの襲撃は、結局アレで終わった。
その後木こりさん達はバンバン伐採して……現在、こんもり盛られた荷台になっている。
ちょっとした家くらい建てられそうな量だけど、ホントに力持ちですわ……走竜。
前にヤタコさんとこのシュテンちゃんが曳いてたやーつみたいに、荷台に重量軽減の魔法具? かなんかが追加されてるんだろうか。
見た目は異世界トレーラーですよ。
「あんたたちのお陰でかなり楽ができたよ。報酬には色を付けとくからね」
「アリガトウゴザイマス」
ボクの横……御者席のゴンザさんはそう言う……ムムム、この場で謙遜してもしかたない。
ボクだってそれくらいはもうわかるのだ……
『ようやく虫……』
察しが悪いインセクト、むっくんです。
「っと」「ムギーッ!?!?」
肩に着陸され虫でもありまぁす! んもうアルデア!!
「周囲に魔物の影はないのナ」
『ぬくい……ああ、黒い気配もないぞ』
アルデアの母性の谷間にいるヴァルからの追加念話。
そっか、なら安心だね。
「ダソウデス」
「そもそもここいらは元々魔物が少ないんだけどね……森だってそうさ。なにかの災いの前兆じゃなきゃいいんだけどね……」
ゴンザさんが肩をすくめている。
それはボクも嫌だなあ。
アルデアはまた空に上がって、ヴァルはアカの横……セータカちゃんの頭に乗った。
「とにかく帰っちまおう。緊張しっぱなしで肩が凝ったし風呂にも入りてえ」
「イイデスネ、オ風呂~……」
ボクも入りたい!
「ほう、そうか……アンタも風呂好きかい? 三の街にいーい浴場があるんだ。教えてやるよ」
「ホントデスカ!?」
うひょうひょ! 孤児院に帰る前にお風呂に入れる!
「はっはっは、なんだいあんた。報酬の話よりも喜んでるじゃねえか、はっはっは!」
ゴンザさんはおかしそうに笑ってる。
「おふろ! おふろしゅき!」「うむ、風呂は良いな……風呂は」
「ギャルル~?」
同意する妖精たち。
セータカちゃんは不思議そうな顔をしている。
「そうかいそうかい、なんとも素敵な妖精さんたちだ……そうだ、働いて疲れたろう? ムークさん、これをあげてもいいかい?」
ゴンザさんが取り出したのは……黒砂糖みたいな何か。
「スイマセン、アリガトウゴザイマス」
「いいんだよ……はいどうぞ、おあがり」
アカが飛んで行って2人分を受け取る。
「あいがと、おじーちゃ! あいがと~!」
「む、これはすまない。ありがたくいただこう」
お礼を言う2人に、ゴンザさんはとっても嬉しそうな雰囲気を出している。
「こっちこそありがとうだ。妖精に直にお供えできるなんてね……今までも森に入る時にはそれなりにお供えしていたけどね」
とってもいい人……とってもいい人だ!
「あむむい……あまーい、あまい! おいし! おいし!」
「うむ、うまい!」
妖精たちを見るゴンザさんは、とってもいい顔をしているような気がした。
……だってむしんちゅだからね! 表情読みにくいからね!
「ムーク、お風呂いこ! お風呂!」
「ムギギーッ!」
マーヤ! そんなにマントを引っ張らなくても行きますよ! ウギギ~!?
・・☆・・
「ブエエエイ……」
湯気に混じる柑橘の香りがいい……!
「ぷぇええ……ふゆ~……」
洗面器につかまって漂流するアカもお気に召したようだ。
いや~、ゴンザさんお勧めの浴場は最高ですね!
解散してからすぐに来ちゃったよ!
ゴンザさんたちは丸太を製材する仕事があるからって言ってたけど、ボクたちはもう仕事終わったしね!
木がメインの空間で、清潔な上にいい匂いがするし……さらに!
「ムキムキ~」
浴槽とは別の湯殿? にゴロゴロ入ってる夏みかんみたいなやーつ!
これは食べ放題なのです……!
剥いた皮は湯殿経由でお湯に素敵な匂いを提供してくれるってわーけ!
他の浴場よりちょっとお値段が高かったのはこういうわーけね!
「ハイアカ、アーン」
「あむむ……あまじゅっぱ! おいし!」
ボクもパクリ……甘酸っぱい! おいしい!
ほのかにあったかいのがまた面白い! でもおいしい!
「天国ジャネエ……」
「てんごく、てんごーく……」
肩に登って、アカが足湯体勢に移行。
今はお昼くらいだから、貸し切り状態で素敵じゃな~?
『むっくんの影響でむっちゃ温泉行くようになったし……ぶはぁ~……酒! 飲まずにはいられんし~!!』
向こうも温泉ですか……神様だから大丈夫だろうけど、気を付けてね?
『だいじょぶ! ここ浅いし! お隣ちゃんも飲も飲も!』
……そういう問題じゃないような気がする。
お隣さんも一緒なのね。
しかしいいお風呂だ……ほんと。
は~……
「イツカ家ヲ建テタラ……デッカイ風呂ヲ作ルンダ~……!」
「アカも! アカもいっしょ、いっしょ~!」
は~ん? そんなもん……
「当タリ前デショ~? 一緒ダヨ、一緒~!」
「いっしょ! おやびんとずうといっしょ、いっしょ~!」
ほっぺに頭をゴンゴンしてくるアカ……なんとも、幸せ~!!
色々あるけど、ボクは幸せ者の虫ですよ~!
『ほっこりしたのでポイントをお出ししておきますね』
『ぶぇええい……あーしもあげゆ~! がぼぼぼ』
あ、シャフさんが沈んだ。
「みゃぅう……ムークがホコホコだね」
「デッシャロ~?」
浴場からの帰途。
不思議と言えば不思議なんだけど、マーヤを肩車している。
でも全然重くないし、なんか慣れた。
「マーヤもほこほこ、ほこほこ~」
アカはマーヤの猫耳をモフっている。
「ロロンもどう? 変わろうか?」
「じゃ、じゃじゃじゃ……ワダスはいいのす~……!」
「何故肩車を当然のことと受け止めているのか、これがわからんのナ?」
そう言っているアルデアの谷間にはヴァルが入っている。
爆睡妖精と化してるな……
「二ノ街ノドッカデ、ゴ飯食ベテ帰ロウカ~」
このままゆっくり歩いたらいい時間になりそうだしね。
二の街に入ったらいい感じの店を探そうグゥエ~!? ヴァル! 何でいきなり顔に飛び掛かってきたの!? ビックリした!
「ムーク! ……ワレはギョーザが食いたいぞ! ピーちゃんの像のある店で!」
「オ、オウ」
ミライ飯店に行った時、無茶苦茶食べてたもんね。
しかし、ミライ飯店か……いいね!
今日はピーちゃんいないし、前みたいに無料祭になることもなかろう!
「皆モソレデイイ?」
と聞くと、頷きが帰ってきた。
マーヤの下あごが頭にゴンゴン当たる!
よーし、それじゃ行こうか!
「すいませーん、現在込み合っておりまして列が長くなっておりまあああああああ!?」
「ムン?」
ミライ飯店に着くと、相変わらずとっても繁盛していた。
なので、皆で大人しく最後尾に並んでたんだけど……列の人たちに事情を説明しに来たむしんちゅの女性店員さんが、ボクの顔を見てびっくりしている。
なんでしょうか?
かと思えば、彼女はダッシュで店に入って行った。
「ナンダロネ?」「んね~?」
アカと顔を見合わせていると……なんかお店から男性むしんちゅ店員さんがダッシュで戻ってきた!?
あ、さっきの店員さんもいる!? なんだろ、スープなくなりました! とかかな?
「これはこれは! 依頼の件ですね! 直接厨房にいらしてくださればいいのに!」
「ハエ?」
依頼? 誰かと間違えてる?
「こちらはお客様の列ですよ! 申し訳ありません案内もせずに! ささ、こちらへ!」
「ホエ?」
「お仲間の皆様もこちらへ~! ささ、どうぞどうぞ~!」
「ホエ~?」
そしてボクらは、列に並ぶ方々を尻目に連行されていくのであった。
「結局コウナルノカ……」
で、貴賓室なう。
あれよあれよという間にここへ連行されました、まる。
「すっかり賓客扱いなのナ~」
「ね、ちょっと悪いかも」
「ムーク様の御威光でやんす!」
なんかロロンだけ嬉しそうじゃありませ~ん?
うぐぐ……連行されてしまったけど、今日はピーちゃんがいないからお金はしっかり払うぞ~!
『(受け取ると思う? あーし、受け取らない方にむっくんの魂を賭けるし)』
『(私もそう思いますが魂は勘弁してください)』




