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第153話 護衛虫、森へ。

「ふわあ……もう夜か? ムーク」


 もぞぞ、とマントから出てくるヴァル。

惜しい、まだ夕方です。


「む、今日はここで野営か?」


「ウンソウ」


 ボクらがいるのは、うっそうと茂る森の手前にある……開けた広場。

敷地内には東屋がいくつかと、倉庫的なものが建っている。

ここは、木こりさんたちが共用として使っている休憩場所なんですって。

結構強力な魔物避けの魔法具があるらしくて、安全地帯なのだとか。


 首都を出発して、散発的に襲ってくる森狼とかゴブリンをコロコロして歩くこと数時間。

ここについて、今晩はキャンプ。

明日早くから森に入って木を切るんですって。


「ムークさん、お疲れ様だねえ」


「イエイエ、仕事デスノデ」


 ゴンザさんがやってきた。


「いやー、ミカーモさんが太鼓判を押すから疑ってはなかったけれど……皆さん強いねえ。前に別の所で何度か冒険者さんを雇ったことはあるけど、間違いなくあんたたちが一番の手練れだね」


「皆トッテモ強イノデ!」


 ふふん、自慢のお仲間でございますよ~?


「まさかそのかわいい妖精ちゃんまで強いなんて思わなかったよ。ゴブリンが魔法で粉々になるなんてねえ……世界ってのは広いなあ」


「あむあむあむ……」


 褒められたアカは、ヴァルがいるのとは反対側の肩で果物を齧っている。

移動しながら街で買った……なんか、身が硬いミカンみたいな謎果物! 味はグレープフルーツ!


「天幕がないなら貸そうか?」


「イエ、大丈夫デス」


 デラックスなのがあるからね、平気平気!

面積の関係でボクは寝袋虫と化すけど!


「そうかい……食料も大丈夫かい?」


「ハイ!」


 ふっふっふ……そこら辺のお店が裸足で逃げ出すくらいは在庫があるのですよ!


「しっかりした冒険者さんだね……それじゃ、場所は好きな所を使ってくれていいから。夜の見張りにはウチからも人を出そうか?」


「イエイエ、ゴ心配ナク。ボク、夜目ガ効キマスノデ~」


 護衛の仕事なんだから、そこもしっかりやりますよ!

依頼主に面倒をかけたらいけないからね!


「わかった。それじゃ、何かあったら言いなさいね」


 そう言って、ゴンザさんは手を振って帰って行った。

向こうは向こうでしっかり野営の準備ができてるみたいだし、こっちから何かを差し入れすることもないかな。


「今日ノオユハンハ何ジャロネ~?」


「ロロンの飯は美味い。ワレは何でもいいぞ」


「アカも! アカも~!」


 それはボクもそう! ロロンの料理は最高だからね! 何が出てきても美味しく食べられるだろう!



「ミソって本当に美味しいよね。特にお魚に合う気がする……んにゃにゃ」


「豆を潰して発酵させると初めに聞いた時は何の冗談だと思ったのだが……ロストラッドの技術は凄いのナ」


 ズズズ……干し魚と根菜の味噌汁美味しいすぎる……!

うまみが凄いなあ、ボクは幸せだなあ。


「んむむむ……ロロンの料理は最高だな。そう思うだろうムーク?」


「ウン、最高。ネ~アカ?」


「おいし、おいし!」


 両膝の妖精たち、何でも美味しく食べられていい子だね~?

まあ、この場には美味しいものしか存在していない訳ですけど。


「じゃじゃじゃ……えへへ」


 ロロン! 照れるのはわかるけど鍋をかき混ぜすぎでは!?

味噌汁がミソスムージーになっちゃうから!!


「そういえば……あのおソバ屋さん、また行きたいね」


「マーヤモソバ好キ?」


 ボクも行きたい! お寿司とかカツ丼とかの存在も確認したい!!


「勿論ソバも美味しいけど、あのスープが美味しい。魚の匂いがして」


 あーね! バッグゴソゴソ……出でよカツオブシ! じゃなかったケズリブシ! この世界にカツオはいません!


「コレ使ッテルンダヨ。魚ヲ干シタリ蒸シタリシタヤーツ」


「すんすん……んみゃみゃ! すっごいいい匂い!」


 マーヤの目が輝いた! 猫さん的にはやっぱり魚が好きなんかな?

あ、じゃあ……隠形刃腕カモン!

そしてケズリブシをシャッシャ! 小皿に盛る盛る!


「コウヤッテ出汁ヲ取ッタリ、ソノママ食ベテモイインダヨ」


 ひょいぱく……フムムム、懐かしい気がする食感!

醤油はあるから後は白ご飯だよね……ヤマダさんにまた聞こう!


「にゃむむ……美味しい!」


「アカにもちょーだい、ちょーだい~?」


 仲間外れにするわけないっしょ! ポポポポイ!


「あむあむ……おいし! おいし~!」


「ふむ……ほう、これはなかなか……!」


 妖精たちにも好評!


「それはそうやって使うんでやすか……はむ、うめめなっす~!」


「魚の味が濃いのナ。これは確かにスープに仕えそうなのナ~!」


 皆にも大好評! 異世界にもっともっと広がれ! 出汁の文化~!!



「風呂がないのが唯一の難点だな、ムーク」


 寝袋に入ったボクの胸の上で、ヴァルがこぼした。

この休憩所は森のすぐそばにあるけど、残念ながら川とか池はないんだよねえ。


「にゃむむ……あむむむ……」 


 何の夢を見ているのか、アカがモグモグしながら寝てる……かわいい~!


「明日ニ備エテ寝ルカ~……ヴァル、オヤスミ」


「うむ、夜警の順番が来たら起こしてやる」


 魔法具はあるけど、用心はしないとね~……すやぁ……


『寝袋虫の絵面が面白過ぎるし』


『なんですかムロシャフト、とても愛らしいではありませんか。お隣もそう思うでしょう? なに? ミニサイズの木像にしたい? ……一考の余地はありますね』


 ……ぽやしみなしあ……



・・☆・・



 鬱蒼とした森が見える。


「お前ら、頼りになる護衛がいるんだからな。木を切ることだけ考えろよ」


「「「はいっ!!」」」


 ゴンザさんの声に、お弟子さん達が一斉に答えた。

みんな超でっかい斧持ってる……森狼ならアレで真っ二つにできるんじゃない?

まあ、普段から戦い慣れてないときついのかな?


「頼んだよ、ムークさん達」


「オ任セクダサイ!」


 朝起きて元気満々! 頑張って完璧に護衛しちゃるぞ~!

トモさん、サポートよろです~!


『お任せを。で~すが~? 油断は~?』


 しませぇん!


「上空から監視はするが、木々が邪魔になるのであまり期待はしないで欲しいのナ~」


「ワレも補佐してやろう」


 そう言いながらも、アルデアは真剣な顔をして飛び立った。

ヴァルは念話連絡要員として一緒に行くみたい。

じゃあ、ボクらは木こりさん達よりも奥で頑張って警戒するぞ~!

長くなったチェーンソーで活躍したくもあるけど、そこは専門家にお任せしましょ!

ヴァーティガもしっかり持って、油断しません! しませんとも~!



「かあん、かあ~ん♪」


 木こりさんたちのお仕事が始まって、リズミカルな音が聞こえてくる。

アカはその音が楽しいのか、節をつけて肩の上で左右に揺れている。

か~わいい~! ホッコリしちゃう!

……おおっと、警戒警戒。


『ヴァル、上はどう?』


『うむ、上空は何もないぞ。森の方もおかしな反応はない……が、通常の魔物はそれほどわからんからな、油断するな』


『了解です~』


 黒は気にしなくてもいいけど、ノーマルは気にしておかないとね。


「ふふ、木が切りたくなるんじゃない?」


 ちょっと先にいるマーヤが笑っている。


「ウン、我慢シテル~」


「あはは! がまん! がまんって……もう、笑わせないで!」


 なんかツボにはまった様子のマーヤである。

その向こうでは、槍を持ったロロンが周囲を気にしている。

おおっと、おやびんも頑張らなければ。


「ムンムム……ムン?」


 なんだ? 今林の奥の景色が動いた……ような?

トモさんトモさん、なんかいる?


『……なんでしょう、微弱な魔力がありますね? とりあえず衝撃波を撃ってみては?』


 そうだね、了解。

パイルなら木を倒しちゃうけど、衝撃波なら威力いじれるからね。

じゃ、ごく弱めの衝撃波を速射でばら撒く感じで……!


「気ニナルカラチョット試スネ……テイリャ!」


 ぽぽぽぽーん、と衝撃波――ムムムッ!?

木と木の間に着弾した衝撃波が、止まった!

ってことは――


「正面ニ何カイル! 見エナイケド、魔法ガ当タッタ! ミンナ気ヲツケ――」


 ざざざざざ! って草が動く!?

これは……何かがこっちに来てる!

――こういう時は、これ! 唸れ『肩部雷撃散弾砲』!!


「――ファイアッ!」


 地面に向けて放った電撃が、明らかに何かにぶち当たった挙動を見せ――


「ナンジャコノ化ケ物!?!?」


 何もない空間が歪んで……ぬるりとしたぶっといミミズみたいな何かが出てきた!?

ウアーッ!? ビチビチしててキショい!? あ、死んだ……!


「みぎゃ!?」


 マーヤの尻尾がビーン! ってなった!

キショいもんね! 仕方ないね!

しかしこれって何――


『同じ魔力を感知! むっくん、まだまだ来ますよ!』


 なんじゃって~!?

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます!お互いに木像作り。面白い!平和な世界。むっくんの寝袋人形欲しい。
不可視の推定ミミズ?の群れが現れた! この世界の魔物、多種多様すぎる… お隣女神さま、むっくんの木像作りに感化されてるじゃないw
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