第150話 おはよう! 格好よくなったボク!
……ムン、起きた! 真っ暗!!
毛布巻きつけたからね、仕方ないね。
いやー、それにしてもまた変な夢見ちゃった。
やだやだ、ボクの前世もしくは前世のホラー映画こわすぎ。
ま、もう戻れない世界だから気にしても仕方ないけど……それはそれで気になる!
最初っから見せてよ、もう……
「ムゴゴゴ」
あ、ダメだ! 気合を入れて毛布でグルグル巻きにしたから動けない!
『ねえ~、誰かいませんか~?』
『あい~!』『いるわ! いるわ!』『いるぞ』
妖精が勢ぞろいしている!
「ぴゃ、ぴゃう~!」
あ、推定ユキちゃんも胸の上にいる! ぴょんぴょんしてる!
モフモフの感触!
「ロロン、ムークが起きたぞ」
遠くの方から足音がする。
「ムゥウウウク様ぁあ~ッ!!」
一瞬でロロンが来た! F1みたいな勢いで!
「お起きになりやんしたか! しばしお待ちを! ふんぬぬぬ~!!」
お、毛布を持たれている感覚――
「どっせェい!!」
「ニュワ~!?!?」
きつく巻きすぎた結果、引っ張る勢いでボクは新時代のベーゴマみたいに射出される結果となった! 高速横回転!!
「オゴフ!?」
ああ、最近見慣れた天井が見える……今日もいい天気!
ともあれ、これで自由の身になったね。
「ドッコイショ……ムムム!」
これは進化明け特有の……超絶空腹感!
「ぴゃうぅ!」
おやユキちゃん、キミも一緒に飛ばされてきたのか。
座って……バッグゴソゴソ……出でよクソデカフランスパン!
この世界にフランスはないけど、形がそっくり!
ユキちゃんには反対側を進呈しよう。
「アグアグ」「はうあう」
「アカも! アカも~!」「チュチュピ!」
よろしい、クソデカフランスパンはビクともしないぞ!
「お、おもさげながんすムーク様! はぁあ……! なんど雄々しいお姿!!」
「ハフン?」
今度は見てわかるくらい姿が変わったのかな?
もぐもぐ……トモさんトモさん、鏡よろしくです~。
『はい、それでは』
ブン、と現れる懐かしのスキルボードくんミラー!
そこには、床に座って妖精たちとフランスパンを貪るボクが写った。
なんという間抜けな光景……ムムムー!!
角が! もとい触角が増えとる!?
今までは額の位置に2つ並んでいたのが……3つに!
一番下にもう一個増えてる!
短いの、中くらいの、長いのが等間隔で並んでる……格好いい!
一本角だった虫時代から成長したなあ……
「あぐもむ……おやびん、つのふえた、ふえた~!」
「フフ~ン、カッコイイデショ?」
「かっこい! しゅてき!」
おっほっほ、キミも素敵な子分よ!
妖精たちにもう一本パンを渡して、ベッドに腰かける。
さて……残りの全身はどうかなっと?
「わ、ムークの肩がちょっとおっきくなってる。不思議」
今やってきたマーヤが言うように……まず肩パーツが一回り大きくなってる。
なんだろ、中になにか入ってるみたいな……?
二の腕部分は同じくらいかな……前腕の方も特に変わりは……ある!
左前腕の装甲が太く大きくなってる! それに棘がない!?
「オワ」
あった! 前はむき出しだった棘が……内部に収納されてる!
今確かめたらジャキンって出てきた! 数は変わってないけど……今までの黒い棘付きじゃなくて・……銀色!
金属製の杭みたいになってる!
側面についていた棘は……ふおお! 中からジャキキキ! って出てきた! 強そう!
「ふおおお……!」
ロロンがボクをキラキラ見ている。
わかるよ! 格好いいもんね!
ふむん、胸は……あら、なんか模様が増えてる。
なんだろ、もっと高密度のプラモデルみたいな感じ?
シックスパックも健在だし……胴体はそんなに変化ないな。
背中側は……こっちも線が増えてる! 補助翼が細かくなったのかな?
「足もちょっと変わってない?」
「ソダネー」
太腿は特に変わってない。
膝から下にちょっと線が増えてる感じかしら?
っていうか、足の棘も装甲内部に収納される形になっちょる!
よかった、たまに草とか木とかが引っかかって面倒だったんよね……進化くんが空気を読んだ!
「ねえムーク、とっても格好いいけど……体、大丈夫? 虫人でもこんなに急に成長しないんでしょ?」
マーヤが心配そうに大きくなった肩をさすってくれている。
優しにゃんこさんだ……!
「ウン、大丈夫。龍ノポーションノ効果ダカラネ……アリガト」
「ヴァルちゃんが言ってたやつだね。胴体が半分なくなっても元通りになるんだもんね……そっか」
騙してるみたいで申し訳ないなあ……でも、仕方ないか。
別にバケモンに進化するわけじゃないんだし。
「庭ニ行ッテクルヨ。体ヲ確カメナキャネ~」
「アカも! アカもいく~!」
アカが肩に着地。
よし、とりあえずスキル確認の時間だ!
・・☆・・
「ソリャソウカ……」
ベンチに座って、一息。
時刻は多分……もうすぐ三時くらいかな?
いやー、校庭に出て調べようとしたんだけどさ、子供たちに群がられちゃった。
寝て起きたら体が変わってるんだもんね、ビックリするもんね。
だから、しばらくは大丈夫だよ~って知らせるために一緒に遊んだんだ。
……そこで驚いた。
ボクの身体機能、地味に向上してる。
いつものようにヘレナちゃんを高い高いしたんだけど――前の体だと5メートルくらい放り投げる感じでやったら、その倍くらい飛んでっちゃった。
ビックリしちゃったよ……当のヘレナちゃんや他の子供は大喜びだったけどさあ……
まあ、今は子供たちは皆でお昼寝。
誰もいないので、じっくり確認作業ができるってわーけ。
トモさん! スキルボードくんよろしくです!
『――ええ、この母に任せなさい! 虫よ!』
ママじゃん!? え、トモさんどうしたんですか!?
『女神トモは我が神殿への出前に行っていて不在です。依頼したのは私ですので、その埋め合わせはします』
トモさん、すっかり〇-バーイーツになっちゃって……ちなみになんのお料理を?
『ナガシソーメン大会です。ヴァシュヌヴァーヌに後れを取るわけにはまいりません!』
そ、そうなんですか……あれ? でもママは食べないの?
『ふふふ、私はもう10キロほどいただきましたので。それに今日はあらかじめ茹でたものを女神トモが残してくれています……ゾゾゾゾ! ああ、ウメシソのタレが爽やかでいいですね……! おや、お隣の。何をしているのですか、貴方の分もありますよ! 器を持って来なさい!』
お隣さん含めて満喫しておられる……じゃ、じゃあスキルボードをお願いできますか?
『ズズズ……んく。了解しました……これですね』
ブン、と表示されるスキルボード。
さて、色々あったが今度こそ確認だ!
・個体名『むっくん』
・保有スキル
『複合視覚補助』『魔力吸収最適化』
『衝撃波(大)・全方位』
『高性能空中姿勢制御』『魔導推力増強器・双発』『対反動撃発錨』
『隠形刃腕・超振動』『撃発高回転螺旋刺突棘・二段・任意射出』
『高回転連環撃発棘・四段・電磁赤熱化』
『耐衝撃・対魔法複合高密度甲殻』『肩部雷撃散弾砲』
『魔素凝縮電磁投射砲・過電流』『魔導電磁衝角』
ウワーッ!? なんか増えたり追加されたりしとる!?
え、ナンデ!?
『ふむ、前のエンシュから随分と雄々しく戦いましたからね……福音でしょう! 誇るべきことですよ! ほほほ!』
たしかに……無茶苦茶頑張ったもんね……
えと、じゃあ説明ってお願いできる? あ、でもママは何が追加されたか知らないかな?
『安心なさい、虫のことは逐一見ていましたから問題ありませんよ。母ですから!』
ドヤ顔が想像できる……うん、よろしくねママ。
『はい! まずは『魔導推力増強器・双発』……これは、両方の太腿裏に1つずつ、背中と腰と同じものが追加されていますね。ふむ、素晴らしい! これでより高速で宙を飛べるようになりましたよ!』
マジか!? えっと……うわホントだ!? 太腿裏の装甲板がガシャンと開いた!
……今の2つでもヒイヒイしてるのに、2つも増えちゃったよ……これは、広くて安全な所で試さないとね。
『さて、次ですね。『対反動撃発錨』は……腰から周囲に発射される4つの錨ですね。虫がよく使う『れーるがん』の反動を抑制するために使用するようですよ』
えっ……あ! 両腰と、後ろ腰に4つの……なんか、小さいでっぱりがある!
錨ってことは……これが地面に突き刺さって体を固定するってこと!?
……うわあ、便利で有難いけど……ボク、どんどんスーパーロボットになるなあ……虫からも離れつつあるんじゃが?
ごめんねママ、ようわからん物体になりつつありますよボクは。
『まあ、何を言うのです! あなたはあの小さく可愛らしい虫から大きくなったのです! そしてその優しい心……あなたは、いつまでも私の愛しい虫の1匹ですよ』
うう……謎虫でロボットめいたボクだけど、最高のママがいるから最強かもしれない……!
『おやめなさい! あまり私を褒めると女神トモの部屋が水浸しになってしまいますよ!』
トモさんのお部屋が! わ、わかったよママ……じゃあ、続きをお願いします。
『こほん……では次、『高回転連環撃発棘・四段・電磁赤熱化』は……ちぇーんそー? の出せる長さが変わり、回転数が更に高まったようですね。これも喜ばしい、虫がもっと楽しく伐採できるようになりましたよ!』
地味に便利! よかった、これはわかりやすい! 試すのも楽だね……!
『次は『肩部雷撃散弾砲』ですか。虫の大きくなった肩の内部から、魔力を稲妻の形で多数放てるようですね……ただ、それほど遠距離までは届かないようですが』
このでっかくなった肩にそんなものが!?
どんどんロボットになっていく……! 至近距離専用の迎撃武器って感じかな? 戦い方に幅ができていくねえ……
『これで最後です、『魔導電磁衝角』……これは虫の触角から魔力の刃を伸ばせるようですね。ほう、かなりの出力ですよ。虫が雄々しく強くなって母は嬉しく思います! ほほほほ!』
むっちゃテンション高い……しかし、これは素敵な新能力だ!
試すのが楽しみですねえ、色々。
『新たな名前にはなっていませんが、虫の皮膚も今までより強靭になっているようです。苦労した甲斐がありましたね!』
やったあ! 痛いのは嫌だからねえ! やっとボロボロ虫から卒業できるぞ……!
『一般の虫でも成長の過程で大きく体が変容します。今回はあの龍の子のポーションでその成長が早まったと思われるだけでしょう、安心して大いに励むのです、虫よ』
わーい! ありがとうママ!
スキル紹介、お疲れ様でした! 助かったよ!
『ふふふ、虫のためならばこれくらいなんということもございません!』
『ちーす、トモちんおる~……うせやろ!? メイヴェル様がソーメン食いながら真面目に仕事をしちょるし!? 天界に槍が振るし!?』
『命がいらぬと見えますね、ムロシャフト……! お隣の、止めないでください! この不心得者を叩きのめさねば……!』
やめてやめて! そこトモさんのルーム! お部屋~!!




