第151話 試運転虫、がんばる。
「ムン!」
広々とした原っぱで、気合を入れるボク!
「がんばて! おやびーん!」
「ハーイ!」
手を振るアカに振り返し……さあ! やるぞ!
現在、ボクは『三の街』に来ている。
それも、以前オルクラディの密偵がいた拠点だ。
進化してからの身体能力を試すいい場所を探してたら……イセコさんが紹介してくれたんよね。
ここなら周囲にザヨイやサジョンジ以外のヒトはいないから、余計な人目もないからって。
「警護のものに話は通してあります、ご存分に」
今も、お目付け役としてついてきてくれている。
「しっかりやれよ、ムーク」
「気張りなっせ~!」
ロロンとヴァルもいます!
マーヤとアルデアは新たな酒場を開拓するべく、二の街に行ってます。
『格好よくなった記念に、とってもいい店を見つけるからね』ってマーヤが言ってた。
いいにゃんこ!
アルデアには『お前が歌って踊っても大丈夫な酒場をみつけてやるのナ』と言われました。
……いい、そらんちゅ?
「――ムンッ!」
右手に意識を集中し、魔力を流す。
すると、すぐに見慣れたチェーンソーが右腕から飛び出し――長ぁああああああい!?!?
おおお……さすが『四段』! ジャキキキン! って伸びた!
長さは今までの倍くらいある……ボクの腕の中どうなってんの? 空間が歪んでるの? 四次元アームなの?
よしそれじゃ……回転ッ!
ウワーッ!? 明らかに前より回転数が上がってるゥ! 音が甲高い!
「しゅごい! しゅご~い!」
アカは前からこれ好きねえ?
しかしこれは……さらに凶悪になりましたなあ……長さもちょっとした剣くらいになってるし……
「前からそうでしたが、このような『生成』は初めて見ます! ムーク様は型に嵌まらぬお方ですね!」
「んだなっす! ムーク様は不世出の英雄でやんす~!」
ヨイショがすぎる!
背中がとってもくすぐったいや……!
よ、よーし次だ。
今度は『肩部雷撃散弾砲』だ。
えーと……
『電磁投射砲と同じように、肩に魔力を集中してください』
あ、トモさんおかえり!
ナガシソーメンはどうだった?
『大盛況すぎまして、よその神々も大勢いらっしゃいました。つけダレを10種類用意した甲斐があったというものです……虫人の神々には主に梅系が人気でしたね。逆に、龍神の方々はカツオブシと魚粉のものが好きなようです』
天界、超平和すぎる。
なんかホッコリしちゃいますなあ。
『ホッコリは大いに結構ですが、油断はしないように! 進化してむっくんの身体機能はかなり向上しています……『操縦方法』を学ばないと大怪我ですよ?』
はぁい……前の体に慣れたと思ったらまた進化……これって無限ループじゃな~い?
でも、やれることをやるしかないのだ……!
肩に魔力を集中――うおっ!?
表面の装甲板がスライドして、中からレンズみたいなのが出てきた!?
『衝撃波を撃つように魔力を流してください。発射の感覚は、以前言っていた……』
――心の中でトリガーを、引く!
ばじ、と音がした瞬間に――目の前の空間に扇状の稲妻が走った!
さっすが雷……速度が段違いだ! アカの雷撃魔法ほど射程距離はないけど、これなら敵に接近された瞬間に叩き込めるぞ!
「しゅご~い! おやびん、びりびり、アカといっしょ! いっしょ〜!」
アカもこれには大喜びで、謎ダンスで祝福してくれてる!
しかし……これ、魔力の消費が多い気がする!
『ざっと計算しました。むっくんの全力衝撃波、約5回分相当の魔力が消費されています。普段は衝撃波で対応するのがいいでしょうね』
了解でーす。
結構使っちゃうね……これは接近戦の切り札だな。
よし、次は……『対反動撃発錨』と『魔導電磁衝角』にしよう。
まずは腰に魔力を流して……発射!
「オワワ」
腰から発射された尖った装甲が、地面にカカカカッ! って突き刺さった。
なんか、鎖っぽい装甲で繋がってる……! 自分の体なのに不思議!
「フンギギギ……!」
おお、かなりしっかり固定されてる!
これなら電磁投射砲を撃っても吹き飛ぶ可能性はぐっと減ったぞ!
……ええと、これ巻き戻すのはどうするんでしょ?
『伸びきった所で魔力を流せば巻き取れます。掃除機のコードと同じですね』
にゃるほど、わかりやすい!
それではさっそく――
『あ、そんなに一気に流すと』
「アギャーッ!?!?」
一気に巻き取られた装甲が! 勢いよく四方から腰に直撃してェ!?!?
「アゴゴゴ……!」
胴体潰れるかと思った……! い、いだだだ……!
『人の話は最後まで聞きましょう、粗忽虫』
はぁい……!
「おやびん、だいじょぶぅ?」
「トテモダイジョウブ……!」
アカの横に浮かんでいるヴァルがジト目だ。
「粗忽者……」
あい……ぐうの音も出ない!
き、気を取り直して……次は『魔導電磁衝角』だ!
『額に魔力を集中してください。すぐに変化がありますよ』
はいはーい!
むん、むん――うおっ!?
なんか額がビリビリする! これどうなってるの!?
『ほう……触角から発生した稲妻が、Y字状に展開しています。あれですね、雷でできた大きなカブトムシの角ですね、ビジュアルが』
マジで!? むっちゃ格好いいじゃんそれ!
うぐぐ、見えにくいのが難点……お、おおお?
こ、これ……展開してる間の魔力消費すっごい……!?
『加速度的な魔力消費ですね……進化したむっくんでも、10秒以上展開していると枯渇します』
うぐぐぐ……ぶふう!
これは魔力供給を止めればすぐになくなるな……助かった!
「す、凄まじい魔力発露なのす! ワダスも一層精進しやんす~!」
「なんて大きい角……素敵です!」
なんかギャラリーには好評っぽい!
ボクももっとちゃんと見たいなあ。
今度鏡の前で使ってみよっと!
「アグアグ……」
ふう、魔石がしみる……無味無臭だけども。
さて……いよいよ最後。
『魔導推力増強器・双発』のテストだ……!
前の進化の時には酷い目に遭ったからね……アレが2倍に増えたんだから、とんでもない推進力になってそうだよ……
「アカ、一緒ニ飛ビタイケドチョット待ッテテネ」
「あい~!」
まずは1人でテストしなければ!
むん……バシャン! よしよし、背中、腰、そして両太腿の装甲も問題なく展開!
続いてバシャン! 補助翼も問題……ないけど、なんか地味に可動域が増えてる気がする!
色々動かしてみよう……むんむん。
「おやびん! はねおっき、おっき~!」
「うむ、中々勇壮ではないか」
どうやら妖精たちには好評みたい!
試運転完了……それでは!
このまま離陸……すると愉快な虫ベーゴマと化す危険性があるので! まずは真下に衝撃波発射! 発射発射!!
ふわり、と体が浮かんだので――まずは前からある方を起動ォ!
「――ムギギギ~!?!?」
前より反応も出力も上がっとるがな!?
そうじゃないかな~って心の準備しといてよかった!
四苦八苦しつつ、補助翼を動かす!
よし、こっちも反応が早くなってるけど……むしろこの状況ではありがたいです!
とりあえずちょいと上昇して……ゆるーく旋回!
おお、下でロロンがむっちゃ手を振ってくれてる! かわいいね!
体が地面と水平になった所で……行くぞ! 同時に太腿アフターバーナー起動ォ!
「――オギャアアアアアアアアアアアアアアッ!?!?!?」
今知りました! 全部のアフターバーナーを起動させると出力がアホみたいに跳ね上がるって!
足し算じゃなくって掛け算! 掛け算ッ!!
「グヌゥウウウウウウッ! 負ケルモンカ~!!」
加速にビリビリしている補助翼に魔力を流して、補強!
旋回方向に動かすんだ!
「ギュゴオオオオオオオオ!?!?!? 重力ニ殺サレルゥウウウウウ!?!?!?」
ああああ! 潰れそう! 潰れそうォ!!
ふんぎぎぎ……頑張れボクの甲殻ボディ~!!
『むっくん、魔導推力増強器に魔力警報です。そろそろ使用を止めないとまた弾けますよ』
空中で格闘を続けることしばし。
トモさんのアナウンスだ! 魔力を絞って速度を落として……皆とちょいと離れた場所に降下開始!
衝撃波を小刻みに使って着陸シークエンス!
あ! あの錨を使えばいいブレーキになるかな?
『急ブレーキ過ぎて逆〇イキのマークになっちゃいますよ。いや、それどころか腰がへし折れるかもしれませんね』
はい中止! この考えは未来永劫封印いたします~!
いつもみたいに真面目に着陸します~!!
地面スレスレで、両足パイル起動!
若干上昇方向に補助翼をいじりつつ――接地!
「ンギギギギギ……!」
足パイルと、隠形刃腕で速度を殺して……ブレーキ完了!
やった! 着陸は成功です! 成功~!
「おかいり、おかいり~!」
「タロイモ~」
アカが飛んできて肩に着地。
ほっぺを擦り付けてきた。
「おやびん、しゅごい! はやーい! かっこよ、かっこよ~!」
えへへ、ありがたいや。
ちょっと休憩したらアカも一緒に飛ぼうかな。
「速いな、まるで流星のようだったぞ」
あ、反対側にはヴァルが来てる。
「始終悲鳴を上げていたのは間抜けだったがな?」
「フヘヘ……頑張リマス……」
大興奮で走ってくるロロンを見ながら、ボクは頭をボリボリかくのだった。
『お隣様が床を転がって大爆笑していましたよ』
……楽しんでいただけてよかった~!
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